妄想による愉快な国際時事ネタ解釈
四生の盲者日記
瀋陽の日本総領事館に身分不明者が強行進入した事件について -国際政治編-
<亡命>北朝鮮の住民5人 瀋陽市の日本総領事館に駆け込み図る
中国遼寧省瀋陽市の日本総領事館で8日午後2時ごろ、北朝鮮を脱出した住民5人が亡命を求め敷地内に駆け込もうとした。うち2人はビザ申請窓口の待合室まで入ったが、敷地内に侵入した中国の武装警察官に拘束された。大使館や総領事館など在外公館は治外法権が認められており、日中間の外交問題に発展した。(毎日新聞)[5月8日21時13分更新]
Y!ニュースで見る限り、日本の報道機関ではこれが一番早かったようです。ただ、世界的に見ると朝鮮日報のが早くて、事件のわずか1時間後には次のように報道してました。
朝鮮日報:http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2002/05/08/20020508000017.html(5月8日 16:10)
でまあ、この事件に対する日本政府第一のリアクションがこれ。
<総領事館内連行>「冷静に」首相 「中国の回答待ち」川口外相
小泉首相は8日夜、中国・瀋陽市の日本総領事館の敷地内から、中国の武装警察官が亡命希望の北朝鮮の2人を連行した事件について「中国がどういう立場でやったのか、よく調べて慎重に、冷静にやりなさいと言ってある」と記者団に述べた。また、川口外相は、「中国の回答を待っている段階だ」と述べた。(毎日新聞)[5月9日10時32分更新]
上のコメントではごく冷静ですが、日が変わって5月9日になると途端にトーンが高くなります。
<中国警官立ち入りは遺憾=安倍副長官-副大臣会議、批判相次ぐ>
安倍晋三官房副長官は9日午前の記者会見で、中国・瀋陽の日本総領事館に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の住民を追って、中国の警察官が構内に立ち入ったことについて「わたしどもとしては遺憾に思う。ウィーン条約で保障されている権利が各大使館、領事館にはある」と中国側に遺憾の意を示した。(時事通信)[5月9日11時4分更新]
<総領事館駆け込み>亡命希望の5人の身柄返還を中国大使に要求
中国・瀋陽の日本総領事館で中国の武装警察官が亡命希望の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)住民を連行した事件で、竹内行夫外務事務次官は9日午前、中国の武大偉・駐日大使を外務省に呼び、総領事館敷地内の無断立ち入りに抗議するとともに、亡命希望の5人の早期の身柄返還を求めた。(毎日新聞)[5月9日12時40分更新]
中国側に誠意ある対応求める=小泉首相-領事館駆け込み
小泉純一郎首相は9日昼、中国・瀋陽の日本総領事館に中国の警察官が立ち入り、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の住民を拘束した問題について「ウィーン条約違反だと思う。だから抗議している」と強い遺憾の意を表明した。「誠意ある中国側の対応を求めて行く」との考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
また、「今後さらにハイレベルで抗議することはあるか」との質問に、首相は「いや(中国側が)どういう対応されるかを見て、検討したい」と述べた。北朝鮮住民が駆け込むとの事前情報を政府として把握していたかどうかについては「わたしは聞いていません」と語った。(時事通信)[5月9日13時4分更新]
中国相手にこういう態度をとると、ごく簡単に以下のような反応を引き出す事が可能です。
<「武装警察官は副領事の同意を得て領事館に入った」 外交部>
外交部の孔泉報道官は10日、瀋陽の日本総領事館に身分不明者が強行進入した事件について談話を発表した。孔泉報道官の談話は次の通り。
(1)5月8日発生した瀋陽の日本総領事館に身分不明者が強行進入した事件で、中国側は全力をあげて事実関係の調査を行なった。調査の結果によると、5人の身分不明者は同日午後、領事館の正門から強引に進入を試みた。中国側の武装警察官は進入を阻止しようとしたが、うち2人が総領事館に進入。武装警察官は副領事の同意の下、領事館内に入って2人を連れ出した。その後、領事館職員の一人が中国側に事情の説明を求め、公安当局者が5人を連行することに同意したうえで、武装警察官に感謝の言葉を伝えた。
(2)ウィーン条約の規定によれば、中国側は領事館の安全を守るために必要な措置を講じる義務を負っている。(進入しようとした)5人は正当な手続きを踏まず、身分も明らかでないうえ、領事館に強引に進入しようとしており、領事館および職員らの安全を脅かす危険性があった。武装警察官の行為は純粋な責任感によるもので、同条約の関係規定にも合致している。中国側が勝手に領事館に入り込んだという言い方は成立しない。日本側は冷静になり、中国側の措置を善意的にとらえるべきで、事態を深刻にすべきでない。
(3)中国側は一貫して中日関係を重視しており、両国間の偶発的事件に対して冷静かつ慎重に対処している。1998年5月には、日本の数名の警察官が在日中国大使館の本館に勝手に入り込み、身分不明者を強制連行した。(同事件においても)中国側は上述の精神で対処している。「人民網日本語版」2002年5月11日
