岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

秋のヤブ山(6) / 自然観察会「この実の花は…どんな花」(4)

2008-10-24 05:24:26 | Weblog
(今日の写真はサトイモ科テンナンショウ属の多年草「コウライテンナンショウ(高麗天南星)」とその実だ。まるで、「赤い」トウモロコシである。)

    ● 秋のヤブ山はカラカラに乾いている ●

 一昨日、26日に開催されるNHK弘前文化センター講座「津軽富士・岩木山」野外観察会の下見に行ってきた。
 場所は岩木山の石切沢林道から百沢登山道にかけての範囲である。昨日午後からの少しの「降雨」で少しは湿り気を取り戻したかも知れないが、ここ2週間ほどの好天から「山はすっかり乾いて」いた。
 その日は、自転車で石切沢林道の入り口まで行った。高岡の近くのアスファルト舗装の農道を通って、宮様道路に入った。宮様道路もすっかり乾いていて、砂利に揉まれると自転車でも凄い土煙が立った。自動車と行き違う時には、目を開けていられないほどの「土煙」だ。
林道の入り口に着いて、私の自転車を見たら、黒いタイヤが真っ白になっていた。
 林道の赤土も「煉瓦」ほどではないが乾いて固かった。登山道近くの「ミズナラ林内」をかなり、歩いたが「キノコ」の類にはまったく出会わなかった。目立つのは濃い緑の「ジンヨウイチヤクソウ」の葉だけだった。
 宮地から新しく開通した「高岡」までの道を行った。その途中に、すばらしい岩木山の眺望スポットを発見した。26日にはここからの眺望で、「岩木山のブナ」についての学習をしようかとも思っている。
 向かって右側の弥生尾根や水無沢沿いの尾根の色具合と百沢スキー場尾根から左側の登山道尾根の色具合が違う。ブナの森とそうでない森の違いだ。ここからはそれがよく分かる。この違いはブナの芽出しの時季、早春の梢の赤い時季にとりわけ分かるだろう。

  ●● 自然観察会:「この実の花は…どんな花」(4)●●

 自然観察会で「今日の写真」の植物を参加者は全員が目にしているはずである。だが、誰からも、それを「話題」にすることはなかったのだ。何故だろう。たとえ全員がこの「植物」コウライテンナンショウについて知っていたとしても話題に上らないことはおかしい。
 そこで、今朝は「コウライテンナンショウ」について書くことにしよう。
これは山地のやや暗い林内や林縁などに生え、茎の高さは40~80cm。雌雄異株である。茎は緑で紫褐色のまだら模様がある。
 茎先に、筒状の仏炎苞(苞葉)をつけ、緑色に白色のすじがついた縞模様がある。筒の中には、面白いことに、こん棒状の付属体がある。葉は鳥足状の複葉で、小葉は長楕円形だ。花は葉より高い位置で咲く。
 果実は、今日の写真からも分かるように「赤く」熟し、全体が「トウモロコシ」状になる。
 和名の由来は、「高麗」の国のものであり、この根から漢方薬の「天南星」を採取したことによる。
 別名を「マムシグサ」ともいうが、これは茎にヘビのマムシの肌に似て紫がかった褐色のまだら模様が見られるからとする説とマムシが首をもたげ舌を出したような花のつけかたをするからとする説がある。
 このため一般にはマムシグサと呼ばれ、植物の分類上も「広義のマムシグサ」として扱われているという。その他に「ホソバテンナンショウ」とも呼ばれるらしい。
 5月の半ば頃から観察会などで「出会う」植物だが、これに出会った人たちの反応はほぼ共通している。それは「怪訝」であり、口にする言葉は「異様な姿」という意味合いを含んだものだ。
 このように「不思議さ」と「異様さ」を与える植物であり、花である。しかし、いや、それゆえにとでも言えばいいのだろうか…、「芽生えから果実が熟すまで」いろいろと姿を変えてくれるので、その変化を追うと楽しい花ということにもなるのである。
 春先に林内を歩くと、タケノコのように見える芽に出会う。蛇のウロコ模様の茎に見えるのは、本当は葉の莢(さや)が茎状になった偽茎であるそうだ。
 5月の中旬頃に、その偽茎から2枚の葉と花茎が出て展開する。そして、まさに首をもたげたマムシのような花をつける。花の本体は茎先についたこん棒状のもので、それを緑色で白い縞のある苞葉(仏炎苞)が取り囲むという具合だ。
 トウモロコシ状の果実もまた、不思議だ。最初は緑色だが、次第に熟すと丹塗りの朱色から、橙に変化して、秋遅くには「鮮やか」過ぎる「赤色」となる。
 枯れ葉の落ちた林縁や林内に立ちつくしているその姿はよく目立つだけではなく、やはり「異様」に映るのである。
 「異様さ」は、その「風姿」だけではない。植物という生命体としてもとてつもない「異様さ」を示すのである。
 それは、「テンナンショウ属の植物」は個体の大きさに伴って、可逆的な性転換を行なうことである。
 全草的に小さい時には「雄」として、そして、全草的なサイズが大きくなると「雌」となるのである。「雌」は果実を作るために、多量の栄養が必要なので、栄養が得やすい、つまり栄養がよくて全草的に大きい場合には「雌」として「活動する」のではないかと考えられている。
 「進化」ということを、また「種の保存」ということを考えた場合、これは「ほ乳類」よりも柔軟性のある「能力」のように思えるがどうだろう。「固定化」された物事には発展性はないのである。
 最後に、「マムシグサ」ゆえの「蛇足」として…、この植物の塊茎に鎮静作用や去痰作用があって薬草としても利用される。しかし、全草に蓚(シュウ)酸などの有毒成分が含まれている。だから、あまり「丁寧」な触り方はしない方がいいだろう。
 注:蓚酸 テンナンショウやカタバミ、スカンポなどの植物中に酸性カリウム塩・カルシウム塩などとして存在する。水やアルコールで溶ける。染色・鞣革(なめしがわ)・漂白などに使用する。(明日に続く。)