(今日の写真は、何だろう。野山を歩いて「秋という季節」ほど、「これは何だろう」という事象に出会うことの多い時季はない。
この写真の花にも、そのような出会い方をしたのである。先ず、「出会いの切っ掛け」というか「最初の誘因」というか、それは「花の色彩」である。
この花弁の色具合からゴマノハグサ科コシオガマ属の多年草「コシオガマ(小塩竈)」だろうと、一瞬思った。色と花の形からすると、「コシオガマ」でも別にいいのである。
だが、次に「葉の形」を見て、「コシオガマ」ではないと判断した。それでも、納得がいかないので、生えている場所を再確認する。「日当たりのいい林縁」に生えている。
丈は30cmほどだ。やはり、葉に注目する。葉は全体に白い腺毛が密生していない。葉身は三角状卵形でもないし、羽状に裂けてもいない。裂片はさらに裂けているはずだが、それもなく長い卵形で先が尖っている。やはりこれは、「コシオガマ」ではない。
触ってみる。べたつくこともない。花を少し丁寧に見る。葉の脇に付いているか。色は紅い。大きさは2cmほどで唇形花だ。花冠は筒形、上下の2唇に分かれている。花の内部は白っぽい。これらは「コシオガマ」なみだが、「紅紫色」という点では、色が微妙に違う。その上、花を1個ずつつけていない。花は茎頂に2個である。やはりこれは、「コシオガマ」ではない。
だが、これは間違いなく「ゴマノハグサ科」の花である。開花の時季と生えている場所から、あれこれと類推して、次に行き着いたのはゴマノハグサ科ママコナ属の「ママコナ(飯子菜)」であろうということにした。
しかし、まだ納得はいかない。「ママコナ」にしては咲いている時季が遅い。だが、半月くらい遅くなることはあるので、これは許容範囲だろう。
「ママコナ」は山地の林縁などに生える半寄生の1年草で、高さが30㎝ほどになる。葉は対生し、長卵形で先が尖る。
枝先に総状花序を出して多数の花をつけて、葉状の苞は刺状の鋸歯があるのが特徴だ。待てよ。花は少ないし、苞には鋸歯がないではないか。
花の大きさは15㎜前後の唇形ではある。これは合致している。だが、下唇に白い斑点が見えるか。よく見えない。しかも、全体が鮮やかな紅色に色づいている。白さの残る部分は「筒」の基部だけである。これも、おかしい。
私の「納得」は次第にぐらついてきた。「ミヤマママコナ」という言葉が頭を過ぎる。だが、私は直ぐにそれを打ち消した。大体、色が違いすぎる。「」ならば、色は薄い紫と筒の部分には白さが混じる。非常に清楚な薄紫と白の清楚なツートーンカラーということになるのだ。しかも、「ミヤマママコナ」ならば、下唇弁の斑点が黄色を帯びていているはずなのである。それも見えない。
だが、「ママコナ」と「ミヤマママコナ」との違いを決定づける「苞」に鋸歯はないのである。
私は同じ道を逡巡していた。となれば、これは「ミヤマママコナ(深山飯子菜)」ではないだろうかということであった。
これは、深山の林縁や草地に生え、高さが20~50㎝ほどになる半寄生の1年草だ。葉は狭卵形から長楕円状披針形と、幅のあるものの一応合っている。だが、花冠の下唇の斑点が黄色であることまでは見えない。
だが、長さ5mm程度の葉柄が見える。見方によっては「上部の葉腋ごとに1花をつけている」ようにも、また「先端に長さ4cmほどの花序を造って花をつけている」ようにも見えるのだ。
ただ、これは9月の中旬に確認したものだから「花盛り」の時季はとうに過ぎている。岩木山では8月の中旬から「ミヤマママコナ」は咲き始める。だから、その色彩は、葉を含めて「変化」はしているのだろう。花冠は紅紫色であるが、花喉の両側に黄色の斑があることは認められない。そして、決定的なことは「苞はふちに鋸歯がない」ということであった。
これは、ゴマノハグサ科ママコナ属の「ミヤマママコナ(深山飯子菜)」であろう。
時間が許すならば「植物の観察」は「芽出し」の時から、枯れてしまうまでを連続的にすることが望ましいのである。
名前の由来は、「若い種子が飯粒に似ていること」とか、「花冠の喉元にある白い斑点を飯粒に見立てたこと」によるとされているが、定説はないようだ。
いずれにしても、「ママコナ」も「ミヤマママコナ」も、「半寄生」の一年草で、「イネ科やカヤツリグサ科の植物の根に寄生」する面白い繁殖の仕方をする植物である。
「半寄生」であるから、「自立」も出来るのだ。自らも「葉緑素を持ち光合成を行う」が、他の植物からも栄養を摂り、寄生「宿主」がない場合には草丈も小さくなるし、宿主がいる場合には大きくなる。
この違いが「大きさ」や「花の色の違い」、それに、「全体の風姿」に、微妙な「異相」をもたらしているのかも知れない。そう考えると、これらの花に出会って、一瞬「これは何だ」と訝しがることのあることは、別におかしいことではないように思えるのだ。
「寄生植物」には「ネナシカズラ」のように「全寄生」するものと、「ママコナ」のように「半寄生」する植物があるが、「半寄生」が80%を占めるそうである。
野山の道沿いで見られるのは、この「ママコナ」程度であるといわれている。「ママコナ」類は、その独特な風姿と形、色彩で人目を引く花である。
