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アブリコのCinema散策

のんびり映画でも観ませんか

イナフ 2002年 アメリカ

2006-09-12 | ミステリー&サスペンス
玉の輿にのったとしても、喜んではいられないと思わされてしまう話である。

妻のスリムは、金持ちの夫ミックと娘グレイシーとの3人家族。
幸せな生活もつかの間、夫には幾人もの女性がいたのであった。
その事実を知ってから今までの暮らしはガタガタと崩れ、同時に夫の恐ろしい人格をも目の当たりにしてしまう。

ジュリア・ロバーツが、夫の暴力に耐えかね逃げ出す若妻を演じた’90の『愛がこわれるとき』。
ドメスティック・ヴァイオレンスのはしりのような作品であったが、本作品での妻は一段と強さを増していた。
ジェニファー・ロペスの体当たり演技が見もの。

どこへ逃げても追い詰められる母と娘。
金持ちだと手回しも早いのだろう。
だが、スリムはへこたれない。
子を守る母は、一層たくましくなるのである。

世の妻たちが、密かに護身術やボクササイズに励もうと奮い立つ日もそう遠くないかもしれない(ホントか?) 

恋愛小説 ’93 ロシア・フランス

2006-08-21 | ミステリー&サスペンス
仲の良い夫と姑を冷めた目で見ながら、自分は疎外しされていると感じている妻。
やがて女は、ある男に惹かれ始める。

似たような話で思い出すのが、’52の『嘆きのテレーズ』。
シモーヌ・シニョレが演じた、薄幸な妻テレーズ。
皮肉さの残るラストが非常に印象的な作品であった。
だいたいにおいて、こうしたストーリーは先が見えている。
邪魔な者たちを消して、ふたりだけの生活をひたすら渇望する女。
現実を直視できず、内に秘めた狂気たるは凄まじいものだ。

先に述べたテレーズのように、この映画のラストもかなり衝撃的である。
ふうむ、女性ならこうするのであろうか。
男にとってはラッキーではないか。

彼女の打つタイプライターの音。
ガシャン、ガシャン、ガシャン・・・
決して早くはないその打ち方。
一語一語、確かめるように打ちつける重い響きが、作品に大きな効果を及ぼしている。
これが無音のワープロだったりしたら、それこそ白けてしまうだろう。

残された未完のジグソー・パズルが、一層観る者の複雑な心をかきたてる。 

 

ミザリー ’90 アメリカ

2006-06-07 | ミステリー&サスペンス
雪深い道中で事故ってしまった小説家のポールは、運良く、元看護師のアニーに助けられる。
彼女の家へ運ばれ、手厚い介護を受ける。

彼女は食事から身の回りの世話と、元看護師らしく、甲斐甲斐しく振舞う。
朝食なんて、胃がもたれそうな程のサービスぶり。
それには理由があった。
彼女は、ポールが執筆中の『ミザリー』の原稿を見つけ、目の前にいるこの男こそが、作者本人であることを確信したからだ。
何を隠そう、彼女は熱烈な『ミザリー』ファンであって・・・

冒頭の〈運良く〉が、後に〈運悪く〉ととらえたくなる中盤以降の恐ろしさと面白さに、釘付けになること受けあいである。
豹変したアニーの異常な行動と言動。
自分の思い通りの結末に書かせようとする、その執拗さと強引さ。

アニーを演じた、キャシー・ベイツの怪演さにはあっぱれだ。
本作品で、主演女優賞を取ったのもうなづける。
小説家に扮したジェームズ・カーンとの二人芝居のような、まるで舞台劇を観ているよう。(実際に、日本でも舞台化しましたね)
彼ら二人の演技力なくして、この作品は成り立たなかったといっても過言ではない。

静けさの中で起こる恐怖が一層インパクトを強め、ヘタなホラーものより、心理的にズシンとくる作品である。


ルームメイト ’92 アメリカ

2006-03-16 | ミステリー&サスペンス
近年、日本でも部屋をシェアしながら住む単身者は多い。
欧米では、同居人を募って住むケースは日常的だ。
家賃を少しでも安くあげるためなら、そういう方法もいいだろう。
だが一緒に住む以上、最低限、お互いの信用は必要である。

フリーのコンピューター・プログラマーのアリソン(アリー)は、新たなルームメイトを探していた。
募集をし、何人かと面談をする。
その中で、彼女はヒドラ(へディ)を選ぶ。
その時点で、へディの恐ろしい正体を誰が見抜けたというのか・・・

当初、へディをやや軽んじて見ていたアリーであったが、少しずつへディの変化に気づいていく。
彼女のクローゼットは自分と同じ服ばかり。
やがてアリーの前に、自分とそっくりな姿をしたへディが現れて・・・

観る者を震撼させたへディを演じた、ジェニファー・ジェイソン・リー。
TVドラマ『コンバット』で名高い、ビック・モローの娘である。
彼女は親の七光りではなく、自力で演技を開拓してきたエライ女優である。

一方、アリー役のブリジット・フォンダは、フォンダ家のお嬢様。
まだまだ叔母であるジェーンを超えることはできなそうだ。

第三の男 ’49 イギリス

2005-10-29 | ミステリー&サスペンス
40年代に、これほどの秀作を生み出してしまったのは、一種の罪ではないかと思ってしまう。
英映画界では尚更のこと、映画好きたちをも唸らせた、芸術性の極めて高いこうした作品を作り出すのは、容易なことではない。

’41の『市民ケーン』で天才振りを発揮した、オーソン・ウェルズ。
なぜか二枚目になりきれない、ジョゼフ・コットン。
キリリとしたまなざしの美しさと、強烈な存在感を残したアリダ・ヴァリ。
名優ぞろいに凝ったサスペンス。
そして、なんといっても絶妙なカメラワーク!
どこをとっても大当たりといった、素晴らしい映画である。

