妄想による愉快な国際時事ネタ解釈
四生の盲者日記
単車仮面2 最終話「単車仮面最後の戦い」
1948年12月22日ここネバダ砂漠のアメリカ陸軍秘密基地作戦室では、男二人のちょっとしたパーティーが開かれていた。銀髪の老人が、眼鏡を掛けた初老の東洋系の男にシャンパンを進めた。
初老の東洋系の男は、グラスを掲げていった。
「第一次計画の成功に、乾杯!」
「乾杯!」
銀髪の老人が、時計を見ていった。
「ヒデ、そろそろ君が吊るされる時間ダ」
「もうそんな時間かい、コーディ。では、元大日本帝国首相、陸軍大臣、参謀本部総長、陸軍大将にしてA級戦犯東条英機氏の冥福を祈って」
二人がグラスを小さくあげたその時。
「ストップ!オゥ!ノゥ!ファック!」
はるかかなたから、騒ぎが聞こえてきた。それはだんだん会場に近づいてくる。
初老の東洋系の男は、ため息をついた。
「はるばるアメリカまで、ご苦労な事だ」
銀髪の老人は軽く肩をすくめて、それに応えた。
ブオォォォォォーン
二人のやり取りが終わるのを待っていたかのように、単車が会場のドアをぶち破って乱入して来た。シートには、当然安藤元帝国陸軍大尉が跨っている。なぜか、G-1ジャケットを着、単車は陸王ではなくオリジナルのハーレーであった。
安藤元大尉は、ハーレーを降りると二人を指差し叫んだ。
「敗戦にあえぐ国民を欺き己一人アメリカに逃亡した貴様の卑劣な行動、全日本国民が許してもこの俺が許さん。東条英機元大将、いや、悪の秘密結社サンボのトジョー。そして、貴様の戦争責任、極東軍事裁判所が見逃してもこの俺が許さん。コーデル ハル元国務長官、いや、悪の秘密結社サンボのハール!」
突然、老人と初老の男、いや東条英機とコーデル ハルは多重人格者のようにテンションを上げた。
「はるばるアメリカまでご苦労なことだ、飛んで火にいる夏の虫とは貴様のことよ」
「Ha! Ha! Ha! ”Summer stupid bags fly into fire for kill them self.(夏の間抜けな虫は、自殺するために自ら炎に飛び込む)” Haaaaa! Ha! Ha!」
なにが可笑しいのか、笑い転げながらコーデル ハルが言った。
「オゥ、ヒデ、ワタシそれ知ってマース。エドゥ時代のトラベラー詩人がトマホーク…トーホクのマウンテンテンプルで詠んだ短い詩デース。Ha! Ha! Ha!」
「…もしかして、松尾芭蕉の事かい?コーディ」
「ソウデース、そのトラベラー詩人は、フロッグを応援したりとスパロゥと遊んだりする変な奴ディース。Ha! Ha! Ha!」
「…コーディ、松尾芭蕉が山寺で詠んだのは、蝉の鳴声で辺りの静寂さを強調した詩で。やせ蛙を応援したり、孤児の雀への優しい心を表現したのは小林一茶だよ」
「オゥ、「イイサ」 ミーン 「O.K.」 コバヤーシ、Haaaaa! Ha! Ha! Ha! Ha! Ha!」
どうやら小林一茶の「いっさ」を「いいさ」に掛けて、英語では「O.K.」だと言いたいらしい。
安藤元大尉が、押し殺した声で、しかし明らかに殺気を込めていった。
「トジョー、なんだこいつは」
「し、知らんのか。これがアメリカの小粋なパーティージョークだ!」
「Haaaaa! Ha! O.K. コバヤーシ、Haaaaa! Ha! Ha! Ha! Ha! Ha!」
「コーディ、コオオオオデイ!」
「オゥ、ソーリィ。でもワタシには区別ツキマセーン。死ぬ前にいい事を教えて上げマース。ジャップの慣用語デハ、「女中さんのお土産(メイドのミヤゲ)」でーす。
ヒデ、「メイドのミヤゲ」ってあれだろ。旦那の手がついたメイドにギフトを渡して殺すやつだろ。ジャップもやるディスか」
「お前の国じゃそんなことしてんのか」
「当然ディース。ワタシもここに来る前3人目ニ、御土産を渡してきたディース。
そうそう、いいことディス。モスコーは極東から手を付けることにしました。ピョンヤンはやる気モリモリマンマンディース」
「コーディ、いい年してお前…」
