《社説②・03.29》:トルコ政治混乱 一線越す強権化を危ぶ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・03.29》:トルコ政治混乱 一線越す強権化を危ぶ
トルコで最大都市イスタンブールの市長が逮捕され、政治の混乱が続いている。
国政最大野党共和人民党(CHP)の次期大統領選候補で2期目のイマモール氏だ。与党公正発展党(AKP)を率いるエルドアン大統領の最大の政敵とされる。
2028年大統領選の候補を選ぶ党内手続きの直前に汚職容疑で拘束、逮捕された。全面的に否認している。
野党は「政治的クーデター」だとして反発を強め、各地に大規模な抗議デモが拡大している。地域大国トルコの政情不安は国際情勢にも影響を与えかねない。
政敵を追い落とす思惑があるなら、エルドアン氏の強権的な政治手法は一線を越えている。民主主義を損ない、専制主義へ一段と傾斜する危うさがある。
CHPは国是である政教分離の世俗主義を掲げ、都市部で支持が厚い。野党や市民は司法当局が政権の影響下にあるとみて、不当逮捕だとしてデモを続ける。
エルドアン政権は20年以上の長期に及び、イスラム色の濃い政策を進めてきた。憲法改正を繰り返して自身に権限を集中させ、強権体制を確立した。
トルコを地域大国に押し上げた強い指導者像が評価される半面、野党やメディアを弾圧する独裁的な政治手法や物価高騰への不満は根強い。支持するか否かでトルコ社会は二分されてきた。
政権側は抗議デモの制圧を図り、1400人以上を拘束。エルドアン氏は「街頭テロ」と非難して態度を硬化させており、強権化が一段と進む恐れがある。通貨リラや株価も急落している。政治や経済の混迷は深刻だ。
トルコは欧州と中東を結ぶ要衝に位置する。戦火を交えるロシア、ウクライナ両国とは良好な関係を維持し、ロシアが封鎖した黒海からのウクライナ産穀物輸出の再開に向けて両国を仲介したことがある。この先の和平交渉への関与にも意欲を示しており、欧州側はウクライナ支援でトルコとの連携を模索している。
だが、足元が揺らぐ中でトルコが役割を果たすことは期待できるだろうか。
加盟を目指している欧州連合(EU)はかねて強権的な姿勢に懸念を示し、今回も「長い民主主義の伝統を守っているか疑問を生じさせる」との声明を出した。
エルドアン氏は、このままでは社会の分断を深めるばかりか、国際的な信用も失いかねないことを理解すべきだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月29日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます