(今日の写真は何を撮ったものだろう。秋の野山を歩いていると、色々なものに出会う。これもその一つだろう。
その日は他に、「ヤマツツジ(山躑躅)」がたった一輪だけ咲いているのにも出会った。「ヤマツツジ」は5月に咲く花である。それが、9月の中旬に咲いていたのである。しかも、一本の樹木に、たった1輪である。その咲き方がまた、おかしい。縮んでいる。縮こまっている。花弁を開いていないのである。
固く閉ざしているが、ある部分は開きかけている。その様子が何だか「ちぐはぐ部品」なのだ。
数年前にも、秋に「ヤマツツジ」が一斉に開いているのに出会ったことがあった。今回よりも遅かったはずだ。うっすらと霜が降りた日だったから、恐らく10月も半ば過ぎていたかも知れない。その年は、9月に「ミヤマキンバイ(深山金梅)」が、多数花を咲かせた。「秋の日和」を「春」と勘違いして咲き出したものだろうと、その勘違いの「幼稚性」にそこはかとなく「親しみ」を感じたものだ。
その時のことを「雪渓の切れたところに黄金が光る。積雪の少ない西の岩場には大きな群落が風にそよいでいる。金のしとねと呼ぶにふさわしい。昨年は五月中に一度咲き終わったものが九月の中旬から下旬にかけてまた咲き出した。温暖化による異常だろうか」と拙著「岩木山・花の山旅」には書いている。
ところで、今日の写真は何だろう。登山道脇で見つけたものである。そろそろ「ブナ」が出てくる頃だろうと思って登っていたら、足許に大きな「キノコ」が現れた。
私は「キノコ」については、まったく疎い。知っている「キノコ」、というよりは「確実に」食べることの出来る「キノコ」については「サモダシ」、「ヒラタケ」、「マイタケ」程度しか知らない。だから、この写真の「キノコ」も何であるかは知らない。
それよりも、この「キノコ」の真ん中に穴が開いていて、そこに「塡め込まれた」ものに私の目は行った。それは、「ドングリ」だった。
「コナラ」の実か。「ミズナラ」の実か。形はどうだ、などという悩みは無用だ。そこは「ミズナラ林」だったからである。
どうして、このように穴が開いて、そこに「ドングリ」が入ったのだろう。その「謎解き」をする。恐らく単純なことだろう。
登山道沿いの「ミズナラ」は大木が多い。大きいものは樹高が20mを越えている。20m以上の高さから、垂直に落ちてくる「ドングリ」は、いくら軽いとはいえ「加速度」によって「地上」とぶつかる時の衝撃は、単位面積当たりでは「数kg」になるのではないだろうか。そうしたら、「柔らかい」キノコの傘なぞ「貫通」することはいとも簡単なことだ。そう考えてしまうと実につまらない。
そこで、もう一度眺めてみた。そうしたら、「キノコ」の穴の中の「ドングリ」が小さな顔に見えてきた。
「あれ、頭がないなあ」と呟きながら、「ドングリ」の頭に擬える「殻斗」を探したが、その「実」にはついていない。
その時だ。私の目には、この「キノコ」が小さな顔が被っている「帽子」に見えてきたのである。しかも、その帽子はスペインや南米の牧童たちが被る、つば広で丸い帽子の「ソンブレロ」に見えたのである。
思わず、「ニコリ」だ。岩木山のミズナラ林でスペインの牧童に出会うとは何という奇縁か。私は一人、満足に浸っていた。)
◇◇ 「落葉広葉樹」コナラとミズナラをよく知ろう(その2) ◇◇
(承前)
岩木山ではもっとも普通に見られる樹木、これが「コナラ」と「ミズナラ」である。
今日の写真の「ドングリ」はブナ科コナラ属の落葉高木「ミズナラ(水楢)」の果実だ。「殻斗」(帽子)の総苞片は、密に瓦状に圧着していて、灰褐色の細かい毛を密生している。「堅果」は長さ2~3cmで、年内に熟してしまう。
「ネズミ」や「リス」の食料になるし、「ツキノワグマ」も冬眠前に盛んに食べるのだ。
「ミズナラ」は「ブナ」とともに冷温帯を代表する落葉高木である。大きく成長し、大きいものでは、樹高が30mを越えるものもあるという。
南樺太と南千島から州の「冷温帯」に分布し、「ブナ」と混生したり、純群落を形成したりする。岩木山では「混生」している場所は少ない。「ブナ」よりも幾分、「低海抜地」に生育し、分布域は広い。
「ブナ」は遅霜に弱いから、霜の被害が出やすい尾根筋、特に朝日が当たる東側はミズナラが優勢となりやすいそうだ。だが、岩木山ではそのような傾向は余り見られない。まあ、言ってみれば、立地条件のいい場所を「ブナ」が占領し、厳しい場所で「ミズナラ」が優勢になる傾向がある。
花は新しい葉の展開と同時、5月に入ると咲く。「雄花花序」は尾状で、新しい枝から数個垂れ下がり、6~8cmほどである。雌花は新しい枝の上部の葉腋で咲くが目立たない。
新しい葉は5月の初めに出るが、「芽出し」の幼い葉はしっかりしており、勢いがある。展開し始めの頃は、葉脈に凹凸が目立ち、主脈の表側には白い長毛が見られる。(明日に続く)
[連続1000日ブログ書き達成まで後、48日]
