(今日の写真は、一体何の葉っぱだろう。11月8日、岩木山のとある踏み跡道の「赤土」が出ている場所で見たものだ。1枚の葉の大きさは30cm近い。実に大きい。その上、この時季だというのに枯れていない。瑞々しく青々としているのだ。まさに「活きのいい青菜」である。
どう見ても、この時季にこれほどに「青々している」ものは「越年草」の植物であろう。そう考えて、頭の中の「越年草」と「葉の形」ファイルを探ってみた。春ならば「花」の形を見ると、直ぐにでも気がつくだろうが、この時季はそれが出来ない。)
◇◇ アブラナ科の仲間、「大根」が「踏み跡道」に生えていた ◇◇
これは、アブラナ科タネツケバナ属の越年草(二年草)の仲間だ。出てくる名前は「岩木山」や原野、それに田畑に生える、いわゆる「雑草」と呼ばれるものばかりだ。
先ずは種漬け花(タネツケバナ)、別名はテイレギ(葶藶)やコメナズナ、それにタガラシなどだ。次いで、大葉種漬け花(オオバタネツケバナ)、路種漬け花(ミチタネツケバナ)、立ち種漬け花(タチタネツケバナ)と続く。
だが、葉の形が、それらとは微妙に違うし、決定的な違いは大きさである。こんなに大きい「タネツケバナ」はない。
これは、アブラナ科ダイコン属の越年生植物である「ダイコン(大根)」だ。地中海地方や中東が原産で、古代エジプトから食用としていた記録があるそうだ。ユーラシアの各地でも利用されており、日本では弥生時代に中国を経て渡来したらしい。
根はまっすぐで太く白い。名前の由来は、不明らしいが、「大きな根」と捉えることでいいのではないだろうか。
葉は、写真のように「羽状に分裂」し、春になると、淡紫色または白色で十字の形をした花を総状につけるのである。
私はふと、「ハマダイコン(浜大根)」のことを思い出した。「ハマダイコン」はダイコンが野生化したものであり、海岸の砂浜に生育することが多いが、海岸近くの荒れ地などにも生育している。七里長浜や十三湖湖岸などでも見ることがある。そして、春の終わり頃から6月にかけて花茎の先端に、花弁の先を淡い紫色に染めて咲く姿を思い浮かべていた。「ハマダイコン」の花は本当に清楚で美しい。
私はその美しさの中に、人知れず、海岸に流れ着き、そこで根を張り、生き続けている彼女たちの「苦難」の歴史を見たような気がした。
そして、今、目の前で、元気に葉をのばし、来春に備えている「ダイコン」にも同じ思いを抱いた。
「あなたはどこから来たの。どのようにしてこの場所にやって来たの」…。生えている場所の土は、粘土質で硬い。ダイコンが生育出来そうなところではない。だが、彼女はそれを拒否出来ない。そこから動こうとはしない。その場所で生き抜くことしか出来ない運命なのだ。だが、この「青々とした生き様」は何だというのか。「苦難の歴史」など微塵もないではないか。
種か、または根がここに運ばれてきたことも、それは苦難でも何でもなく、単なる「偶然」だったのである。植物はすべてその「偶然」に従って、悠然と生きるのだ。
間もなく降り出すであろう雪の下で、春まで頑張って、白い花をつけてほしい。雪が消えたころ、また、会いに来るよ…。)
◇◇ 大根の仲間のアブラナ科タネツケバナ属の「タネツケバナ」こと ◇◇
ダイコンの仲間の代表はアブラナ科タネツケバナ属の「タネツケバナ(種漬け花)」だろう。岩木山では環状線沿いの道ばたに「タネツケバナ」が、沢すじでは「オオバタネツケバナ」が見られる。
「タネツケバナ」は北海道、本州、四国、九州の田畑、野原、畦、溝、湿地など湿ったところに群生している。分布が日本全土だから、「日本在来種」と思われがちだが、何と、「稲作文化が日本に到来した弥生時代に渡来した史前帰化植物」であると言われている。大根もその頃中国からやって来たものだろう。
