昨日の安倍お坊ちゃまの施政演説について全国紙が社説を書きました。予想したとおりでした。安倍お坊ちゃまの無内容で空疎な「美しい、力強い」お言葉の中身を問うものがほとんどなかったからです。
一つは、何処の社説も母親名義の御殿に住みながら自立しているとはとても言えないことが明確なのに、お坊ちゃまの「自立」論は上から目線のお説教であり、屁理屈を語っているのに、そのことを書いていません。憤りすら覚えました。これが民主主義の成熟した国の大手の新聞かと思わせるほどのものでした。
二つ目は、お坊ちゃまが投げかけるお言葉と呼びかけるお言葉の裏面にある国民を苦しめている現実の背後に、お坊ちゃまたちの悪政があったことは、どこも指摘していません。物事の、ある現象には、必ず原因があるはずですが、その原因をスルーして、現実を評価することができるでしょうか?お坊ちゃまがノタマワレル「強いお言葉」には、逆の立場から見ると「弱い現実」があるのですが、これらと真っ向から向き合うことはしていません。
その社説も戦後自民党政治を真っ向から総括できず、代わりに政治の責任一般論を語ることで、一億総ざんげ論に陥れようとしているのです。
さらに三つ目には、お坊ちゃまを批判しているようなふりをしながら、悪政推進を激励しているのです。憲法99条に明記さえている憲法尊重養護の義務を履行せず、アカラサマな憲法否定発言に対しても明快な批判はありません。軸足がぶれているのですから、批判などできようもありません。
以下、具体的にみてみます。
朝日 施政方針演説―さあ、仕事をしよう 2013年3月1日(金)付
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
安倍首相が施政方針演説にのぞんだ。 アベノミクスへの期待から、政権発足とともに円安・株高が進み、内閣支持率は上がっている。日米首脳会談をこなし、補正予算も成立した。日銀総裁人事や、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加にもめどがつきつつある。 まずは順調な滑り出しを反映してのことだろう、演説のメッセージは明確だ。あまたの懸案を前に進め、「強い日本」を私たち自身でつくろう――。 だが、演説に盛られたのはいわば「目次」にすぎない。肝心なのは、ひとつひとつに、どのような具体的な解決策を描いていくかである。 首相はいう。 「未来に希望を持てる『強い農業』をつくる」「国民の生命と財産を守る、『強靱(きょうじん)な国づくり』が急務だ」「財政健全化目標の実現を目指す」 いずれも異論はない。 一方で、疑問も禁じ得ない。 TPP交渉参加で農業予算を増やしたり、国土強靱化に予算をつぎ込めば、財政再建は逆に遠のきかねない。すべてをかなえるのは至難の技だ。 イタリアの選挙結果が円高・株安に直結したように、グローバル化した経済の下では、そもそも一国の経済政策に限界があることも忘れてはならない。 TPP交渉参加について、首相は「政府の責任で判断する」と述べた。関係国との交渉に加え、農業団体など既得権をもつ国内の利害関係者との調整も待ち受ける。本当の意味で、首相の手腕が問われる。 「できる限り原発依存度を低減させる」と首相は語った。ならば代替エネルギーの確保や電力システム改革をどう進め、廃炉や放射性廃棄物の最終処理をどうするのか。いつまでも先送りは許されない。 安全保障政策も同様である。首相は、日米同盟には「不断の強化が必要」と強調した。「普天間飛行場の固定化はあってはならない」というのもその通りだ。では、沖縄県民の間に辺野古移設に反対が根強い中で、どう打開しようというのか。 どれもが日本の将来を左右する難題である。だれが政権をになったとしても逃れられない課題でもある。政権の胸突き八丁はまさにこれからだ。 野党もまた、答えを持ち合わせてはいない。政権批判に迫力を欠くのもそのためである。国会論戦を通じて、より良い解決策を見いだすしかない。 与党も野党も、しっかり仕事をしよう。
社説:施政方針演説 楽観論の肉付けが要る毎日新聞 2013年03月01日 02時31分
http://mainichi.jp/opinion/news/20130301k0000m070130000c.html
