クリスチャン・ベイル主演、史上最悪の副大統領の生涯を描いたドラマ「バイス」を観賞
先日紹介した映画「記者たち~衝撃と畏怖の真実~」のイラク戦争の泥沼化の張本人、ディック・チェイニー副大統領を描いたのが本作で、チェイニー副大統領が如何にしてブッシュ政権下で主導権を握っていったかが詳細に描かれています。監督は、マネーショート華麗なる逆転のアダム・マッケイ、製作陣にブラッド・ピットが参加してます。
本年度のアカデミー賞でメイクアップ&へアースタイリング賞を受賞していますが、チェイニー副大統領を演じたクリスチャン・ベールの変貌ぶりがとにかくすごいです。この人役作りには徹底しているだけあって、若き時代のディックから副大統領時代まで20キロの増量で、ダンディーな俳優の姿が微塵もありません。ブッシュ役のサム・ロックウエルもなかなかのもので、夫チェイニーを副大統領にまで仕立て上げた妻には、エイミー・アダムスが演じていてキャスティングも個性的です。
さて物語は、酒癖が悪く大学中退のチェイニーが優秀な妻リンの叱咤激励で奮起。もう一人の張本人ラムズフェルドの出会いで政治家の道に進み、パパ・ブッシュの御威光で大統領となった息子ブッシュの指名で副大統領となり、フィクサーとして陰で権力を握り、その後病に倒れ息を引き取るまでを、克明に描いています。
こう書くと、どこか暗く重い空気が漂いますが、妻と二人三脚で築き上げていく人生がユーモアを交えながら人間味が豊かに描き時間を超える長さも忘れるほど面白い内容でした。
日本では、軽はずみな発言で火の粉をかぶる馬鹿な政治家が多発していますが、チェイニー副大統領の自らの能力を過信せず、周りを巧みに使う人心掌握術は悪人ながら見事でチャーミングでもあります。
イラク戦争、泥沼化の張本人ディック・チェイニー。果たして彼だけが責任があるのか?今回の作品を観て、三者三様の意見が生まれるのではと思います。一方でチェイニーという人物に不思議な魅力を持つのは僕だけではないと思います。