たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『エリザベート』_三度目の観劇でした

2016年07月20日 22時14分54秒 | ミュージカル・舞台・映画
2016年7月20日(水)昼の部、13時30分開演

エリザベート:花總まり
トート:井上芳雄
フランツ:田代万代生
ルドルフ:古川雄大
ゾフィー:香寿たつき
ルキーニ:成河
少年ルドルフ:池田優斗


 今日もカメラが入っていました。なんでしょうね。気になります。

 平日の昼間だというのに今日も満員御礼。観るたびにすごいなあーと思うのですが、今日はさらにパワーアップの、空気が違う?のでほんとにすごいなあーと思いました。うまく言葉がみつかりません。たぶん緩急自在に舞台をあやつっている感のソンハさんがルキーニとしてはいったことで舞台全体の空気感がちがってきているんだと思います。花ちゃんも井上さんも田代さんも、みなさんいい意味ですごい影響をうけて触発されているような気がします。歌が前回観た時よりも技術的にさらにうまくなっているだけというよりは役柄に同化している感で天井知らず、どこまでいってしまうのでしょうかという感じです。香寿さんゾフィーは今年初めてでしたが、ほんとに怖い皇太后になっていました。歌がさらに上手くなっていてど迫力。旅立ちの前のふけぶりがお見事でした。フランツから「もうあなたの意見をうかがうことはない」って背中を向けられてから左目にすっごい涙をためて、帝国の未来を憂いながらの旅立ち。苦しんだ瞬間黄泉の国から迎えにきたトートダンサーの背中を左手でつかんでいました。すごい・・・。

 カーテンコールは笑顔にあふれていました。花ちゃんが間違えちゃったのかな? すっごい恥ずかしそうに照れているのを田代さんがなにかフォローするかのようにめっちゃ笑顔、隣で田代さんになにか言葉をかけた?井上さんもめっちゃ笑顔。タータンとソンハさんはドレスの裾もちを意識するかのようになにか言葉をかけあっていた?これまためっちゃ笑顔。舞台とは真逆のほんわか、ゆるゆるムードでした。井上さんは今日も期待に応えて大きく手をまわしてからのお辞儀。三回目と四回目に花ちゃんと井上さんの二人で登場した時は、一人ずつお辞儀をしてから手をつないで、客席に背を向けてターンした後はまた手をつなぎなおして、とお互いに確認しあいながらのカーテンコールだったような。なんとも可愛く美しい絵面でした。

 「私だけに」を聴きながら涙。「私の命ゆねだる、それはわたしだけに♪」天を仰ぎながらシシィは何を思う。コルフ島の場面で、少女時代の「パパみたいになりたい」を思い出してまた涙。少女時代のシシィは、「親戚づきあいがペストみたいにだいきらいなんだ」っていうパパの言葉にうなづくときパパの腕をポンとたたきながらのニヒヒ笑顔。パパもシシィに触発されてさらにのっているようでした。実年齢の半分以下の役柄を全く違和感なく生きているのですから花ちゃん、ほんとにあっぱれ。バートイシュルで「鹿さん」って追いかけようとするのを邪魔したルキーニを「どいて!」って可愛く突き飛ばしていました。ルキーニは見事にしりもちついていて、あの場面、二人の演技は打ち合わせあるのでしょうか。どうなんでしょうかね。鹿を射止めたフランツにシシィが手を振った瞬間、フランツがシシィを好きにならずにはいられなかったのは言うまでもありません。ここに説得力がないとそのあと観ているのが辛い舞台になるので大事なところです。お見合いの席では、紅茶を飲もうとして「あっちち」、マカロンをふたつもとってはやっぱり食べるのをやめて姉さんがおとしたリボンをそっと拾っては髪につけてあげていました。「あなたがそばにいれば」と「夜のボート」。なぜか毎回宝塚初演雪組の高嶺さんフランツとの場面を思い出します。どうしてこの二人は幸せになれなかったのだろう。毎回切なくなります。

 井上さんの黄泉の帝王ぶりもいちだんとパワーアップ。歌唱にも演技にも、全くブレがありません。手の動きが丁寧で美しいし、仕草の隅々までどこか人間っぽい美しさを魅せてくれています。「闇が広がる」では今日も古川さんルドルフの頭をどついて、一段と強く、迷える皇太子を革命へと誘い込んでいきました。

 「ママも ぼくを見捨てるんだね」。母にも見放されたとわかった瞬間、がくっと崩れ落ちて立ち去っていく母の後ろ姿を凝視するときの古川さんルドルフの眼光はするどかったように思います。自分(ルドルフ)のために父をとりなしてくれようとしない母への絶望のまなざしなのか、自分のことしか考えていない母への軽蔑のまなざしなのか・・・。誰からも見放されて知り行き場を失い、死に魅入られた瞬間人はこんな眼差しをしているものなのか・・・。世が世なら名君たり得た、世界を変える力さえ持っていたかもしれないルドルフ。あまりにも惜しいです。

 一幕最後の鏡の間のシシィのドレス姿。アクセサリーがいちだんとすっごくキラキラ輝いていました。なんでしょうね。前回観た時と同じ衣装のはずですが、ネックレスもドレスもいちだんとキラキラでした。この場面の井上さんトート、田代さんフランツ、花ちゃんシシィの揃いがすっごい好きです。声の重なり具合も絵面もわたしの中でどんぴしゃり。


 
 シャンテで早めのちょっと贅沢な夕食をいただいた後最寄り駅に帰り着いたらすっごい湿気にまた雨でびっくりしました。終演後劇場からシャンテへと向かう並木道を歩いていたときは夕暮れの気持ちのいい風が吹いていました。並木道を歩きながら思い出していました。2014年1月仕事初めの日、13年働いてきた会社から使い捨てにされようとしていることを知らされました。それから労働局いったりあたふたして、2014年2月有楽町の労働相談センターを訪れました。結果的になんの意味もありませんでしたが、その時は気がついたらすごいことになってしまったと思いました。それからさらにさらに、全く予想だにしなかったすごいところまで進むとは全く思いもよりませんでした。一人で一か月半近くあたふたし、その時点で相当なエネルギーを消耗していました。労働相談センターで提出書類を仕上げると、寒風吹きすさぶ中、有楽町、日比谷界隈を泣きながらふらふらと歩いていました。自分はどうしたいのかわからず、自分のしていることが本当に正解なのかわからず、カウンセラーの先生に大泣きしながら電話しました。それから二年半が過ぎました。正解だったのかどうか今もわかりませんが、人としての尊厳を踏みにじられずたずたにすり切れてしまったところからここまで回復してきました。そのわたしで今日は同じ道を歩きました。どれだけ人から尊厳を踏みにじられようとも、自分だけは自分を信じてあげないといけない、自分で自分を貶めるようなことだけはしてはだめなんだ。「わたしだけに」を聴きながら、最期の旅立ちの場面を観ながら、花ちゃんシシィがそんなふうに背中をおしてくれたように思います。自分で尊厳を傷つけるようなことをしてはいけませんね、ほんとに。

 23日の夜の部が見納め。休暇をとることになったので明日またキイキイなにかひとことは必ず言われるでしょうね。気にしない、気にしない。休むのはお互い様。現実に戻って社会復帰。

 思いつくままに書き連ねてしまいました。また書くかもしれませんが7月20日の観劇日記でした。

舞台写真は東宝の公式FBより転用しています。

トップは花ちゃんシシィ

井上さんトート


ソンハさんルキーニ

 
7月20日昼の部キャスト


今日も満員御礼