岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「晩秋の藪こぎ」を主題にした歌四首 / 危険木処理に関する津軽森林管理署の対応について

2009-11-06 05:24:12 | Weblog
(今日の写真は、Iさんの創った短歌に合いそうな風景と思えるものだ。Iさんは私が担当しているNHK弘前文化センター講座の受講者である。
 私はこの文化センターで2つの講座を担当しているが、Iさんは2つの講座を受講している。先月の22日と25日に、それぞれ野外に出て、岩木山の中腹部まで登り、「秋の山」を体を張って体感して貰った。
 先ず、22日である。石切沢右岸を詰めて百沢登山道に入り、そこから登山道を姥石付近まで登り、左の「猛烈な竹藪」に入った。樹木の少ないその場所は、3m以上の、しかも太くて、斜面に対して下方に曲がりながら、突然鎌首をもたげる蛇のような生え方をする「根曲り竹」が密生している竹藪であった。
 Iさんにとっては「初体験」の、しかも私でも喘ぎながらしか進めないほどにきつい藪こぎだったのである。悪戦苦闘すること30分、やっとの思いで竹の疎らな樹林帯に入った。)

◇◇ 「晩秋の藪こぎ」を主題にした歌四首 ◇◇

 歌詠み人は多い。そして、それに比例して短歌の数も際限を知らないだろう。だが、「藪こぎ」を主題にした短歌は恐らくないのではなかろうか。

・熊笹(ささ)にうもれわれは山の子見上ぐれば茂るあはれに秋ふかくして

 これが、Iさんの創った短歌だ。まさに、今日の写真のような竹藪をくぐり抜けて、イタヤカエデやミズナラの生えている疎林に出たのである。
 竹藪に埋もれながら、必死になって強靱な竹を押しのけて先頭を行く私を追いかける。そうしているうちに、「これは山の子がすることなんだろう。私は今、山の子なんだ」という思いが芽生えたに違いない。藪の中は「見上げて」も見えるものは竹の葉であり、空の断片でしかない。空間は完全に「竹」によって支配され、人は抑圧の極地にいる。
 何とか頑張って、「見上げると空間」が見えるところまで来た。その喜びが下の二句によく現れているだろう。結句の「秋ふかくして」という感慨は、見上げることの出来る空間に広がる秋色に染まった尾根の全景を捉えているように思える。しかも、女性の繊細な感覚でである。
 私には、このような感覚はない。粗野な感情と即物的な目しかもっていない。その私がIさんの気持ちを理解したつもりになって創った歌がこれだ。

・笹藪に置いてけぼりの不安あり鉈もて払う先駆(さきがけ)を追う (三浦 奨)

 次は私自身の「行動」を歌ったものだ。駄作だが我慢をしてほしい。

・根曲りに抗い伐(ばっ)し進む吾後続やあれとしばし振り向く  (三浦 奨)
・先が見え抗う竹も疎らなり休む間もなくルートを探る (三浦 奨)
 
おことわり:「秋の雲、日本語には『雲』の名が多いのだ。(その5)」は休載し明日以降掲載する。

◇◇ 今回の危険木処理に関する津軽森林管理署の対応について(その1) ◇◇

 今回の危険木処理に関する津軽森林管理署の告知・公開に関わる対応は、明らかに「ぶな巨木ふれあいの径」危険木伐採に関わる告知および「ぶな巨木ふれあいの径」に関わる「アンケート」に関することに比較すると、一層その公開性は民主的になり、広範なものになっている。つまり、対象に限定を設けず、広く一般市民まで広げて、インターネットという手法を用いたことだ。これは、あくまでも比較論上ではあるが、評価していいだろう。

「ぶな巨木ふれあいの径」危険木伐採の時には、次の手順と範囲で行われていた。
…津軽森林管理署がこれら危険木13本について青森県と伐採協議を行い、同意を得る。
その後、津軽森林管理署から関係団体(西目屋村、環境省、青森県自然保護課、白神山地ビジターセンター)へメールやファックスで伐採を通知した。…あくまでもこれだけだった。

 また、津軽森林管理署が出した「ぶな巨木ふれあいの径」に関わる「アンケート」も広く一般の人を対象にしているのではなく、「津軽森林管理署」と関わりのある団体や個人に対して行われるものであった。
 少なくとも、マスコミが関心を寄せて、動き出した「事件」である。この「伐採問題」は社会性を濃厚に持つに至っているのだ。となれば、社会全般、つまり広く一般からも、「声を聞く」必要があるだろう。その視点がすっぽり抜け落ちていた。
 アンケートの依頼先を「『ぶな巨木ふれあいの径』をご利用されている皆様へ」としているのだから、「特定」のもだけでは矛盾があるだろう。
 さらに、「アンケート」の趣旨、アンケート項目には、「ぶな巨木ふれあいの径」危険木伐採に関する重要かつ基本的なキーワードである「安全な空間」は一度も出てこなかった。
 この「アンケート」には次のような意見も寄せられた。
「このアンケートの範囲だけでは、伐採をこのような形で認めた上での対策の検討になってしまうのではないか。アンケートを採る前提には、伐採はすべきでなかったとの意見と、伐採にあたり十分な協議、検討が必要、との見解が必要なはずだ。」 
 今回の告知は「歩道等安全確保のための危険木処理について」であり、「歩道等の保全管理と安全確保のため、今般下記の箇所において危険木の処理を予定していますのでお知らせします。なお、この処理についてご意見等がございましたらお問い合わせ下さい。」である。ここにも「安全な空間」という語句は出ていない。「ぶな巨木ふれあいの径」危険木伐採の時には、あれほど大事にした「錦の御旗」的な語句が使われないのだ。(明日に続く)

[連続1000回ブログ書きを今日で達成しました。・連続1000日達成まではあと、9日]