狙い通りに株高と円安が進み、各種世論調査では内閣支持率も上昇している。そんな自信の表れだろう。安倍晋三首相の施政方針演説は憲法改正への意欲を示すなど持論をじわりとにじませる内容だった。 同時に目を引いたのは、「世界の成長センターに」「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」「世界一安全・安心な国」といった言葉の列挙だ。日本の将来に対し、ともすれば悲観論ばかりが語られがちな中で、国のトップがプラス思考を前面に打ち出したことを、まず私たちも前向きに評価したい。 だが、アベノミクスの「三本の矢」のうち、今回の演説で重きを置いた経済成長戦略では、再生医療や環境技術などを重視していく考えを表明したものの、民間投資をどう政治が後押しし、喚起していくかは定かでない。単なる楽観論に終わらせず、具体的な肉づけが必要なのは首相も承知だろう。 安心できる将来に向け、喫緊の課題は税と社会保障の一体改革だ。ところが首相は消費税率引き上げにまったく触れず、社会保障制度改革に関しても政府の国民会議の議論を見守ると述べただけだった。これでは財政再建も含め、足元の課題に熱意がないと疑われても仕方あるまい。 首相はまた「自助・自立」を基本とする社会を目指す考えを改めて示したうえで、「共助・公助」を組み合わせて弱い立場の人には援助の手を差し伸べるとも語った。 安倍政治が弱者の切り捨てに向かうのではないかとの批判を意識したと思われる。ただし、頑張りたくても頑張れない人は、首相が演説で挙げた「病気や加齢」の人だけではない。社会構造は大きく変わり、若い世代も含め急激に拡大しているという認識が乏しいのが気になる。 国会議員の定数削減も「各党各会派で話し合い、しっかりと結論を」と呼びかけるだけだった。首相自ら身を削る決意を示さなければ、「明るい未来」をいくら語っても国民からはなかなか信頼されない。 一方、首相は「憲法改正に向けた国民的な議論を深めよう」と呼びかけた。なおトーンは抑制気味だが、「安倍カラー」といえるテーマの封印を解いたといっていい。であるのなら、首相は改憲手続きを緩和したうえで、どこをどう変えたいのか。9条なのか。2院制見直しをはじめとする統治機構の部分なのか。やはり明確にしていくべきである。
このほか原発再稼働や首相が熱心な道徳教育の是非、さらには外交課題も含め与野党論戦のテーマは出そろいつつある。夏の参院選で有権者がどう判断するか。そこにつながる分かりやすい議論を期待したい。
施政方針演説 政権交代の果実を具体化せよ(3月1日付・読売社説)http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130228-OYT1T01559.htm
「緊密な日米同盟は完全に復活」「憲法改正へ向けた議論を深めよう」 安倍首相の施政方針演説には政権交代を印象づける言葉が目立った。 「自立」をキーワードに「強い日本」を目指す、という基本姿勢は、前向きに評価したい。 首相は、中国などを念頭に、日本の領土・領海・領空と主権に対する挑発が続いていると指摘し、11年ぶりの防衛費増額や国家安全保障会議(日本版NSC)の設置検討に言及した。着実に具体化していくことが重要だ。 中国は今年を海洋強国化元年と位置づけ、海軍を増強している。政府は、力の行使ではなく、法に基づく問題解決の重要性を国際社会に強く訴えねばならない。 首相は日米首脳会談に触れ、安全保障体制の強化のために日本が更なる役割を果たすと語った。集団的自衛権の行使や米軍普天間飛行場の移設など、懸案事項に道筋をつけることが欠かせない。 米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加問題では「聖域なき関税撤廃」が前提ではないことをオバマ米大統領と確認したと説明した。「政府の責任で交渉参加について判断する」と述べ、参加に意欲を示した。 農業団体などの支援を受けた自民党内のTPP慎重派も、参加を容認し、国際交渉を通じてコメなど例外品目を勝ち取る戦術に転換してきている。首相の参加表明の環境は、整いつつある。 自由貿易のルール作りに日本が関与できる時間はあまり残されていない。速やかに参加の手続きを進めて、国益を確保すべきだ。 首相は、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すと強調した。責任あるエネルギー政策を構築し、「安全が確認された原発は再稼働する」と述べたが、これだけでは物足りない。 原発再稼働の審査は、原子力規制委員会が新安全基準を決定する7月以降になる。よほど効率的に審査しないと再稼働は進むまい。エネルギーの安定供給とコスト低減がおぼつかなくなる。 首相は率先して再稼働へ指導力を発揮しなければならない。 最後に首相は、与党と足の引っ張り合いをするのではなく、建設的な議論を行い、結果を出そうと野党に呼び掛けた。選挙制度の見直しや憲法審査会の論議促進を求めたのも妥当な認識と言える。 衆参ねじれ国会でも補正予算が参院で可決、成立するなど部分連合の機運が高まっている。与野党の合意形成に期待する。(2013年3月1日01時32分 読売新聞)
高支持追い風に安倍首相は懸案に挑め 2013/3/1付