テーマ曲(BGMも兼ねている)のアントン・カラスが奏でる、チターの名曲も実に合っていて、一層、物語を引き立てている。

モノクロならではの良さも痛感する。
名場面のひとつとされるラストシーンも、モノクロだからいいんだろうな。
地下水道での追跡シーンも、カラーだったらイメージ的に、大きくマイナスとなっていただろう。
不思議とモノクロだと、光と影との調和が、ものすごくミステリアスに撮れていいんだよね。
視線とかも。

内なる魅力を浮き立たせる、カラー作品では絶対に出せない趣向である。 

死刑台のエレベーター ’57 フランス

2005-07-21 | ミステリー&サスペンス
オープニングから、マイルス・デイビスの、耳をつんざくようなトランペットが印象に残る。

ちょっと頼りなげな若い医師ジュリアンをモーリス・ロネ、魅惑的な社長夫人をジャンヌ・モローが演じている。
上記に関しては語らずとも、この二人の関係がわかるだろう。

余談だが、日本のおじさまたちのかつての憧れといえば、イングリッド・バーグマンか、このジャンヌ・モローかといわれていたくらいである。
確かにお美しいであります。

さて、サスペンス映画の中では必要な要素となる殺人計画。
むろん、この被害の対象となる人物は、彼女の夫である。
しかし、ジュリアンがあるミスを犯してしまうところから話がこじれ、どんどん状況が悪化していってしまう。

巧く切り抜けそうに見えるのだが、ある一枚の写真が動かぬ証拠となってしまい・・・
その写真のアップで幕は閉じられるのだが、そこにはうっとりするほど、幸せそうな二人が写っている。
そのはかなさが、この作品の要ともなっている。

これがルイ・マル監督の、初の長編作品らしい。
しかも当時25歳! 
脱帽です。 

眼には眼を ’57 フランス

2005-07-10 | ミステリー&サスペンス
手術を終えたフランス人医師パルテルは、助手に訊く。
「時間はどのくらいだったか」

『白い巨塔』の財前教授を彷彿とさせるセリフだが、自信があるからこそ出る言葉だろう。
しかし、この名医といわれている自分が、ある失態から悲劇への道をたどることになるとは、思いもしなかったに違いない。

勤務を終えたパルテル医師が、部屋でくつろいでいると、診てほしい患者が来ていると告げられる。
だが、彼は診ることをしなかった。
翌日、病院でその急患を診た医師から、患者は亡くなったと聞く。
やや動揺したものの、平静を装うパルテル。
それからというもの、ある男の存在が、彼を苦しめていく。

男は、亡くなった患者の夫であった。
彼の周到な罠にはまっていってしまうパルテル医師。
男に会うため彼は、街から砂漠の地へと車を走らせていく。
それも罠とは知らずに。
そして、そこから彼の本当の地獄が始まっていくのである・・・

じわじわと医師を追い詰めてゆく男の策略に、不気味さを覚えもするが、その執念も亡き妻を想ってのことである。

「わたしの妻は、あなたに殺された。
あなたも同じように苦しめばいい」

苦しみの果てに、彼はいったい何を思ったであろうか・・・ 

トーマス・クラウン・アフェアー ’99 アメリカ

2005-07-05 | ミステリー&サスペンス
本作品は、’68のスティーブ・マックイーンが主演した『華麗なる賭け』のリメイク版である。

今回はニヤケ顔のピアース・ブロスナンが、ルパン三世も驚くような盗人を演じている。
『007』で見せた肢体や、あざやかな腕前を惜しげもなく披露していた。

それよりもカッコイイのが、ヒロイン役のレネ・ルッソ。
役柄は地味目に、保険会社の調査員である。(彼女はちっとも地味ではないが。)
アップになると、やや老婆顔が入っているが、いやいやなんの、あんなシースルーのドレスを堂々と着こなせるんですから、あっぱれです!

いわゆる敵同士となる二人が恋におちてしまい、無駄な駆け引きをし合っていた。
あんなに強気だった彼女が、どんどん恋する乙女(!)に変わってしまうのだから、このニヤケ・・・いや、トーマス・クラウンさん、男冥利につきることでしょう。(笑)

さて、本作品の大事なところ。
盗んだ絵画をどうやって、美術館へ戻したのか!?
へぇー、そういう手がありましたか!

このニヤケ・・・いえ、ピアース・ブロスナンさん、最後までお相手をハラハラさせる心憎いやり方は、『007』だけで十分です。(笑) 

愛してる、愛してない・・・ 2002年 フランス

2005-05-18 | ミステリー&サスペンス
オドレイ・トトゥのストーカー的映画。
彼女もいつまでも、「アメリの・・・」と前置きされ続けるのも気の毒でならない。
どうしてもその印象が強過ぎるのか、思い込みの激しいキャラがくっついてしまっていて、役の幅がなかなか広がらないのも辛いところか。

この映画、あたかも二つのストーリーがあるように思えるが、実は同じ話を別の方向から見せる、ユニークな撮り方をしている。
前半は穏やかに、そして後半になると、彼女演じるアンジェリクの執拗な行動を目の当たりにされるのだが、これにはちょっと不意をつかれた。
そうだったのか!!と、前半の穏やかさに騙されていると、思わず膝を、ぺしっと叩いてしまうことになる。

公園でデッサンをするアンジェリク。
熱心に絵を描くアンジェリク。
彼女が画いているその先は・・・

ラストで彼女の創作を見せてくれるのだが、思わずゾッとした・・・
こ、怖かった!