岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「東北自然保護の集い」講演・報告を考える / 風力発電事業も環境アセスの対象

2009-11-30 05:27:50 | Weblog
 (今日の写真は福島県猪苗代町で開催された第30回東北自然保護の集いの「開会行事の一コマ」である。挨拶しているのは福島県自然保護協会会長星さんだ。
 この挨拶の後、写真の右側に見える「垂れ幕」表記の「八千メートル峰に見る温暖化」という演題で保坂さんが記念講演をした。
 それから、現地報告ということで、「尾瀬における保護対策と課題」、「風力発電の諸問題」、「猪苗代湖の水質悪化と改善の取り組み」、「深刻化するブナ・ナラ枯れの現状」、「日本の天然林を守る活動」という「盛り沢山」の報告が続いた。しかも、「オーバーヘッドプロジェクター」を使った「パワーポイント」による画像を使ってのものだった。まるで、「画像のラッシュアワー」であった。)

◇◇「東北自然保護の集い」講演・報告を考える ◇◇

 「八千メートル峰に見る温暖化」という講演は「看板倒れ」であったと思う。私も、7500mの高峰に登った経験があるので、「高所登山」という観点で、「登山者」という視点で見る限り、聴く限りでは、それなりの内容で「面白くもあり、ためにもなる」ものではあった。
 だが、視聴してくれる対象者を誤ったのではないかと思うのだ。ここで示された画像や内容は、あくまでも「高所登山」に関心のある「登山者」にとっては興味のあるものだったのではないか。
 だが、目の前にいる人たちは「自然保護に関心があり、実際、自然保護活動をしている人たち」である。中には、私のように「高所登山」の経験がある者もいよう。しかし、その数は非常に少ないはずである。
 
 私はこの「講演(?)」を聴いて、見て、これは「山行報告会」向けに作られたものではないかと思った。実は私も山行(登山)報告会をした経験があるが、このようなものであった。当時は「オーバーヘッドプロジェクター」も「パワーポイント」もなかったので、スライドを交えたものであったが、その構成や内容は保坂さんのそれとそっくりであったような気がする。
 だから、「演題」は「八千メートル峰に見る温暖化」でなく、「八千メートル峰K2登山の報告」か「八千メートル峰K2登山敗退を語る」というものでよかったのだ。もっと正直に率直な「演題」とすれば、それなりに理解して聴くことが出来たはずなのだ。
 だが、「…見る温暖化」とするから「温暖化」に、とりわけ、敏感な「自然保護に関わっている人たち」なのだから、講演内容の中心や基本に「温暖化」を置いてしまい、それを聞き取ろう、確かめようとするのだ。
 しかし、一向に「八千メートル峰」における「温暖化」の話しや画像は出てこない。このルートを辿ったとか、このようなアクシデントが起きたとか、このような花が咲いていたとかという「ことがら」が延々と続くのである。
 確かに、登山報告会で高所登山に興味のある者にとっては「有意義」であり、有益な内容ではある。特に、後々「登頂」を目指す者にとっては「たまらないほどいい」話しであるにはちがいない。
しかし、「自然保護」とは結びつかない。結びつくとすれば「八千メートル峰」という高所に残置された「登山者のゴミ」であろうか。

 物足りない思いで「八千メートル峰に見る温暖化」を聴いた参加者には次の本を読むことを勧めたい。
 少し古いが「温暖化」は「局所」ほど早くその影響を受けるので、古くても大丈夫だろう。それは、岩波新書版で小野有五著の「ヒマラヤで考えたこと」である。きっと「物足りなさ」を十分補ってくれるものであるはずだ。

◇◇ 風力発電事業も環境アセスの対象 ◇◇

 昨日、帰宅してから、NHKテレビでニュースを見ていたら「風力発電事業も環境アセスの対象にする」ということが放映されていた。
 前日に浅田正文さんの「風力発電の諸問題」を聴いていたので、特別このニュースには関心がいった。
 浅田さんの話しは、まさに「風力発電の諸問題」であり、その問題点を「現地・現場」に即して的確に指摘していたのである。
 私は自分の不勉強と不明を深く恥じた。そして、深い悔恨の情に囚われた。それは、これら「諸問題」をもっと早く知っていたら、岩木山の「風力発電所」計画への対応がもっと違っていただろう、もっと厳格に対応出来たのではないかということであった。私は深く、浅田さんに感謝した。浅田さんが提起した「諸問題」をさらに学習して、それらを踏まえて、これから設置計画を持っている会社と交渉等への対策を考えたいと、強く思ったのである。

 ニュースを見た後で、朝日新聞電子版にアクセスしたら、「風力発電事業も環境アセスの対象にする」という記事が載っていた。しかも、2009年11月27日である。
 私は、この掲載に気づかなかった。これに気づき読んでいたら、28日と29日の討論もかなり、弾みがついて方向性や見通しが見えてきたであろう。実に残念なことであった。
 それでは、次にその記事を掲げてみよう。

「風力発電事業も環境アセスの対象に専門委が中間報告」

 …環境影響評価(アセスメント)法の見直しを進めている中央環境審議会の専門委員会は27日、アセス対象事業として風力発電所の追加などを求める中間報告を提示した。早ければ年明けにもまとめる最終報告を受け、小沢鋭仁環境相は通常国会で改正法案の提出をめざす考えだ。

 環境省によると、風力発電所は1990年代以降に建設が本格化し、2008年度末現在で計1517基(総設備容量185万キロワット)が設置されている。最近では9割近くが1千キロワット級以上と大型化が進んでおり、一部の地域で騒音や低周波音への苦情が出ている。

 こうした現状を受け専門委の中間報告は、自治体が条例でアセスを義務づけたり、事業者が自主的に実施したりしている場合もあるものの、規模や評価項目にばらつきがあると指摘。環境影響評価法の対象事業として国がアセスの方法を統一する必要があると判断した。

 中間報告はこのほか、公有水面埋め立て事業のように自治体が許認可権を持つ事業のアセスにも環境相が意見を表明する仕組みや、評価書類の電子データ化による公開などの必要性も指摘した。…