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52279460R00C13A3EA1000/
平易な言葉で語ろうという思いは伝わってきた。第2次安倍内閣で初めての施政方針演説で、安倍晋三首相は各省の重要政策を並べるスタイルを排して、「自立」をキーワードに演説を組み立てた。 1月の所信表明演説では経済再生など当面の政策課題に絞り込んだ。今後1年の政権運営の指針となる施政方針演説ではエネルギー政策など前回触れなかったテーマに幅広く言及した。 教育分野では道徳教育の充実をはじめとするいじめ対策の実行や、六・三・三・四制を見直す「平成の学制大改革」を訴えた。「憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深めよう」と呼びかける場面もあり、安倍色もにじませた。 焦点の環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加については「政府の責任において判断する」と意欲を示した。自民党内の反対派などに配慮し、交渉参加に踏み込まなかったが、国内外の調整作業を急ぎ、一刻も早く正式表明すべきである。 エネルギー政策では「安全が確認された原発は再稼働する」と明言した。妥当な判断といえる。再稼働が円滑に進むよう、政府は地元自治体の説得などの役割をきちんと果たしてもらいたい。 演説を通じ「強い日本」をつくりたいという首相の思いはわかる半面、総じて具体性に欠ける印象は否めない。 その典型が社会保障制度改革だ。「安定財源を確保し、受益と負担の均衡がとれた制度を構築する」というだけで、社会保障制度国民会議の議論を待つ姿勢なのは物足りない。公務員制度改革なども同様で、具体的な方向性が何も示されていない。 どの政策をいつごろ実現するかという工程表を含め、今後の国会論戦で首相は、施政方針演説を肉付けする具体策をもっと語る必要があるだろう。 第2次安倍内閣の滑り出しは極めて順調で、本紙の直近の世論調査で内閣支持率は70%に達した。野党が多数を占める参院でも緊急経済対策を盛り込んだ2012年度補正予算が1票差で可決された。野党の足並みはそろっておらず、政策ごとの部分連合が成立しやすい状況が生まれている。 首相はこの好機を生かし、TPP交渉への参加で待ったなしとなった農業改革や規制改革に果敢に立ち向かうときである。
【産経主張】首相施政方針演説 強靱な国へ自立と創造を 安全な原発の再稼働進めよ2013.3.1 03:39
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130301/plc13030103390005-n1.htm
内外の危機を乗り越えて「強い日本」を再生するカギは「自立」の精神にある。安倍晋三首相が行った施政方針演説を貫く最大の柱である。 戦後日本が忘れがちで、逆境をはね返すために今最も必要な「自立」を明確にしたことを評価したい。このことは、「一身独立して一国独立する」という福沢諭吉の言葉を引き、「(政府と国民一人一人が)自ら運命を切り拓(ひら)く意志を持たないかぎり、未来は開けない」という表現に象徴される。
≪憲法改正の議論加速を≫
「安全運転」と呼ばれた1月末の所信表明演説で封印された憲法改正や集団的自衛権の行使容認問題に踏み込み、「安倍カラー」をにじませたことも歓迎したい。 一方で問われるのは、演説に盛られた政策や決意を実際の成果に結びつけていく指導力だ。政府と国民の先頭に立って「自立」とは何かを示してもらいたい。 「自立」の意味は幅広い。首相は東日本大震災の被災地で、被災者から「思いやり」や「自立して支え合う気概」を感じ取ったとし、「希望のもてる復興」を創り上げる決意を示した。 自らも病気で首相職を一度辞した首相が「頑張る人が報われる社会」に向け、個人が何度でもチャレンジできる機会をつくる必要性を訴えたのはわかりやすい。 民主党政権は最低保障年金構想のように、「自助・自立」よりも国や自治体による共助・公助を重視しようとしたが、実現可能な制度とは到底いえなかった。 首相は自立の理念に基づく政策に改める姿勢を強調した。だが、国民に安心感を持ってもらうには社会保障制度改革の具体案を早急に示さなければならない。 自立が求められるのはこれだけではない。首相は日米同盟の「不断の強化が必要」で、抑止力を高めるために、「さらなる役割を果たす」と宣言した。 力ずくで海洋権益拡大を進める中国に対しては、レーダー照射事件を強く批判して、「海の法の支配」を求めた。サッチャー元英首相の「国際法が力の行使に勝たねばならない」という発言を引用して、尖閣諸島問題を念頭に「力による現状変更は、何も正当化しない」と、中国の挑発的行動を強く牽制(けんせい)した。当然である。 だが、米国で1日に国防費の強制削減が始動すれば、在外米軍の作戦能力が大きく失われかねない。その補完のためにも、日本の率先した行動が不可欠だ。
防衛費増額や、「米国に向かう弾道ミサイルの迎撃」など集団的自衛権の行使容認に向けた有識者懇談会の議論、日本版国家安全保障会議(NSC)創設など課題は明白だ。それを一層加速する必要がある。
≪率先し対中抑止に動け≫
憲法改正についても、首相は衆参両院の憲法審査会の議論の促進を呼びかけた。戦争放棄などをうたった憲法9条のため、領土を守る自衛行動さえ十分にとれない。国家としての気概と自立心を持つ根幹の問題は、憲法を改正しなければ解決できない。 デフレ脱却へ向けた大胆な金融政策と機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」の中でも、首相はとくに成長戦略の構築に力点を置いた。 日本企業の誇る技術を世界市場に売り込み、受け身でなく、「ルールを創る国でありたい」と多国間のルールづくりに参加する必要性を強調したのは妥当だ。その象徴が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)であり、海外の成長を取り込み、日本の持続的成長を確保するためにも不可欠だ。 先の日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃が前提でないことを確認した」とし、「政府の責任で交渉参加を判断する」としたことは評価できるが、ここでも速やかな行動が必要だ。交渉参加を早期に正式決断し、国益を守るための交渉に参画しなければならない。 災害に備え、国民の生命と財産を守るには「強靱(きょうじん)な国づくり」が急務と訴えた。また、強い経済をよみがえらせるには、安価で安定的な電力供給が欠かせない。
首相が「責任あるエネルギー政策を構築する」とし、安全が確認された原子力発電所の再稼働を明言したのは当然である。 だが、再稼働に向けた取り組みは遅れている。政府の責任で原発を安全に活用する政策を示し、実際の再稼働につなげるべきだ。
東京 施政方針演説 弱者切り捨てでは困る 2013年3月1日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030102000137.html
安倍晋三首相による施政方針演説は「自立」に貫かれた。その大事さは理解するが、自立したくてもかなわない弱者にこそ手を差し伸べるのが政治の姿である。基本を忘れてもらっては困る。
この国会二度目の首相演説である。冒頭、福沢諭吉の「学問のすゝめ」から「一身独立して一国独立する」を引き、「誰かに寄り掛かる心を捨て、それぞれの持ち場で自らの運命を切り開く意志を持たない限り、私たちの未来は開けない」と訴えた。 長期の経済低迷と巨額の財政赤字、本格的な少子高齢化社会の到来、東日本大震災と福島第一原発事故による甚大な被害、周辺諸国の日本領域への挑戦など、日本が直面する課題は多く、深刻だ。 それらを克服するにはどうすればよいのか。自立して懸命に生きる人同士が苦楽を共にして助け合う。被災地での支え合いに感銘を受けた首相は、そうした姿こそが「強い日本」復活の原動力になると訴えたかったのだろう。 自立心を持つことも、支え合って生きていくことも大事なことである。それ自体に異存はない。 ただ危惧するのは自立を強調するあまり、自立できない人が置き去りにされてしまうことだ。苦楽を共にできない人が支え合いの輪の外に置かれてしまうことだ。 首相も演説で「どんなに意欲を持っていても、病気や加齢などで思い通りにならない方々がいる」と指摘した。頑張りたくてもかなわない、立場の弱い人々を支えるのが、政治本来の役割である。そのことを忘れてほしくはない。 社会保障と税の「一体」改革は消費税増税だけが決まり、社会保障制度改革は後回しだ。有識者の国民会議は始動したが、議論の遅れも指摘される。社会保障制度は今のままで、消費税増税だけが強行される事態は見たくない。政治の覚悟が問われる場面だ。 社会保障の在り方について、首相は「自助・自立を第一に、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べる」と主張し、民主党は先の党大会で決めた新しい綱領に「個人の自立を尊重しつつ、同時に弱い立場に置かれた人々とともに歩む」と明記した。 ニュアンスの違いはあろうが、個人の自立を重んじ、弱者を支えることでは同じではないか。ならば、社会保障のあるべき姿の議論を急ぎ、夏の参院選前に結論を出し、堂々と国民に問うべきだ。それが政治の責任でもある。