越年草だから、10月頃に発芽し、ロゼットで越冬し、春に花を咲かせる。しかし、変わりものはどこにでもいるものだ。秋にも花をつけるものがあるそうだ。
花の咲く5月ごろには、花に栄養を送らなければいけないので、大きな葉である「根生葉」は枯れるのである。花は白色で花弁は四枚。直径4~5mmと小さい。葉は奇数羽状複葉だ。小葉は3~10数枚と多様で円形から楕円形だ。
果実は長さ約2mmの細い円筒形。実が熟すと種子を覆っていた皮が勢い良く反転して、種子を四方に飛ばして繁殖する。
これは、4~5月ころの若芽、若葉を摘み取り、生でサラダにして食べることが出来る。茹でて水にさらして和え物、おひたし、汁の実などにする。クレソンに似た味がして美味しい。
名前の由来だが、稲の種籾(たねもみ)を水に漬けるころに、白花を一面につけることから、タネツケバナの名がついた
また、果実が熟すと種子を覆っていた皮が反転して、勢いよく種子を四方に飛ばすことから、繁殖力の強さを馬に見立てて、「種付け馬」が転訛して、「タネツケバナ」になったとも言われている。別名にはテイレギ(葶藶)などがある。
今日の写真を彷彿とさせる正岡子規の俳句に…
「ていれぎの下葉浅黄に秋の風」というのがある。
『ていれぎの下葉も浅黄色になってきた。ああ、すっかり季節は秋になってきているのだなあ。風も何となく冷たいよ』という程度の句意だろうか。
全体に辛子油を含み、辛味があって浸し物や刺身の「つま」に用いてもいい。愛媛県の松山市附近では、これを葶藶(ていれぎ)と呼び、近くの高井産のものは「高井の葶藶」と呼ばれ、その地の名物となっていたという。
伊予節にも唄われた「高井のていれぎ」は「オオバタネツケバナ」のことで、清流に自生する美しい緑色の水草、さわやかな辛味があって美味しいのである。子規にとってはなつかしい故郷の味だったのだろう。
お断り:●秋の雲、日本語には「雲」の名が多いのだ。(その8)●は本日休載し、明日、「上層雲」の「巻雲」、「巻積雲」、「巻層雲」について掲載する。
[ブログ書きは今日で連続1005回になりました。連続1000日達成まではあと4日です]
どう見ても、この時季にこれほどに「青々している」ものは「越年草」の植物であろう。そう考えて、頭の中の「越年草」と「葉の形」ファイルを探ってみた。春ならば「花」の形を見ると、直ぐにでも気がつくだろうが、この時季はそれが出来ない。)
◇◇ アブラナ科の仲間、「大根」が「踏み跡道」に生えていた ◇◇
これは、アブラナ科タネツケバナ属の越年草(二年草)の仲間だ。出てくる名前は「岩木山」や原野、それに田畑に生える、いわゆる「雑草」と呼ばれるものばかりだ。
先ずは種漬け花(タネツケバナ)、別名はテイレギ(葶藶)やコメナズナ、それにタガラシなどだ。次いで、大葉種漬け花(オオバタネツケバナ)、路種漬け花(ミチタネツケバナ)、立ち種漬け花(タチタネツケバナ)と続く。
だが、葉の形が、それらとは微妙に違うし、決定的な違いは大きさである。こんなに大きい「タネツケバナ」はない。
これは、アブラナ科ダイコン属の越年生植物である「ダイコン(大根)」だ。地中海地方や中東が原産で、古代エジプトから食用としていた記録があるそうだ。ユーラシアの各地でも利用されており、日本では弥生時代に中国を経て渡来したらしい。
根はまっすぐで太く白い。名前の由来は、不明らしいが、「大きな根」と捉えることでいいのではないだろうか。
葉は、写真のように「羽状に分裂」し、春になると、淡紫色または白色で十字の形をした花を総状につけるのである。
私はふと、「ハマダイコン(浜大根)」のことを思い出した。「ハマダイコン」はダイコンが野生化したものであり、海岸の砂浜に生育することが多いが、海岸近くの荒れ地などにも生育している。七里長浜や十三湖湖岸などでも見ることがある。そして、春の終わり頃から6月にかけて花茎の先端に、花弁の先を淡い紫色に染めて咲く姿を思い浮かべていた。「ハマダイコン」の花は本当に清楚で美しい。
