【社説①・04.03】:ミャンマー地震 内戦止めて救援を急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.03】:ミャンマー地震 内戦止めて救援を急げ
圧政と内戦に苦しむ民衆には、あまりに過酷な天災である。
ミャンマー中部を震源とする大地震は、犠牲者が3千人を超える見通しの惨状となっている。
発生から6日たっても倒壊した建物の捜索や救助は遅々として進んでいない。被災者の避難所もなく、野宿を強いられているという。
民主派などとの戦闘で軍事政権の統治能力が弱体化し、被災地は厳しい人道危機にある。ただちに停戦して被害の全容把握を進め、人命を最優先した救援に国内外の総力を集めねばならない。
マグニチュード(M)7・7とM6の大地震が立て続けに襲った。震源に近い国内第2の都市マンダレー周辺をはじめ、多数のビルや家屋が倒壊した。礼拝所や学校、内戦避難民のシェルターも崩れ、大勢が下敷きとなっている。
深刻なのは現地の災害対応力の脆弱(ぜいじゃく)さだ。重機など機材不足や電力・通信環境の劣悪さから捜索・救助活動は困難を極めている。
2021年の軍事クーデター以降の混乱の影響は否めず、軍政の統治が及ばない地域の被害は把握しきれていない。死者1万~10万人に上るとの見方もある。
軍事政権は異例の国際援助要請に踏み切った。米欧の経済制裁の下、死者400人以上といわれる一昨年のサイクロン被害では他国の干渉を嫌ったが、それほど事態が危機的ということだろう。
軍政と戦い、地域によっては優勢な民主派組織や少数民族武装組織は、被災者救援のため一時停戦すると相次ぎ表明した。にもかかわらず国軍は空爆を続けているという。災害に乗じた巻き返しなど断じて許されない。
国外からはロシア、中国が矢継ぎ早に救助隊派遣や資金援助に動いている。両国とも軍政への武器供給は即刻やめるべきだ。
軍政統治外の被災地にも迅速な救援活動・物資が行き渡るよう、幅広い国際社会の支援が要る。
マンダレー周辺は物流拠点や穀倉地帯を抱え、経済的打撃も大きい。日本はじめ各国の息の長い支援が求められよう。
今回の大地震では、千キロ以上離れた隣国タイの首都バンコクで建設中の高層ビルが倒壊し、作業員ら数十人の捜索が続いている。軟弱な地盤が長周期の地震動を増幅させたのが原因とみられている。
軟弱地盤はタワーマンション建設が続く東京、大阪など日本各地にある。大地震で被害を生む懸念が拭えない。知見を集め、自分ごととして備えを強めたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月03日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。