熟メン茶々丸の「毎日が美びっとカルチャー」

甲斐庄楠音の全貌 京都国立近代美術館


本日の美術展レビューは、異彩を放った芸術家にスポットを当てた展覧会第2弾として京都国立近代美術館で開催中の「甲斐荘楠音(かいのしょうただおと)の全貌」です。
 
甲斐荘楠音は、大正から昭和にかけて京都画壇で活躍した日本画家で、後に映画界に転身し京都太秦で舞台芸術家や時代考証などで映画界に寄与したい異色の芸術家です。僕が甲斐荘の存在知るのはかれこれ30年前にさかのぼります。
 
日本画の世界で美人画と言えば、舞妓や芸妓の美しい姿を思い浮かぶ方も多いと思いますが、彼が描く美人画は美醜を併せ持つ一種異様な出で立ちで妖艶さを漂わせる作品です。甲斐荘は裕福な家柄で育ち、幼少期から歌舞伎や芝居を好み自らも演者と舞台に立ったといいます。
彼の描く女性像は、女性が持つ色香が画面全体に漂い人間の本質を作品から伺い知ることができます。そんな独特な画風は当時所属していた国画創作協会の村上華岳にその実力を評価される反面、土田麦僊には、穢い絵と蔑まれ展示を拒否されるという事件に発展します。そのことが機縁になったかどうかは定かではないですが、当時の京都画壇にそぐわず画壇から去り映画界に転身します。
 
映画界に転身した甲斐荘は時代劇映画の風俗や時代考証、衣装デザインなどを手掛けることになるのですが、その業績は素晴らしくヴェネチアで銀獅子賞を受賞した溝口健二監督の雨月物語で風俗考証を担当し、後に同作でアカデミー賞の衣装デザイン賞にノミネートされています。このことでもわかるように京都太秦の映画撮影所での衣装、風俗考証においての功績は高く日本画家と映画人の二面性を持った芸術性の高さを感じます。今回の展覧会でも市川右太衛門主演の旗本退屈男シリーズで甲斐荘が考証した舞台衣装が大量に確認され、今回当時のポスターと共に展示されています。
 
展覧会をつぶさに鑑賞し甲斐荘楠音の人と也を知るにつけ、彼のような芸術家は今の時代には欠かせない人のように思います。息苦しい世の中に生まれ自らの意志で選択をし画壇に翻弄されながらも自らの芸術の世界を生き抜いた稀代の画家の全貌に目を向けてみてください。

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