「おのれ、再び半島を戦火にまみれさせようというのか。そんな事はさせん!」
次の瞬間、床の上には、長靴に手袋をはめ、黒緑の仮面、黒緑の上下、全身黒緑ずくめの人影が立っていた。それは舶来品の防毒面を付けた人のようであり、赤く鈍く輝く目は昆虫の複眼のようでもあった。その異形はまぎれもなく凶凶しさを、全身から発散していた。
が、東条とハルは余裕たっぷりだった。
「飛んで火にいる夏の虫といっただろう」
「貴方も、ルーズベルト同様葬ってあげマース」
「やはり、前大統領は貴様等に謀殺されたのか」
「Oops!知られチャ仕方ネェ。そうよ、我々の忠告を無視し、ソ連の懐柔路線を取ろうとしたのさあの男ハ。殺されてどうだったかハ、地獄で聞きなサーイ!Ha!」
ハルのセリフと共に、作戦室に怪人が乱入して来た。
「Kee Kee!」
怪人全員が黒覆面、黒い全身タイツを着用。憲兵怪人、参謀怪人に似ているが黒襟も参謀肩章もない、代わりに顔面に白く「MP」と書いてある、さしずめMP怪人であろう。装備もトンプソンになっている。
「Hey!、彼らは水草の実を食って育った今までの連中でハありまセーン。彼らはテキサスビーフを食ってマース、栄養が違いマース、栄養が」
「コーディ、水草の実ってもしかして…」
「コメとかいう、ネズミの餌のことディース」
二人がアメリカ漫才をしている間に、MP怪人は全て倒されていた。
「ノォッ!ザッツインクレディボー!ビーフが…、テキサスビーフがネズミの餌に負けるなんてあってハならないことディース!」
そう叫ぶと、ハルはネイティブアメリカン戦いの化粧を施し、頭部はバッファロー、背中にトマホークというよくわからんものに変化していた。
「お前の正体は…、バッファロー男…でいいのか?なんだそれ?」
「じぇろにもっ!」
謎の掛け声と共に、単車仮面に襲い掛かるハル改めハール改めバッファロー(?)男。辛うじてかわす単車仮面。
「なばほっ!まにとぅ!嘘つかないっ!」
次々に炸裂する、バッファロー(?)男の連続攻撃。受け一方の単車仮面。バッファロー(?)男は背中のトマホークをひっつかみ叫んだ。
「これでフィニッシュでィース、!とまっほぅぅぅく、ぶぅぅぅめらんん…」
「単車キィィィック!」
バッファロー(?)男の長ったらしい決め台詞の隙を突き、単車仮面が飛び蹴りを放った。
「はう」
最後の言葉を残し、バッファロー(?)男は爆発した。
「次は貴様だ、トジョー!む、どこに逃げた!出てこい」
東条の姿はなかった。探し回る単車仮面の声に、スピーカーから東条の声が響いた。
「ご苦労だったな飛蝗男、私はピョンヤンで仕事があるのでね、失礼するよ。なお、その基地は自動的に消滅する」
ネバダ砂漠のアメリカ陸軍秘密基地は、大爆発をおこし消滅した。
ブオォォォォォーン
ネバダ砂漠をハーレーがゆく、あちこちが焼けこげ煙をふいている。
「さすがに本場物は頑丈だ、いくぞタイフーン!」
安藤元大尉は、ピョンヤンに向けてアクセルを開けた。
あとがき
第六話のマ元帥もそうだったが、アメリカ人を出すと筆者はおちゃらけてしまい駄目である。いずれにせよ、あの戦争は特定の個人、組織に責任を問えるようなものではない。まったくナンセンスな史実であり、下手な小説よりよほどよく出来ている。筆者程度の筆力ではどうにもならないので、「単車仮面」はこれで筆をおく。
というか、このおちゃらけた駄文で、さまざまな人々に「悪の秘密結社」の怪人になってもらったが、ちょこちょこその人々を調べながら、もし当時その人々にあって話したらそんなに悪い人じゃあないような気がしてならない。ごく普通の、仕事熱心な(なかには小心な)方々だったのだろうな、などと思えてしまいどうもこれ以上、いわば筆者の思い込みで、彼らなりに生きていたであろう人々を「変化」させるにしのびなくなってきた、というのが正直なところである。でも「試製陸戦強化衣『暁天』」の話は書いてみたい気もする。
関係ないが、東条英機は、蝿男になってもらおうと筆者は考えていた。
