65オヤジのスタイルブック

草間彌生の富士山

現在の芸術家の中で、その生き方を通して最もインパクトが強い人は草間彌生だと思います。

先日、正月のBSプレミアム・草間彌生わたしの富士山~浮世絵版画への挑戦~を観て更にその存在感が強くなりました。

内容は草間彌生が初めて富士山に挑み、その作品を浮世絵版画に再現するという内容ですが、その完成までの道程がとても興味深い番組でした。

草間彌生の作品は巨大なキャンバスに描かれる大作が多いのですが、今回作られたそのキャンバスを3枚連ねたもので、浮世絵版画ように描いた原画では物足りず、その作品をもとに制作があらたに依頼されます。

木版画工房としては世界一のアダチ版画研究所の職人が草間の作品に挑む姿がとても素晴らしく、木版画の和紙としたは最大のサイズの紙を用い、9版11色の作品として制作が始まります。8枚の版木の内、草間の特色である水玉が描かれた空を彫るのは、工房の若手彫り師。その水玉の数は14,865個で当然ながら縮小された作品の小さな水玉を草間の描く技法に習いながら進めていく、気の遠くなるような作業を行っていきます。そして彼が、その制作の中でたどり着いたのが、草間と同じ境地に達する自己消滅を体験します。

また、若手摺り師が挑んだのは、工房が未だ経験をしていない原画以外の色で摺るという富士山への挑戦。草間の意思に反する行為と反対する会長の安達氏と伝統文化の存続への思いから生まれた現社長の中山氏の意見の対立の中、新しい作品が草間に披露されます。

ラストでは自らの予想を上回る作品にOKが出て、作品は原画を含めた4部作として完成します。まさに、革新と伝統の重ね合いアートの化学反応が起こった瞬間でした。

現在の版画は機械化が進み、原画を忠実に再現する技術は進んでいます。そんな中で人の手を介することでしか完成しないものが木版画(浮世絵版画)の世界です。画家と浮世絵版画師。人間同士が対峙する世界だからこそ、新たな生命が生まれる存在なのだと今回の番組で確信しました。


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