私はその美しさの中に、人知れず、海岸に流れ着き、そこで根を張り、生き続けている彼女たちの「苦難」の歴史を見たような気がした。
そして、今、目の前で、元気に葉をのばし、来春に備えている「ダイコン」にも同じ思いを抱いた。
「あなたはどこから来たの。どのようにしてこの場所にやって来たの」…。生えている場所の土は、粘土質で硬い。ダイコンが生育出来そうなところではない。だが、彼女はそれを拒否出来ない。そこから動こうとはしない。その場所で生き抜くことしか出来ない運命なのだ。だが、この「青々とした生き様」は何だというのか。「苦難の歴史」など微塵もないではないか。
種か、または根がここに運ばれてきたことも、それは苦難でも何でもなく、単なる「偶然」だったのである。植物はすべてその「偶然」に従って、悠然と生きるのだ。
間もなく降り出すであろう雪の下で、春まで頑張って、白い花をつけてほしい。雪が消えたころ、また、会いに来るよ…。)
◇◇ 大根の仲間のアブラナ科タネツケバナ属の「タネツケバナ」こと ◇◇
ダイコンの仲間の代表はアブラナ科タネツケバナ属の「タネツケバナ(種漬け花)」だろう。岩木山では環状線沿いの道ばたに「タネツケバナ」が、沢すじでは「オオバタネツケバナ」が見られる。
「タネツケバナ」は北海道、本州、四国、九州の田畑、野原、畦、溝、湿地など湿ったところに群生している。分布が日本全土だから、「日本在来種」と思われがちだが、何と、「稲作文化が日本に到来した弥生時代に渡来した史前帰化植物」であると言われている。大根もその頃中国からやって来たものだろう。
越年草だから、10月頃に発芽し、ロゼットで越冬し、春に花を咲かせる。しかし、変わりものはどこにでもいるものだ。秋にも花をつけるものがあるそうだ。
花の咲く5月ごろには、花に栄養を送らなければいけないので、大きな葉である「根生葉」は枯れるのである。花は白色で花弁は四枚。直径4~5mmと小さい。葉は奇数羽状複葉だ。小葉は3~10数枚と多様で円形から楕円形だ。
果実は長さ約2mmの細い円筒形。実が熟すと種子を覆っていた皮が勢い良く反転して、種子を四方に飛ばして繁殖する。
これは、4~5月ころの若芽、若葉を摘み取り、生でサラダにして食べることが出来る。茹でて水にさらして和え物、おひたし、汁の実などにする。クレソンに似た味がして美味しい。
名前の由来だが、稲の種籾(たねもみ)を水に漬けるころに、白花を一面につけることから、タネツケバナの名がついた
また、果実が熟すと種子を覆っていた皮が反転して、勢いよく種子を四方に飛ばすことから、繁殖力の強さを馬に見立てて、「種付け馬」が転訛して、「タネツケバナ」になったとも言われている。別名にはテイレギ(葶藶)などがある。
今日の写真を彷彿とさせる正岡子規の俳句に…
「ていれぎの下葉浅黄に秋の風」というのがある。
『ていれぎの下葉も浅黄色になってきた。ああ、すっかり季節は秋になってきているのだなあ。風も何となく冷たいよ』という程度の句意だろうか。
全体に辛子油を含み、辛味があって浸し物や刺身の「つま」に用いてもいい。愛媛県の松山市附近では、これを葶藶(ていれぎ)と呼び、近くの高井産のものは「高井の葶藶」と呼ばれ、その地の名物となっていたという。
伊予節にも唄われた「高井のていれぎ」は「オオバタネツケバナ」のことで、清流に自生する美しい緑色の水草、さわやかな辛味があって美味しいのである。子規にとってはなつかしい故郷の味だったのだろう。
お断り:●秋の雲、日本語には「雲」の名が多いのだ。(その8)●は本日休載し、明日、「上層雲」の「巻雲」、「巻積雲」、「巻層雲」について掲載する。
[ブログ書きは今日で連続1005回になりました。連続1000日達成まではあと4日です]