その日は他に、「ヤマツツジ(山躑躅)」がたった一輪だけ咲いているのにも出会った。「ヤマツツジ」は5月に咲く花である。それが、9月の中旬に咲いていたのである。しかも、一本の樹木に、たった1輪である。その咲き方がまた、おかしい。縮んでいる。縮こまっている。花弁を開いていないのである。
固く閉ざしているが、ある部分は開きかけている。その様子が何だか「ちぐはぐ部品」なのだ。
数年前にも、秋に「ヤマツツジ」が一斉に開いているのに出会ったことがあった。今回よりも遅かったはずだ。うっすらと霜が降りた日だったから、恐らく10月も半ば過ぎていたかも知れない。その年は、9月に「ミヤマキンバイ(深山金梅)」が、多数花を咲かせた。「秋の日和」を「春」と勘違いして咲き出したものだろうと、その勘違いの「幼稚性」にそこはかとなく「親しみ」を感じたものだ。
その時のことを「雪渓の切れたところに黄金が光る。積雪の少ない西の岩場には大きな群落が風にそよいでいる。金のしとねと呼ぶにふさわしい。昨年は五月中に一度咲き終わったものが九月の中旬から下旬にかけてまた咲き出した。温暖化による異常だろうか」と拙著「岩木山・花の山旅」には書いている。
ところで、今日の写真は何だろう。登山道脇で見つけたものである。そろそろ「ブナ」が出てくる頃だろうと思って登っていたら、足許に大きな「キノコ」が現れた。
私は「キノコ」については、まったく疎い。知っている「キノコ」、というよりは「確実に」食べることの出来る「キノコ」については「サモダシ」、「ヒラタケ」、「マイタケ」程度しか知らない。だから、この写真の「キノコ」も何であるかは知らない。
それよりも、この「キノコ」の真ん中に穴が開いていて、そこに「塡め込まれた」ものに私の目は行った。それは、「ドングリ」だった。
「コナラ」の実か。「ミズナラ」の実か。形はどうだ、などという悩みは無用だ。そこは「ミズナラ林」だったからである。
どうして、このように穴が開いて、そこに「ドングリ」が入ったのだろう。その「謎解き」をする。恐らく単純なことだろう。
登山道沿いの「ミズナラ」は大木が多い。大きいものは樹高が20mを越えている。20m以上の高さから、垂直に落ちてくる「ドングリ」は、いくら軽いとはいえ「加速度」によって「地上」とぶつかる時の衝撃は、単位面積当たりでは「数kg」になるのではないだろうか。そうしたら、「柔らかい」キノコの傘なぞ「貫通」することはいとも簡単なことだ。そう考えてしまうと実につまらない。
そこで、もう一度眺めてみた。そうしたら、「キノコ」の穴の中の「ドングリ」が小さな顔に見えてきた。
「あれ、頭がないなあ」と呟きながら、「ドングリ」の頭に擬える「殻斗」を探したが、その「実」にはついていない。
その時だ。私の目には、この「キノコ」が小さな顔が被っている「帽子」に見えてきたのである。しかも、その帽子はスペインや南米の牧童たちが被る、つば広で丸い帽子の「ソンブレロ」に見えたのである。
思わず、「ニコリ」だ。岩木山のミズナラ林でスペインの牧童に出会うとは何という奇縁か。私は一人、満足に浸っていた。)
◇◇ 「落葉広葉樹」コナラとミズナラをよく知ろう(その2) ◇◇
(承前)
岩木山ではもっとも普通に見られる樹木、これが「コナラ」と「ミズナラ」である。
今日の写真の「ドングリ」はブナ科コナラ属の落葉高木「ミズナラ(水楢)」の果実だ。「殻斗」(帽子)の総苞片は、密に瓦状に圧着していて、灰褐色の細かい毛を密生している。「堅果」は長さ2~3cmで、年内に熟してしまう。
「ネズミ」や「リス」の食料になるし、「ツキノワグマ」も冬眠前に盛んに食べるのだ。
「ミズナラ」は「ブナ」とともに冷温帯を代表する落葉高木である。大きく成長し、大きいものでは、樹高が30mを越えるものもあるという。
南樺太と南千島から州の「冷温帯」に分布し、「ブナ」と混生したり、純群落を形成したりする。岩木山では「混生」している場所は少ない。「ブナ」よりも幾分、「低海抜地」に生育し、分布域は広い。
「ブナ」は遅霜に弱いから、霜の被害が出やすい尾根筋、特に朝日が当たる東側はミズナラが優勢となりやすいそうだ。だが、岩木山ではそのような傾向は余り見られない。まあ、言ってみれば、立地条件のいい場所を「ブナ」が占領し、厳しい場所で「ミズナラ」が優勢になる傾向がある。
花は新しい葉の展開と同時、5月に入ると咲く。「雄花花序」は尾状で、新しい枝から数個垂れ下がり、6~8cmほどである。雌花は新しい枝の上部の葉腋で咲くが目立たない。
新しい葉は5月の初めに出るが、「芽出し」の幼い葉はしっかりしており、勢いがある。展開し始めの頃は、葉脈に凹凸が目立ち、主脈の表側には白い長毛が見られる。(明日に続く)
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