goo blog サービス終了のお知らせ 

アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

赤い風車 ’52 イギリス

2006-08-24 | 伝記
アンリ・ドゥ・トュールーズ・ロートレック。
〈Henri de Toulouse-Lautrec〉
彼の絵を目にしたことはあるだろう。
絵葉書や挿絵、ポスター。
「あぁ、この絵ね」と、見れば大抵はうなづくはずだ。
『ムーラン・ルージュ』や『ディバン=ジャポネ』あたりが有名か。
’55の『フレンチ・カンカン』のフランス版ポスターは、彼の作品を相当意識して作られたものらしい。

画家にしては珍しく、裕福な出のおぼっちゃま。
いや、裕福ったって、ただの金持ちではない。
10世紀も続いた、フランス貴族の由緒ある名家の一人息子であった。
そのまま順風満帆な人生を歩むはずと誰もが思ったであろうが、10代で両足を骨折。
当時の医療ではほどこしようがなく、その後彼の足は萎縮してしまい、不具合な生活を余儀なくされてしまった。

本作品の中では、二人の女性との出逢いと別れ、そして失望が描かれている。
真の自分を愛してくれた彼女たちであったが、己の身体を忌まわしく思うあまり、どうしても相手に皮肉めいたことを言ってしまう。
素直になれない彼から、女たちは去ってしまうのである。

アルコール中毒により、37才で生涯を閉じたロートレック。
あれほど女性をのびのびと美しく描いた彼なのに、女性の気持ちまで洞察することはできなかったか・・・  

バック・ビート ’94 イギリス

2006-03-31 | 伝記
〈もう一人のビートルズ〉といわれる者たちがいる。
彼らのマネージャーであったブライアン・エプスタイン。
それから、彼らがブレイクする前に、ドラムをクビになってしまったピート・ベスト。
そして、この映画の主人公、ジョン・レノンの親友で、当時ベースを担当していたスチュこと、スチュアート・サトクリフ。(この頃はなんと5人で演っていたんですね)

本作品では、ジョンとスチュ、スチュと恋人のアストリッドとの深い友情と絆、そして愛を中心に描かれている。

スチュを夢中にさせ、ビートルズの4人にも多大な影響を与えた、ドイツ人写真家のアストリッド・キルヒャー。
彼女の意見を参考に役作りをしたというシェリル・リー。
大ヒットしたTVドラマ『ツイン・ピークス』で有名な彼女。
ドイツ訛りの英語がお上手でした。

ビートルズの4人(ドラムはほぼピート)に扮した役者たちも似た感があって、なかなかでした。
特にジョン役のイアン・ハート。
リバプール訛りも生々しく、ヘンにつっぱってるとこなんかもよく研究していたと思う。
英映画にはよく出演しているようだが、めっきり髪が薄くなってしまって、本作に出ていた頃が懐かしい(笑)

母国はもちろんのこと、世代を越え、世界中で今もなお、絶大な人気を誇る彼らだが、有名になる前の若き彼らの頑張りと、誰もが抱く友への、そして愛する者への心情に共鳴しつつ、こうした時を経たからこそ’62のデビューへと繋がったのかと思うと、また違った感動が得られるはずである。


宋家の三姉妹 ’97 香港・日本

2006-01-12 | 伝記
不思議と、三姉妹というのは仲のよいケースが多いように思う。
○○さん家の三姉妹もとても仲がいい(笑)
映画に出てくる三姉妹も、何だかんだ言いながらも、たいていが仲良しだ。
バランスがいいのだろうか。

本作品の三姉妹は、20世紀初頭、激動の中国で波乱に満ちた人生を送った人物たちである。

富を愛した長女のアイレイは、孔子の75代目の孫にあたる大財閥の御曹司と、祖国を愛した次女ケイレイは、革命家である孫文と、そして、権力を愛した三女ビレイは、軍事司令官、後の台湾総統となる蒋介石と結婚する。

幼い頃から仲のよかった姉妹たちが、それぞれの思想の違いから離れざるを得ない状況になりながらも、血の結束というのだろうか、三人の絆の強さに、また三人の劇的な生きざまに驚かされる。

次女のケイレイを演じたマギー・チャンがよかった。
この人は、〈内に秘めた強さを持った女性〉という役柄が、本当に上手い女優さんである。
そのうえ品のある演技で、今回も適役でありました。

ラストのテロップに映し出される、「革命は愛である。 愛もまた革命である」とは、何とも言い得て妙ではないか。  

シャイン ’95 オーストラリア

2006-01-05 | 伝記
実在のピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴッドをモデルとした本作品。
彼の父親との確執、ラフマニノフへのこだわり、そして伴侶の愛の支えに至るまで、スコット・ヒックス監督が、ヘルフゴッド夫妻の協力のもと、素晴らしい映画を作り上げた。