「あらあら、子供みたいな事いって、詭弁にもなっちゃいない、昔とちっとも変わってないのね。国際社会じゃあ通用しないって、いつになったら学習するのかしら。」なんて言うなあ。例えば
米報道官、中国の対応に遺憾の考え…瀋陽亡命事件
【ワシントン10日=永田和男】バウチャー米国務省報道官は10日、瀋陽亡命事件に関連して、「米国はウィーン条約の義務を非常に真剣に受け止めており、他国にも同じことを期待する」と述べ、中国側の対応を遺憾とする考えを示した。
また、「(亡命希望者は)北朝鮮で迫害を受けるために送り返されるべきではない」として、送還には反対する立場を表明した。
武装警察官の総領事館侵入をめぐる日中間の対立については、「中国と日本の間の問題だ」と述べた。(読売新聞)[5月11日21時57分更新]
中国の談話のポイントは、(3)の「中国側は一貫して中日関係を重視しており、両国間の偶発的事件に対して冷静かつ慎重に対処している。」であって、この一文に「いやもう、うちも若いのが先走ってしもうて正直困ってまんねや。」という外交部のぼやきを汲み取らなければならない。「そっちも同じ事してはんねんで、そやけどうちら引いたったんで。」などと余計な事も言っているが。
そのあたりについては、次の記事が正鵠を突いていると筆者は考えます。
<中国、身柄処遇を慎重検討=日本の反発に戸惑い-引き渡し拒否、出国容認か>
【北京10日時事】瀋陽の日本総領事館を舞台にした亡命駆け込み事件をめぐり、中国政府が苦しい立場に置かれている。日本政府は10日、総領事館内から連行された朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)住民5人の身柄引き渡しに加え、陳謝と再発防止の要求を突き付けた。「国際法違反はない」との公式見解を打ち出した中国が直ちに受け入れる可能性はほとんどないが、予想外に激しい日本の反発に戸惑っているとみられ、中国政府は5人の処遇を慎重に検討している。
中国の国内メディアは事件を一切報じていない。9日の外務省定例会見でこの問題に質問が集中し、孔泉報道局長は「領事関係に関するウィーン条約にのっとった行動だ」と武装警察官の館内侵入を正当化した。しかし、会見の一問一答をそのまま掲載する同省ホームページでも、領事館事件に関するやりとりはすべて削除された。徹底した報道管制は、逆に中国当局の苦境を物語るものと言える。
外務省の劉古昌次官補は9日、阿南惟茂駐中国大使に対し、「5人の身元を確認中で、まだ国籍も分かっていない」と慎重な言い方をした。方針を決めるまでの一種の時間稼ぎのように見える。
5人の処遇については(1)日本側に引き渡す(2)北朝鮮に強制送還する(3)第3国へ出国させる-の3通りが想定されるが、原状回復には、警官侵入の違法性是認と当初の主張の撤回が必要であり、極めて受け入れ難い選択。といって、厳しい処罰が待ち受けている本国へ送還すれば、国際的批判を呼び、中国の対外イメージを著しく傷つけるのは確実だ。 (時事通信)[5月10日23時2分更新]
まあ、そこんところがよく分かってないガイムショーの御役人様は「いつそんな事いったんだよ、いつそんな事したんだよ、何年何月何日何時何分何秒。」と、こちらも子供のような事いってますが、あまりにも馬鹿馬鹿しいので引用しません。
経済大国と国連常任理事国の水掛合戦に、もはや幼女の泣顔は完全にどっかいっちゃってます。単なる、「亡命失敗」という一昔前によくあった事件でよくもまあここまで遊べるものだ、と感動すらしてしまいます。
70-80年前だったら「在外公館保護」の名目で一個師団…は多過ぎるから、一個連隊くらい派兵して、近場の海上に軽巡浮かべときゃ済んだのに、面倒になったものだ。でも金にならんから止めといたほうがいいな。
などと危ないことを書いていたら、次の記事が見つかって笑ってしまった。
<中国メディア、ネットで反撃=「日本は横暴」と非難論評-瀋陽総領事館事件>
【北京14日時事】中国・瀋陽の日本総領事館事件の発生以来、報道を抑制してきた中国メディアが、日本側の調査結果が発表された13日夜から「反撃」に出始めた。通信社の中国新聞社は、在日中国大使館が発表した総領事館員と武装警官のやりとりを実名入りでホームページに掲載。英字紙チャイナ・デーリー(電子版)は「外交問題に発展した真の原因は、日本の民族主義と右翼思想の急膨張にある」とする長文の論評を掲げた。
「日本が(事件に)事寄せて外交風波をつくりだした」と題する同紙の論評は、日本が「理非曲直を問わず、横暴に、むきになって」不合理な要求を突き付け、中国に屈服を迫っていると指摘。自民党要人や右翼メディアは事件に乗じて「極めて扇動的な反中国言論をまき散らしている」と非難した。 (時事通信)[5月14日7時2分更新]
はい、私は「民族主義者かつ右翼思想家」でありまして、当ブログは「極めて扇動的な反中国言論をまき散らす」右翼メディアでございます。ただ、どうせだったら、
「反動的自民党要人や帝国主義的右翼メディアは、事件に乗じて極めて扇動的かつ反革命的な反中国言論をまき散らしている」
とまで言って欲しかった。50~60代のおっさんが聞いたら涙するぞ、催涙ガスの臭い思い出して。あ、今の若い中国人のボキャブラリーにないか。
(このテーマ続く)