岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

東北の森が危ない / 「東北自然保護の集い」講演・報告を考える(2)

2009-12-01 05:05:17 | Weblog
 (今日の写真は、東北の中部から南部にかけての東側地域に見られる「典型的」な里山である。コナラ林に「モミ」が点在している。遷移の進行がゆっくりと進んでいる。
 今、この里山で、「松枯れ」や「ナラ枯れ」が起こっているという。「ナラ枯れ」は「カシノナガキクイムシ」によって引き起こされている。)

◇◇ 東北の森が危ない ◇◇ 

 宮城県などでは、「ニホンンジカ」によって「樹木」の「枯れ」が引き起こされている。「シカ」は樹木の「樹皮」を食べる。食べられた木は「枯れる」しかない。
 また、里山では「クリ」の木が枯れているという。これは「カツラマルカイガラムシ」による被害だという。「カツラマルカイガラムシ」の被害は「ナラ類、カエデ類、シデ類、カンバ類、ハンノキ類などバラ科を除く殆どの樹木にみられる」そうである。
 また、被害を受けた林の近くには「ブドウ」や「クリ」の放置園があり、被害樹は若い木、劣勢木が中心で、優勢木には余り被害がなく、被害発生後3年で被害木の約40%が枯れるともいわれている。
 ここで、思い出すのは、岩木山の環状道路沿いに植樹され放置状態の「オオヤマザクラ」のことだ。まだ被害の報告を聞いてはいないが「」につく虫「シンクイムシ「ハリトーシ」のことだ。
 シンクイムシはオオヤマザクラの果実を食べて増え、近隣りんご園に広がる。ここで言うシンクイムシとは「シンクイムシ類」の「モモシンクイガ」のことである。
 「モモ」とあるが「リンゴ」につく害虫で、病害虫名を「モモシンクイガ」という。成虫で体長は8mmという小さい虫だ。これがリンゴの実に、幼虫期に食入して被害を及ぼす。
 山形県では「ナラ枯れ」と「ブナの葉枯れ」被害が深刻である。全国的にみると、北陸から東北の日本海側が中心である。
 ナラ菌酵母を餌にしているカシノナガキクイムシの雌が樹内にナラ菌を植菌して、それが出す「フェロモン」に引き寄せられて多くが「集中穿穴」をする。ナラ菌により、通水が阻害されて、ナラ枯れが起こるのである。枯死する樹木はブナ科のミズナラ、カシワ、コナラ、クリなどである。
 「ブナの葉枯れ」は「ウエツキブナハムシ」の幼虫と成虫が葉肉を食べ、葉を枯らしてしまうものである。「ウエツキブナハムシ」は夏にブナの葉に産卵し、幼虫は葉の表面について食べる。8月下旬あたりから枯れた葉が目立つようになるが、枯死はしない。
 岩木山では、私の見る限り、「ナラ枯れ」も「ブナの葉枯れ」もないが、いつ発生するか分からないだろう。注意をしなければいけない。ただし、ここ10年近く「ブナアオシャチャホコ」の被害は出ていない。

 「カシノナガキクイムシ」や「ウエツキブナハムシ」の発生原因に「温暖化」と「酸性雨」をあげる人もいるが、詳しい原因は今のところ分かってはいない。だが、「温暖化と酸性雨」との関係はありそうである。)

 なお、 2日間に渡る「東北自然保護の集い」に最初から最後まで参加し、討論に参加していた関東森林管理局藤江達之部長から、次のようなメールが「集い」事務局にあったというので、このブログでも紹介することにしよう。
 …「話題となった『ナラ枯れ』のメカニズムや対策をまとめた最近の出版物で目についたものとして、次のようなものがあります。また、林野庁の施策の概略を示したものを添付します(「RINYA」09.11月号)。
1 「ナラ枯れと里山の健康」(黒田慶子編著、林業改良普及双書、2008)
2 「ナラ枯れ増加から見えてきた「望ましい里山管理」の方向」(黒田慶子、「森林技術」誌09.8月号、NO.809)
3 「ナラ手段枯損被害の防除技術の開発」(中村人史、「山林」誌09.10月号、NO.1505) また、当日お話ししたように、東北森林管理局では、現在、山形県と協力して、合成フェロモンによるカシノナガキクイムシ捕殺技術の実証試験を実施しています。
 難しい課題です。とりあえずの情報提供ということで、ご関心の皆様にお知らせいただければ幸いです。」…。

◇◇「東北自然保護の集い」講演・報告を考える(2)◇◇

 昨日は「八千メートル峰に見る温暖化」という記念講演のことを取り上げたが、次に進む前に「講演内容」と「画像・写真」のことについて書きたいと思う。
 結論から言うと、「講演や報告」という「お話し」の部分と「画像や写真」との間に、余り整合性を読み取るものが多くはなかったということである。
 去年の「講演・報告」の仕方に対する意見として、秋田の奥村さんは、秋田の会報の中で「次から次へと画像を見せられて、ついていくのが精一杯で話しの内容がよく分からなかった」と書いていた。今年もそのようなことが起こった。
 「画像や写真」が多ければ「話し」は短くすればいいし、話しが長い場合は「画像や写真」を少なくするのが時間に制限のある場合は当然であろう。講演は1時間与えられていたが、「報告」は30分である。
「講演」とは「聴衆に対してある題目について話しをし、説ききかせること」であり、「報告」は「しらせつげること」である。
 私も「ノートパソコン」と「オーバーヘッドプロジェクター」を使い「パワーポイント」というソフト活用で講演や講義(講座)をやっているので、これらの「ソフト」や「機器」を使うことが悪いとは考えていないし、「使うな」とは言わない。使い方によっては「話し以上に効果」がある場合もある。