◎更ニ正視ニ堪ヘザルハ立法府ノ腐敗堕落ナリ
昨日は、『司法研究 第十九輯』から、「大化会」の節を紹介した。この『司法研究 第十九輯』という本は、「司法研究第二部第九回会同」(一九三四年七月から三か月)における研究員による自由研究の結果をまとめた報告集の一〇冊目にあたり、本文八二六ページの大冊。
表紙には、「㊙/司法研究/第十九輯/報告書集 十/【禁転載】昭和十年三月/司法省調査課」という文字がある。
本扉には、「我国に於ける最近の国家主義乃至国家社会主義運動に就て/司法研究第二部第九回研究員/東京区裁判所検事 馬場義続」という文字がある。
執筆者の馬場義続(ばば・よしつぐ、一九〇二~一九七七)は、当時、東京区裁判所検事。戦後は「経済検事」として活躍した。一九六四年(昭和三九)に検事総長、一九六四年(昭和三九)に退官(ウィキペディア「馬場義続」の項による)。
本日は、同報告集から、第十章「群立団体」第一部第一項「愛国者関係団体」の「三 愛国法曹連盟」を紹介してみたい。かなり長いので、三回に分けて紹介する。
三 愛国法曹連盟
本連盟は夙に〈ツトニ〉国家主義思想を抱持し、既存右翼団体とも友誼関係を結び、右翼運動に関連する刑事々件には必ず之が弁護に立ちたる愛国社同人弁護士角岡知良〈スミオカ・トモヨシ〉、林逸郎〈ハヤシ・イツロウ〉等が中心となり、赤色弁護士団に対抗して右翼弁護士団の結成を計画し昭和七年〔一九三二〕五月十三日結成したるものにして、麹町区有楽町一ノ六大正ビル内に事務所を置き、機関紙は愛国社と同じく「愛国新聞」(月三回発行)である。連盟員約二十名にして主なる人物は次の如くである。
林逸郎、角岡知良、岡田金作、樫村廣史、伊藤清、木下好太郎、松村喜三郎、阿部直之、草野正慶、齋藤重治、福田秀一、有賀成可、児玉信夫、五十風治孝、榎本均爾。
本連盟の綱領並に趣意は左記の通りである。
綱 領
一、現行法律の日本主義的解釈適用を期す
一、現行法律の日本主義的克服融合を期す
一、現行法律の日本主義的修正完備を期す
趣 意 書
東洋ノ精神的冥想文明ハ沈衰シ西洋ノ物質的闘争文明ハ没落セントス、西洋ノ文明ヲ融合シ霊肉一致生気潑剌タル新文明ヲ創造シテ全人類ヲ光被スルハ我ガ日本民族ノ天啓的使命ニアラズヤ、然ルニ国民生活ノ規範タル現行法規ハ概ネ西欧法律ノ模倣継承ナルヲ以テ個人ノ権益ヲ擁護伸張スルニ急ニシテ日本民族固有ノ互譲相想和衷協同〈わちゅうきょうどう〉献身奉公ノ大精神ニ適合セザル遺憾ノ点尠ラズ〈すくなからず〉茲ニ於テカ権利ヲ濫用シテ私慾ヲ充タシ以テ資本主義的悪弊ヲ助長スルモノアリ、或ハ又祖国日本ノ光輝アル歴史ヲ藐視〈ビョウシ〉シテ共産社会建設ヲ夢想シ法律ヲ逆用シテ徒ニ〈いたずらに〉階級闘争ヲ激化セントスルモノアリ、斯ノ如クンバ法律ハ遂ニ共同生活ノ平和的秩序タル存在ノ意義ヲ喪失スルニ至ルベシ。
更ニ正視ニ堪ヘザルハ立法府ノ極端ナル腐敗堕落ナリ、党利アリテ国家アルヲ知ラザルハ政党者流ガ立法協賛ノ重職ヲ瀆ス〈けがす〉コト今日ノ如クンバ法律ノ修正完美ハ到底之ヲ期待スル能ハザルナリ、社会正義ノ擁護者ヲ以テ任ズル在野法曹タル我等ハ同志結成シテ起チ法律ノ権威ヲ失墜セシメ世相ヲ暗黒ナラシムル是等ノ陋習妄想ヲ排撃廓清〈かくせい〉シ、崇高至純ナル日本精神ニ基キ、凡ユル(あらゆる)法律ノ解釈運用並ニ改善ニ精進セントス、斯クテ祖国ハ骨肉相食ム(はむ)修羅場ヨリ救ハレ道義燦然〈さんぜん〉生気凛然〈りんぜん〉タル共栄ノ楽土タルヲ得ベク、率ヒテハ其ノ世界的大使命ヲモ成就スルコトヲ得ベシ。
是レ、我等ガ微力ヲ顧ミズ愛国法曹連盟ヲ発起シタル所以ナリ、敢テ天下同憂ノ士ニ檄シテ賛同ヲ待ツ。【以下、次回】