2002年8月16日、閣僚靖国参拝への中国政府のリアクションを見ながら
初老の東洋系の男は、グラスを掲げていった。
「第一次計画の成功に、乾杯!」
「乾杯!」
銀髪の老人が、時計を見ていった。
「ヒデ、そろそろ君が吊るされる時間ダ」
「もうそんな時間かい、コーディ。では、元大日本帝国首相、陸軍大臣、参謀本部総長、陸軍大将にしてA級戦犯東条英機氏の冥福を祈って」
二人がグラスを小さくあげたその時。
「ストップ!オゥ!ノゥ!ファック!」
はるかかなたから、騒ぎが聞こえてきた。それはだんだん会場に近づいてくる。
初老の東洋系の男は、ため息をついた。
「はるばるアメリカまで、ご苦労な事だ」
銀髪の老人は軽く肩をすくめて、それに応えた。
ブオォォォォォーン
二人のやり取りが終わるのを待っていたかのように、単車が会場のドアをぶち破って乱入して来た。シートには、当然安藤元帝国陸軍大尉が跨っている。なぜか、G-1ジャケットを着、単車は陸王ではなくオリジナルのハーレーであった。
安藤元大尉は、ハーレーを降りると二人を指差し叫んだ。
「敗戦にあえぐ国民を欺き己一人アメリカに逃亡した貴様の卑劣な行動、全日本国民が許してもこの俺が許さん。東条英機元大将、いや、悪の秘密結社サンボのトジョー。そして、貴様の戦争責任、極東軍事裁判所が見逃してもこの俺が許さん。コーデル ハル元国務長官、いや、悪の秘密結社サンボのハール!」
突然、老人と初老の男、いや東条英機とコーデル ハルは多重人格者のようにテンションを上げた。
「はるばるアメリカまでご苦労なことだ、飛んで火にいる夏の虫とは貴様のことよ」
「Ha! Ha! Ha! ”Summer stupid bags fly into fire for kill them self.(夏の間抜けな虫は、自殺するために自ら炎に飛び込む)” Haaaaa! Ha! Ha!」
なにが可笑しいのか、笑い転げながらコーデル ハルが言った。
「オゥ、ヒデ、ワタシそれ知ってマース。エドゥ時代のトラベラー詩人がトマホーク…トーホクのマウンテンテンプルで詠んだ短い詩デース。Ha! Ha! Ha!」
「…もしかして、松尾芭蕉の事かい?コーディ」
「ソウデース、そのトラベラー詩人は、フロッグを応援したりとスパロゥと遊んだりする変な奴ディース。Ha! Ha! Ha!」
「…コーディ、松尾芭蕉が山寺で詠んだのは、蝉の鳴声で辺りの静寂さを強調した詩で。やせ蛙を応援したり、孤児の雀への優しい心を表現したのは小林一茶だよ」
「オゥ、「イイサ」 ミーン 「O.K.」 コバヤーシ、Haaaaa! Ha! Ha! Ha! Ha! Ha!」
どうやら小林一茶の「いっさ」を「いいさ」に掛けて、英語では「O.K.」だと言いたいらしい。
安藤元大尉が、押し殺した声で、しかし明らかに殺気を込めていった。
「トジョー、なんだこいつは」
「し、知らんのか。これがアメリカの小粋なパーティージョークだ!」
「Haaaaa! Ha! O.K. コバヤーシ、Haaaaa! Ha! Ha! Ha! Ha! Ha!」
「コーディ、コオオオオデイ!」
「オゥ、ソーリィ。でもワタシには区別ツキマセーン。死ぬ前にいい事を教えて上げマース。ジャップの慣用語デハ、「女中さんのお土産(メイドのミヤゲ)」でーす。
ヒデ、「メイドのミヤゲ」ってあれだろ。旦那の手がついたメイドにギフトを渡して殺すやつだろ。ジャップもやるディスか」
「お前の国じゃそんなことしてんのか」
「当然ディース。ワタシもここに来る前3人目ニ、御土産を渡してきたディース。
そうそう、いいことディス。モスコーは極東から手を付けることにしました。ピョンヤンはやる気モリモリマンマンディース」
「コーディ、いい年してお前…」
「おのれ、再び半島を戦火にまみれさせようというのか。そんな事はさせん!」
