徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

特別展 仏像 一木にこめられた祈り 東京国立博物館

2006-10-20 | 美術
特別展 仏像 一木(いちぼく)にこめられた祈り
2006年10月3日から12月3日
東京国立博物館

あまり仏像は判っていない。珍しく音声ガイドを借りる。

第1章 檀像の世界

インドの伝説では、世界で初めての仏像はインド産の白檀で造られたとされているそうだ。材の特色を生かして表面に彩色をせず、細かな彫りをするのが特色。中国では、中国では白檀が自生しないため、「栢木(はくぼく)」で代用、日本では、「栢木」をカヤとみなし、カヤによる代用檀像が流行したそうだ。

まずは、十一面観音菩薩立像が何体も並ぶ。十一面観音の顔はすべて同じではなく、それぞれ表情は微妙に異なるところも見所。
  • 重要文化財 十一面観音菩薩立像(唐時代・7世紀 像高42.1cm)東京国立博物館蔵。藤原鎌足(614~669)の長男・定恵(次男は藤原不比等)が唐から持ち帰った可能性が高いという。細かな彫りは惚れ惚れとする。インド的な風貌。
  • 重要文化財 十一面観音菩薩立像(奈良~平安時代・8~9世紀/像高45.5cm)京都・海住山寺蔵。針葉樹の一木から造る典型的な檀像(だんぞう)様の像。照明の加減か色々な端々がキラキラと光り美しい。
  • 重要文化財 聖観音菩薩立像 平安時代・9世紀; 醍醐寺;

    第2章 一木彫の世紀
    8世紀から9世紀の一木彫の仏像が並ぶ。
  • 重文 伝薬師如来立像 1躯 奈良時代・8世紀 奈良・唐招提寺蔵; 鑑真は仏師も連れて渡来したという話が吃驚しました。
  • 弥勒仏坐像 東大寺 奈良~平安時代・8~9世紀;大仏様を小さくしたような仏像。「試みの大仏」
  • 重文 楊柳観音菩薩立像 1躯 奈良時代・8世紀 奈良・大安寺蔵
  • 重文 多聞天立像 1躯 奈良時代・8世紀 奈良・大安寺蔵
    仏像のできはともかく、奈良・大安寺では、中国からの仏師たちが集まっていた奈良の文化の国際性に吃驚。今の六本木でしょうか?
  • 国宝 薬師如来立像 1躯 奈良~平安時代・8~9世紀 奈良・元興寺蔵; 今年の春に拝見していてお参りはした覚えまではあります。

    今回の呼び物の一つが
  • 国宝 菩薩半跏像(伝如意輪観音)奈良~平安時代・8~9世紀 像高88.2cm 京都・宝菩提院願徳寺蔵(11/5まで);二重瞼だろうか、格好いいといった顔立ち。腰から下を流れるような衣は襞の彫りっぷりは装飾的ではあるが、リアリズムそのもの。
    左手前膊(ぜんはく)(前腕)半ばから先、右手先、両足先等を除いて、本体から台座の蓮肉(れんにく)部までを含み、カヤと見られる針葉樹の一材から彫出し、像内に刳りも施していないという。
    中国からの将来品または中国人による作品で、高貴な人物の依頼による作品と想定されているという。

    宝菩提院願徳寺は、白鳳7年(678)に持統天皇(天武天皇の皇后)の願いによって向日市寺戸に創建されたお寺だそうですhttp://www.gantoku.or.jp/

  • 国宝 地蔵菩薩立像 1躯 平安時代・9世紀 奈良・法隆寺蔵; 桜井市の大神神社(おおみわじんじゃ)の神宮寺である大御輪寺にあったが、明治の神仏分離で法隆寺へ移動。このころから地蔵菩薩信仰が盛んになったそうです。このほかにも何体か地蔵菩薩が並んでいます 神仏習合の表れとしての奈良・橘寺蔵、和歌山・慈光円福院蔵とかの仏像も並びます。
    島根・大寺薬師蔵の四天王立像(伝持国天・伝広目天)(9世紀)は、新羅来襲?からの来襲に備えて山陰で多く造られた四天王立像のひとつという。

    第3章 鉈彫
    鉈彫の仏像があるとは今回初めて知った。平安時代の10世紀後半から12世紀頃を中心に、表面にノミ目をのこす不思議な一木彫像が流行したという。関東から東北地方に独特の技法ようだ。

  • 重文 薬師如来および両脇侍像 3躯 平安時代・10世紀 神奈川・宝城坊蔵; 宝城坊のある丹沢山塊の日向山の中腹には、かつて霊山寺という山中寺院があり、この三尊像はその創建時からの本尊であっただろうという。顔や胸を滑らかに仕上げ、それ以外は台座をふくめてノミ目が刻まれている。
  • 重文 十一面観音菩薩立像 1躯 平安時代・11世紀 神奈川・弘明寺蔵; 正面からみえる部分に、意図的に横縞状のノミ痕を。全身は白木のままで、唇にわずかに朱が残り、眉、目、ヒゲ、胸飾を墨で描いている。
    庶民に親しまれる独特の造形
    今回の代表作はどちらも神奈川県。日向山も弘明寺も訪れたことはないが、親しみがわく。鎌倉幕府以前の関東は、平将門の乱とか武士のイメージだが、そのイメージを補足するものとして面白い。

    第4章 円空と木喰

    円空(1632-1695)と木喰(1718?-1810)。この二人も始めて知りました。円空の仏像は、ナタで割った木材の切断面がそのまま残され、彫刻面のノミ跡もごつごつしたままの、すこし荒々しさは雰囲気。木喰の像は、表面をなめらかで、その微笑の表情が独特。

    江戸時代には、白隠禅師(1686-1769)が、不思議な仏画を庶民のために描いたと辻惟雄先生のテレビ「ギョッとする江戸絵画」で知ったばかり。江戸時代の僧侶の布教の試みと庶民の信仰(祈り)の一面を窺えますね。

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