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ワンナイト イン モンコック 暗黒旺角

2006-01-10 18:06:36 | 香港映画 (57)
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監督:イー・トンシン
製作:ヘンリー・フォン
脚本:イー・トンシン
撮影:ビーナス・クェン
音楽:ピーター・カム
編集:チョン・ガーファイ
アクション指導:チン・ガーロッ
出演:ダニエル・ウー(フー、来福)セシリア・チャン(タンタン)
    アレックス・フォン(ミウ警部)チン・ガーロッ(ミウの相棒)
    ラム・シュ(リウ)サム・リー(ファイ)
    ケン・ウォンアンソン・リョン
2005年、香港
   
作戦名はワンナイト・イン・モンコック!

監督は『フル・スロットル/烈火戦車』や『夢翔る人/色情男女』などで知られるイー・トンシンであります。

『色情男女』では観客の入らない文学作品を撮って入水自殺するという監督(演じますはラウ・チンワン)という、自らをパロデイにして愉快でした。
元々、俳優だったそうで、風貌はラウ・チンワンによく似ています。

他に、ラウ・チンワンとアニタ・ユンの『つきせぬ想い』、これは未見の方にはお薦めです。
この監督としてはこういう黒社会ものは珍しいのではないでしょうか。

本作は香港で映画賞を総なめにしたそうで、韓国映画も好きだけど、なぜこういう作品が単館のみ上映なのでしょう?

『PTU』も傑作だと思いますが、個人的には物語り性の強いこちらのほうが好きだったりします。

1人の娼婦と1人の殺し屋と7人の刑事

会いたくないヤツには会うもんだな。
それが縁さ。

会うべくして会う、それが縁。

ガウとティムは旺角黒社会の二大勢力で、ガウの手下サム・リーがティムの息子を殺してしまったことから、ティムはガウの暗殺を何でも屋のリウに頼む。

この映画は黒社会を背景にしてはいますが、人物設定と物語がしっかりと描かれた社会派ドラマでもあると思います。

ニューヨークがそうであるように、他国から、大陸から香港ドリームを夢見てやってくる人たち。
大陸と都市部や香港との経済、文化格差は激しいようです。

香港はどうして”香る港”と呼ぶのかしら。
ここでは夢が叶うような気がするの。

でも、実は空気は汚れ、世界一人口密度の高い国、香港。
束の間、香港の夜の闇に上がる花火はフーとタンタン二人の心を照らすように美しい。
物に溢れ、魅力的で猥雑な香港の風景を切り取って鮮やかだと思います。

闇の中で、景色は見えなかったけれど、ああいう物騒な仕事を請け負う組織が大陸のどこかにありそうで、ゾッとします。
来福・・『セブン・ソード』では犬でなく馬の名前でした;
中国本土の地方から出てきた若者など、この都会ではひとたまりもないのかもしれません。

香港映画の楽しみは俳優陣に思い入れがあることかな。
限られた人数の俳優の馴染みの顔を見つけるのは楽しい。
これだから香港映画迷は止められません。

地味だけど、刑事役などで見かけるアレックス・フォン(方中信)は正義を見失って、刑事稼業にくたびれたミウ警部役に人間臭さが出ていて、だんとつにいいと思う。
「おまえはいい、けど、家族や仲間の立場を考えてみろ」

『烈火戦車』で、凄まじい散り方を見せたチン・ガーロッは今回は刑事が天職か、それともならず者に生まれつくが運命か、という情にあつい男の役。
この二人が見せてくれます!

「おまえは犯人を撃って夢でうなされないか?」

スーの事故の後の悲惨な容態はジョニー・トー監督の『ヒーロー・ネバーダイ』を意識したか。
香港映画の醍醐味は続けて見ていると、あちこちに内輪ネタや他作のパロディが散りばめられていて、それを楽しむところにあったりします。

香港映画にたまに見かける、あの枕カバーに缶ビールを入れた即席武器、あれで何度も殴られたら致命傷ですよね。
ひじょう~に痛そう。
残虐場面はダメなのに、じっと見入る私はやはり香港バージョンに人格が変わってます。怖
タンタン!泣いてないで警察呼んで~!汗

どうして、刑事たちが一息入れたのがあの場所だったのか。
他でもないあそこで!悪縁。。

ここから結末に触れています。
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ラム・シュー演じるリウが故郷(大陸)の家族には自分の悪党ぶりをバラさないでくれと泣く姿が哀れで、グッときます。

先に容疑者を誤射した血気盛んな新人刑事が先輩のガーロッの言葉「撃つ前に、3秒待て!」を守って待った!
撃たなかったのに!
これが二人の若者の生死を分けたのです。

フーが彼を撃たなかったら、生きる道もあったのではないか!

新人刑事のすがり付く手を堅く握るガーロッの背にくちおしさが滲む!
泣くなっ!ガーロッ!

憎悪は憎悪を生む。
錯乱したフーをも撃たねば仕方がなかったミウ警部。

息絶える前にスーかタンタンの手を求めてか、虚空を探るフーの手を握ってやろうと膝をつくミウ警部。
若い命をまた散らせてしまった・・苦い悔恨。
男と男だけが知る世界がある。
友情・・それでは言い足りないよ。

消息不明の恋人を探しに、そして兄の受刑の真相を探るために大陸からやって来たフーを演じた呉彦祖が素晴らしかった。
アメリカ育ちの彼がカッとし易いけれど、純朴ですれていないフーを演じたのも興味深いです。
フーは二つの目的以外に、本当は殺し屋の仕事をする気はなかったのではないかと思います。
ちょっと僻地から来た大陸の若者にしてはしんどかったけど、敢闘賞ですね。

時を同じくしてスーも息を引き取った。

フーの魂もまた、彼女の後を追った。

一途に愛するよりも、命がけで愛せ。

そうか、これは純愛の物語でもあったのか。

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