そして、同時に、私たちに理解があれば、「他の植物の根」に寄生するという「生き方」で興味を引く花でもあるのだ。
この写真の花にも、そのような出会い方をしたのである。先ず、「出会いの切っ掛け」というか「最初の誘因」というか、それは「花の色彩」である。
この花弁の色具合からゴマノハグサ科コシオガマ属の多年草「コシオガマ(小塩竈)」だろうと、一瞬思った。色と花の形からすると、「コシオガマ」でも別にいいのである。
だが、次に「葉の形」を見て、「コシオガマ」ではないと判断した。それでも、納得がいかないので、生えている場所を再確認する。「日当たりのいい林縁」に生えている。
丈は30cmほどだ。やはり、葉に注目する。葉は全体に白い腺毛が密生していない。葉身は三角状卵形でもないし、羽状に裂けてもいない。裂片はさらに裂けているはずだが、それもなく長い卵形で先が尖っている。やはりこれは、「コシオガマ」ではない。
触ってみる。べたつくこともない。花を少し丁寧に見る。葉の脇に付いているか。色は紅い。大きさは2cmほどで唇形花だ。花冠は筒形、上下の2唇に分かれている。花の内部は白っぽい。これらは「コシオガマ」なみだが、「紅紫色」という点では、色が微妙に違う。その上、花を1個ずつつけていない。花は茎頂に2個である。やはりこれは、「コシオガマ」ではない。
だが、これは間違いなく「ゴマノハグサ科」の花である。開花の時季と生えている場所から、あれこれと類推して、次に行き着いたのはゴマノハグサ科ママコナ属の「ママコナ(飯子菜)」であろうということにした。
しかし、まだ納得はいかない。「ママコナ」にしては咲いている時季が遅い。だが、半月くらい遅くなることはあるので、これは許容範囲だろう。
「ママコナ」は山地の林縁などに生える半寄生の1年草で、高さが30㎝ほどになる。葉は対生し、長卵形で先が尖る。
枝先に総状花序を出して多数の花をつけて、葉状の苞は刺状の鋸歯があるのが特徴だ。待てよ。花は少ないし、苞には鋸歯がないではないか。
花の大きさは15㎜前後の唇形ではある。これは合致している。だが、下唇に白い斑点が見えるか。よく見えない。しかも、全体が鮮やかな紅色に色づいている。白さの残る部分は「筒」の基部だけである。これも、おかしい。
私の「納得」は次第にぐらついてきた。「ミヤマママコナ」という言葉が頭を過ぎる。だが、私は直ぐにそれを打ち消した。大体、色が違いすぎる。「」ならば、色は薄い紫と筒の部分には白さが混じる。非常に清楚な薄紫と白の清楚なツートーンカラーということになるのだ。しかも、「ミヤマママコナ」ならば、下唇弁の斑点が黄色を帯びていているはずなのである。それも見えない。
だが、「ママコナ」と「ミヤマママコナ」との違いを決定づける「苞」に鋸歯はないのである。
私は同じ道を逡巡していた。となれば、これは「ミヤマママコナ(深山飯子菜)」ではないだろうかということであった。
これは、深山の林縁や草地に生え、高さが20~50㎝ほどになる半寄生の1年草だ。葉は狭卵形から長楕円状披針形と、幅のあるものの一応合っている。だが、花冠の下唇の斑点が黄色であることまでは見えない。
だが、長さ5mm程度の葉柄が見える。見方によっては「上部の葉腋ごとに1花をつけている」ようにも、また「先端に長さ4cmほどの花序を造って花をつけている」ようにも見えるのだ。
ただ、これは9月の中旬に確認したものだから「花盛り」の時季はとうに過ぎている。岩木山では8月の中旬から「ミヤマママコナ」は咲き始める。だから、その色彩は、葉を含めて「変化」はしているのだろう。花冠は紅紫色であるが、花喉の両側に黄色の斑があることは認められない。そして、決定的なことは「苞はふちに鋸歯がない」ということであった。
これは、ゴマノハグサ科ママコナ属の「ミヤマママコナ(深山飯子菜)」であろう。
時間が許すならば「植物の観察」は「芽出し」の時から、枯れてしまうまでを連続的にすることが望ましいのである。
名前の由来は、「若い種子が飯粒に似ていること」とか、「花冠の喉元にある白い斑点を飯粒に見立てたこと」によるとされているが、定説はないようだ。
いずれにしても、「ママコナ」も「ミヤマママコナ」も、「半寄生」の一年草で、「イネ科やカヤツリグサ科の植物の根に寄生」する面白い繁殖の仕方をする植物である。
「半寄生」であるから、「自立」も出来るのだ。自らも「葉緑素を持ち光合成を行う」が、他の植物からも栄養を摂り、寄生「宿主」がない場合には草丈も小さくなるし、宿主がいる場合には大きくなる。
この違いが「大きさ」や「花の色の違い」、それに、「全体の風姿」に、微妙な「異相」をもたらしているのかも知れない。そう考えると、これらの花に出会って、一瞬「これは何だ」と訝しがることのあることは、別におかしいことではないように思えるのだ。
「寄生植物」には「ネナシカズラ」のように「全寄生」するものと、「ママコナ」のように「半寄生」する植物があるが、「半寄生」が80%を占めるそうである。
野山の道沿いで見られるのは、この「ママコナ」程度であるといわれている。「ママコナ」類は、その独特な風姿と形、色彩で人目を引く花である。
そして、同時に、私たちに理解があれば、「他の植物の根」に寄生するという「生き方」で興味を引く花でもあるのだ。