【検証!】:維新の行政改革を追い風にパソナが大阪・関西でビジネスを広げる構図 大阪府も大阪市も「パソナなしでは業務が回らない」現状
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【検証!】:維新の行政改革を追い風にパソナが大阪・関西でビジネスを広げる構図 大阪府も大阪市も「パソナなしでは業務が回らない」現状
多くのパビリオンに行列ができるなど注目を集める大阪・関西万博は、大阪の政治・行政の権力を独占する大阪維新の会にとっても最大の目玉イベントだ。しかし、既得権の破壊を掲げてきた改革政党の政策もまた在阪企業の新たな“利権”の種になっているのではないか──。
◆維新による行政改革を追い風に大阪・関西でビジネスを広げる
開幕中の万博で高い人気を集めているのが、企業パビリオンのパソナ館だ。アンモナイトのような独特の形状の建物内には、万博の目玉の一つ、iPS細胞から作製した直径約3センチの「ミニ心臓」が展示され、開幕直後から1時間半待ちの行列となった。
パソナは万博会場と対岸の淡路島を結ぶ高速船を毎日運航。万博閉幕後には、本社機能の一部を移転した淡路島にパビリオンを移設する計画だ。
万博に注力しているパソナは大阪行政の一端も担う(パソナ館。時事通信フォト)
維新が主導する万博にパソナが注力するのは、必然ともいえる。維新による行政改革を追い風に大阪・関西で大きくビジネスを広げた企業として知られているからだ。
「『身を切る改革』を掲げた維新は区役所の職員を減らし、窓口業務をどんどん民間に業務委託していきました。そこに食い込んだのがパソナです。見ただけではわからないけど、大阪市の区役所では、フロアの案内や住民票交付の受付などは職員ではなく、パソナなどの派遣社員がやっています」(大阪の地方議員)
パソナは大阪市から窓口業務のほか、生活保護受給者への就職支援事業なども受託。2023年度は窓口業務だけで9億円超の業務委託があり、多くが入札を経ない随意契約だった。
桃山学院大学の吉弘憲介教授が解説する。
「2011年度以降の大阪市の歳出の推移で、特徴的なのは人件費の大幅な減少です。維新の会による影響が出る前の2010年と影響後の2017年を比較すると、人材派遣業者への委託が急増し、特定随意契約の受託額のランキングでパソナは10位に入りました。公務員という安定した職が非正規労働者に取り替えられたといえるのではないでしょうか」
ただ、こうした委託業務がすべて功を奏しているわけではない。
例えば大阪府では、コロナ禍で時短に協力した飲食店などへの「時短協力金」の支給業務をパソナに委託、総額20億円超を払ったとされるが、他県と比べて支給が大幅に遅れて厳しい批判を浴びた。支給業務に携わるスタッフの大半が外部委託されたことにより、携わる府の職員が少なくなったことが原因とされた。
◆大阪府も市も「パソナなしでは業務が回らない」
それでもパソナへの委託は続く。大阪府と大阪市は2024年、国際的な金融都市を目指す「金融・資産運用特区」に国から指定された。国際金融都市構想をめぐっては、ネット証券大手・SBIホールディングスの北尾吉孝・社長が維新の吉村洋文・代表にトップセールスを仕掛けて進められた経緯がある。大阪進出を希望する海外の金融機関から人材採用などの相談を受ける「国際金融ワンストップサポートセンター大阪」が設立され、その運営業務もパソナが受注した。
「いまや大阪府も市も、維新による人員削減でパソナなしでは業務が回らないのが実情だ」(前出・大阪の地方議員)という。
そうして大阪行政を担うパソナだが、2022年8月に退任した竹中平蔵・前会長と維新の深い関係もある。
竹中氏は小泉内閣の経済財政相として規制緩和の旗を振り、維新の国政進出にあたっては「候補者選定委員長」に就任。直近でも日本維新の会のガバナンス委員会メンバーを務めるなど、党のブレーンとして知られる。
『誰が「橋下徹」をつくったか 大阪都構想とメディアの迷走』などの著書があるノンフィクション作家・松本創氏が語る。
「維新を創設し、大阪府知事・市長(2008~2015年)を務めた橋下徹氏は竹中氏の考えに共鳴し、行政改革に反映していった経緯があります」
竹中氏は維新のブレーンとして大阪府市の改革を後押しする一方、経営者としては大阪行政に関係した業務を拡大した構図に見える。そうした構造についてパソナは「大阪市の行う公募プロセスに適正に応募して受注しております」(広報部)と回答した。
もっとも、こうした維新の改革に商機を見出す企業とは別に、大阪をはじめ関西で大きな存在感を放つ企業群もある。関連記事《「パナソニックやサントリーもトップになれない」関西財界“名門企業”ランキング 関西電力「完全復活」の契機となった大阪維新の会との原発を巡るバトル》では、関西財界の名門企業をランキング形式で紹介、西の財界王者・関西電力が「完全復活」できた理由について詳報している。
■※週刊ポスト2025年5月2日号
元稿:㈱小学館 主要出版物 週刊ポスト マネーポストWEB 経済 【話題・日本維新の会の闇・大阪府・大阪市・関西万博、大阪IR問題】 2025年04月22日 07:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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