◎宗教に対する統制は、文部省の自由裁量(宗教団体法)
赤松徹真教授の論文〝総戦力下の神仏問題と本願寺派「宗制」〟を紹介している。本日は、その二回目で、「宗教団体法」について解説している部分を引用させていただきたい。
政府は一九三九(昭和十四)年四月八日に宗教団体法を法律第七七号して公布し、翌年四月一日に施行した。関係法令として一九三九年十二月二十三日には宗教団体法施行令を、一九四〇年一月十日には宗教団体法施行規則などを制定した。この宗教団体法は、宗教団体と宗教結社に適用されたのである。宗教団体法の第一条には「本法ニ於テ宗教団体トハ神道教派、仏教宗派及基督教其ノ他ノ宗教ノ教団(以下単ニ教派、宗派、教団ト称ス)並ニ寺院及教会ヲ謂フ」と規定し、第二条には「教派、宗派及教団並ニ教会ハ之ヲ法人ト為スコトヲ得 2 寺院ハ之ヲ法人トス」とした。そして、第三条で「教派、宗派又ハ教団ヲ設立セントスルトキハ設立者ニ於テ教規、宗制又ハ教団規則ヲ具シ法人タラントスルモノニ在リテハ其ノ旨ヲ明ニシ主務大臣ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス」と、宗教団体は「主務大臣ノ認可」を必要とするとされた。そして、第四条では「教派及宗派ニハ管長ヲ、教団ニハ教団統理者ヲ置クベシ」として、管長および教団統理者の配置を規定した。また、第十六条では、
《宗教団体又ハ教師ノ行フ宗教、教義ノ宣布若ハ儀式ノ執行又ハ宗教上ノ行事ガ安寧秩序ヲ妨ゲ又ハ臣民タルノ義務ニ背クトキハ主務大臣ハ之ヲ制限シ若ハ禁止シ、教師ノ業務ヲ停止シ又ハ宗教団体ノ設立ノ認可ヲ取消スコトヲ得》
と、宗教団体および「教師」が「安寧秩序ヲ妨ゲ又ハ臣民タルノ義務ニ背クトキハ」主務大臣による制限又は禁止、さらに設立認可の取り消しを規定した。第十七条では、
《宗教団体又ハ其ノ機関ノ職ニ在ル者法令又ハ教規、宗制、教団規則、寺院規則若ハ教会規則ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ取消シ、停止シ若ハ禁止シ又ハ機関ノ職ニ在ル者ノ改任ヲ命ズルコトヲ得
2 教師法令ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ其ノ業務ヲ停止スルコトヲ得》
とし、第十八条「主務大臣ハ宗教団体ニ対シ監督上必要アル場合ニ於テハ報告ヲ徴シ又ハ実況ヲ調査スルコトヲ得」、第十九条「主務大臣ハ命令ノ定ムル所ニ依リ本法ニ規定スル其ノ権限ノ一部ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得」、第二十三条「宗教団体ニ非ズシテ宗教ノ教義ノ宣布及儀式ノ執行ヲ為ス結社(以下宗教結社ト称ス)ヲ組織シタルトキハ代表者ニ於テ規則ヲ定メ十四日内ニ地方長官ニ届出ヅルコトヲ要ス届出事項ニ変更ヲ生ジタルトキ亦同ジ」などと、主務大臣・地方長官による宗教団体への監督・調査を規定したのである。
このように宗教団体法は、主務官庁である文部省による認可制度を採用し、政府の宗教団体への統制に強力な機能を発揮することになった。認可は、事実上、主務官庁の自由裁量であった。この宗教団体法の施行に際して、神道教派十三派、仏教宗派十三宗五十六派のなかで、一九四一年三月以降、仏教界では文部大臣の設立認可を受けたのは十三宗二十八派で、派の統合が行政指導を伴って行われた。〈二二四~二二五ページ〉
文中の下線は、引用者によるものである。この部分を、再度、引用してみる。
宗教団体法は、主務官庁である文部省による認可制度を採用し、政府の宗教団体への統制に強力な機能を発揮することになった。認可は、事実上、主務官庁の自由裁量であった。〈二二五ページ〉
なお、「宗教団体法」は、インターネット上で、その全文が閲覧できる。【この話、続く】