次の瞬間、床の上には、長靴に手袋をはめ、黒緑の仮面、黒緑の上下、全身黒緑ずくめの人影が立っていた。それは舶来品の防毒面を付けた人のようであり、赤く鈍く輝く目は昆虫の複眼のようでもあった。その異形はまぎれもなく凶凶しさを、全身から発散していた。
が、東条とハルは余裕たっぷりだった。
「飛んで火にいる夏の虫といっただろう」
「貴方も、ルーズベルト同様葬ってあげマース」
「やはり、前大統領は貴様等に謀殺されたのか」
「Oops!知られチャ仕方ネェ。そうよ、我々の忠告を無視し、ソ連の懐柔路線を取ろうとしたのさあの男ハ。殺されてどうだったかハ、地獄で聞きなサーイ!Ha!」
ハルのセリフと共に、作戦室に怪人が乱入して来た。
「Kee Kee!」
怪人全員が黒覆面、黒い全身タイツを着用。憲兵怪人、参謀怪人に似ているが黒襟も参謀肩章もない、代わりに顔面に白く「MP」と書いてある、さしずめMP怪人であろう。装備もトンプソンになっている。
「Hey!、彼らは水草の実を食って育った今までの連中でハありまセーン。彼らはテキサスビーフを食ってマース、栄養が違いマース、栄養が」
「コーディ、水草の実ってもしかして…」
「コメとかいう、ネズミの餌のことディース」
二人がアメリカ漫才をしている間に、MP怪人は全て倒されていた。
「ノォッ!ザッツインクレディボー!ビーフが…、テキサスビーフがネズミの餌に負けるなんてあってハならないことディース!」
そう叫ぶと、ハルはネイティブアメリカン戦いの化粧を施し、頭部はバッファロー、背中にトマホークというよくわからんものに変化していた。
「お前の正体は…、バッファロー男…でいいのか?なんだそれ?」
「じぇろにもっ!」
謎の掛け声と共に、単車仮面に襲い掛かるハル改めハール改めバッファロー(?)男。辛うじてかわす単車仮面。
「なばほっ!まにとぅ!嘘つかないっ!」
次々に炸裂する、バッファロー(?)男の連続攻撃。受け一方の単車仮面。バッファロー(?)男は背中のトマホークをひっつかみ叫んだ。
「これでフィニッシュでィース、!とまっほぅぅぅく、ぶぅぅぅめらんん…」
「単車キィィィック!」
バッファロー(?)男の長ったらしい決め台詞の隙を突き、単車仮面が飛び蹴りを放った。
「はう」
最後の言葉を残し、バッファロー(?)男は爆発した。
「次は貴様だ、トジョー!む、どこに逃げた!出てこい」
東条の姿はなかった。探し回る単車仮面の声に、スピーカーから東条の声が響いた。
「ご苦労だったな飛蝗男、私はピョンヤンで仕事があるのでね、失礼するよ。なお、その基地は自動的に消滅する」
ネバダ砂漠のアメリカ陸軍秘密基地は、大爆発をおこし消滅した。
ブオォォォォォーン
ネバダ砂漠をハーレーがゆく、あちこちが焼けこげ煙をふいている。
「さすがに本場物は頑丈だ、いくぞタイフーン!」
安藤元大尉は、ピョンヤンに向けてアクセルを開けた。
あとがき
第六話のマ元帥もそうだったが、アメリカ人を出すと筆者はおちゃらけてしまい駄目である。いずれにせよ、あの戦争は特定の個人、組織に責任を問えるようなものではない。まったくナンセンスな史実であり、下手な小説よりよほどよく出来ている。筆者程度の筆力ではどうにもならないので、「単車仮面」はこれで筆をおく。
というか、このおちゃらけた駄文で、さまざまな人々に「悪の秘密結社」の怪人になってもらったが、ちょこちょこその人々を調べながら、もし当時その人々にあって話したらそんなに悪い人じゃあないような気がしてならない。ごく普通の、仕事熱心な(なかには小心な)方々だったのだろうな、などと思えてしまいどうもこれ以上、いわば筆者の思い込みで、彼らなりに生きていたであろう人々を「変化」させるにしのびなくなってきた、というのが正直なところである。でも「試製陸戦強化衣『暁天』」の話は書いてみたい気もする。
関係ないが、東条英機は、蝿男になってもらおうと筆者は考えていた。
2002年8月16日、閣僚靖国参拝への中国政府のリアクションを見ながら
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