少年時代~青年期、ピアノと父親に対する重圧で、痛々しいほどの時代を過ぎ、やがて成人後の何ものにも縛られず、力まず、何より人々が明るく自分に接し、愛してくれていることに実感できた、彼の幸福に満ちた表情を見て素直に嬉しく思えてくる。

ハイライトは何といっても、青年時のデヴィッドがコンクールで『ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番』を弾くシーンだろう。
ほとばしる汗。
我を忘れるほど、一心不乱に鍵盤を叩くデヴィッド。
だが、あまりにも繊細な神経であった為、情熱的すぎるラフマニノフを弾きこなした直後、彼のその繊細な糸は切れてしまう・・・

しかし彼はラフマニノフを愛し、また弾き続けるのである。
ラフマニノフに苦しめられ、泣かされ続けたにも拘らず・・・

成人後のデヴィッドを演じたジェフリー・ラッシュ。
本作品で、アカデミー賞の主演男優賞を受賞している。
本当にスゴイ名演技でありました! 

コルチャック先生 ’90 ポーランド・ドイツ

2005-12-11 | 伝記
1942年、ナチス・ドイツ軍によるポーランド侵攻の下、ユダヤ人の強制収容所送りが始まる。
ポーランドに限らず、この時期、ヨーロッパ各地で同様の惨劇に遭った人々は、一体どのくらいに及んだのだろうか・・・

本作品の題名である『コルチャック先生』は、実在した医者であり、作家でもあった。
ポーランド国内では非常に尊敬された、逸材の人物である。
巨匠アンジェイ・ワイダ監督が、涙なくしては語れない実話をあえてモノクロにし、ヤヌシュ・コルチャックが子供たちを最後まで守ろうとした、その素晴らしい勇気と精神を見事に描ききった。

’93の『シンドラーのリスト』も同じモノクロで表現していたのが印象深い。
両作品の、実にリアルな映像が衝撃的でもあった。

ナチの魔の手が、コルチャックの孤児院まで忍び寄る。
だが、孤児たちの収容所送りは避けられない。
200人もの子供たちを助ける手立てはないのである。
院長である彼は、身体を患っており、また彼自身救いの道を差しのべられたにも拘らず、子供たちと共に、収容所行きの列車に乗る・・・

「みんなで遠足に行きますよ。 一番いい服を着て、好きなものを持って行きなさい」
女性教師からそう告げられた、何も知らない幼い子供たちの無邪気さを思うと、辛く、切なさがこみあげてくる。

コルチャック先生と天使のような子供たちが、まるでガス室の煙を思わせる霧の中へと消えていくラストが、目に焼きついて離れない。

アンジェラの灰 ’99 アメリカ・アイルランド

2005-10-11 | 伝記
1930年代、大恐慌の嵐にあったアイルランド。
日々の食糧を確保するのも大変な時代であった。

苦境の中で、ただ耐えるしかない厳しい現実に、気丈に振舞う母、アンジェラ。
だが、栄養不足で死んでいく子供たちの惨状には、さすがの彼女にも限界があった・・・

彼女を’96の『奇跡の海』で女優魂を見せつけた、エミリー・ワトソンが演じている。
カマトト顔にしては、たいそうな演技派である。

これがデビュー作という、フランク・マコートの半自伝小説(ピュリッツァー賞受賞!)を映画化した本作。
かなり原作本に忠実な仕上がりとなっていた。

実話なだけに、本当に苦しい時代を生き抜いてきた彼らには、頭の下がる思いである。
しかし、ここに出てくるマコートの父親というのが、全くの甲斐性なしであって、それだけ母であるアンジェラの戸惑い、そして苦悩する姿が、この映画に活かされているわけなのだが・・・

’05の『シンデレラマン』のような父親であったら、マコートは果たして自伝を書く気になったかどうか・・・
そこのところは、分からない。 

モンパルナスの灯 ’58 フランス・イタリア

2005-04-22 | 伝記
画家アメデオ・モジリアーニの伝記映画。
モジリアーニを、永遠の貴公子こと、ジェラール・フィリップが演じている。
彼同様、薄幸な役どころ。

モジリアーニに関して特に興味はないが、彼の半生は悲しすぎる。
昔の画家というものは、いや芸術家たちは、極貧の中でこれほどの才能を持ち合わせていながら、生存中に認めてもらえなかった例が多くある。
辛いことだ。

せめてもの、恋人役で出演していたアヌーク・エーメが華を出している。
エレガントな美しさがひと際目立つ。
’66『男と女』での彼女は、大人の女性を好演しているが、本作では若々しいお嬢様役がとても合っていた。

そういえば、モジリアーニもジェラール・フィリップも、ともに36歳で亡くなっているんだよね・・・
なんとも妙な偶然である。