【社説①・04.02】:南海トラフ被害 京滋でも備えを確実に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.02】:南海トラフ被害 京滋でも備えを確実に
京都、滋賀は太平洋から遠いからと、人ごとのように考えてはなるまい。両府県とも未曽有の犠牲者が出る恐れを真剣に受け止め、対策を進める必要がある。
東海沖から九州沖に延びる南海トラフで巨大地震が発生した場合の新たな被害想定を、政府の作業部会が発表した。
マグニチュード(M)9級の地震が起きると、大津波などで、全国で最大29万8千人が死亡すると想定した。
前回2012年の被害想定で死者32万人超とした推計よりも約1割減った。だが10年間で8割減らすとした目標に遠く及ばない。
住宅の耐震化や堤防、津波避難施設などの整備が進んだ半面、地形データの見直しで浸水地域が3割拡大し、効果が減じた形だ。
京都府では「冬の夕方」の発生で最大約1600人が死亡すると試算された。前回から700人増えた。内訳は火災による死者が千人と前回の5倍に増え、最多を占める。建物の倒壊件数や、それによる死者が減ったのと対照的だ。
滋賀県は最大で死者約400人と前回より100人減少した。一方、建物の全壊・焼失は最大約1万6千棟と前回より増えた。
京都府は「より大きな被害が出る花折断層帯地震をベースに対策を考えており、大きな見直しはない」という。ただ、南海トラフは、戦後日本が未経験の「超広域的」な災害規模になる。外部からの応援が後回しになるなどの想定も含め、対応を点検したい。
全国的にも南海トラフへの備えは不十分な段階にある。減災の対策を加速せねばならない。
鍵を握るのは、犠牲者の7割を占めるとされる津波からの早期避難と、さらなる耐震化だ。
加えて、地震で助かった命が、避難生活に伴う体調悪化などで失われる事態をどう防ぐかが大きな課題となる。
今回の想定は、能登半島地震や熊本地震でも相次いだ「災害関連死」の発生を初めて試算し、全国で最大5万2千人に上るとした。
不衛生なトイレなど劣悪な避難所の環境改善はもとより、避難者の受け入れや応援職員の派遣などに関し、自治体間の援助協定や訓練をより広域的に行うことが重要だ。
経済被害は、交通寸断の影響も含め最大292兆円に上り、国家予算2年分を上回る。莫大(ばくだい)な復旧費用が必要になる。
政府には、自治体や住民に備えを促すだけでなく、自らも放漫財政を早急に改め、平時から財政余力を高める姿勢を求めたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月02日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。