人生論:「生涯発展途上」を目指して

消化器内科医になった起業家・弁護士・会計士、岡本武士による人生論や新たな視点の提供、身の回りの出来事に対するコメント等。

インターニスト

2009-07-09 20:23:39 | 医学
インターニストとは内科のスペシャリスト、日本でいう総合内科医のようなものです。ニューヨークで総合内科一筋で40年間の過ごしてきた先生の知識や思考、そして若手医師や患者との接し方を目の当たりにする貴重な機会を得ました。

医学は奥が深いとはいえ、40年もやっていたら知識が豊富なのは当たり前かもしれません。しかしこの先生の知識は医学に留まらず、どの患者とも一瞬のうちに打ち解けていました。指導するときも相手のレベルを把握し、そのレベルプラスαの質問を常に用意していました。そして何よりユーモアに溢れていて、彼の周りには笑いが絶えない。

何より関心したのは、pearls of wisdom(真珠のように小さく貴重な知識)を会話に混ぜる能力でした。「そうか!」「そうだったのか!」といったアハ体験を継続的に与えられる人など世界で何人いるかわかりません。これは私が目指している形の一つでもあります(6年前にこのブログを開設した理由でもあります)。存在だけで安心させれるのが一流の医師なら、周囲の人の生き方を一瞬で変えうる一言を言えるのは名医と呼ぶに相応しいと思います。

そしてこれは、患者に一番近いといわれるインターニストならではの特技なのかもしれません。誰よりも患者のことを理解し、誰にも相談できない相談事を毎日聞いてきたからこそできることなのでしょう。コンサルタントや弁護士はよく、状況を「総合的に勘案」して(based on the "totality of the circumstances")判断に至ったという表現を使いますが、このような表現は熟練した総合内科医にこそふさわしいのではないかと感じました。

この先生の指導の下に問診を行う場合、一般的な問診リストに従っただけでは相手にもしてくれません。「去年まで犬を飼っていた」と聞き出せただけでもよくやったと思えそうですが、「名前は?」「いつから?」「オス?メス?」「何匹?」「去年までとはどういうこと?死んだのか?そのときどう感じた?」「かまれたことはある?」「犬のトイレはどこ?」「ノミの問題は?」「何を食べさせてた?」「留守のときは誰が面倒みていた?」「もう一度犬を飼いたいと思う?」「写真持ってる?」と質問の嵐となります。特に医大生は時間があるので、どこまでも突っ込んで話を聞くべきとのことでした。

それは、どんな相手に対しても興味を持っているからできることでもあると思います。「誰からでも学ぶことはある」といわれても、「例外はあるだろう・・・」と思ってしまいがちですが、本当に「誰からでも学ぶことはある」のでしょう。それを見つけられないのは自分が未熟だから。そう思うと、次の問診にまた全身全霊で挑みたいという気持ちがわいてきます。

どちらかというと外科系に興味が向いている今日この頃ですが、このようなインターニストに出会えたことでもう少し考えてみようと思いました。

1 コメント

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Unknown (ABC)
2009-09-05 22:55:10
自分に子供が生まれたら医者にしたいと思います。
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