礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

明治時代の漢字字書は侮れない

2017-01-21 00:39:59 | コラムと名言

◎明治時代の漢字字書は侮れない

 先週の土曜、神保町の古書展で、後藤光憲編纂『活版鮮明 広益新撰玉編』(鐘美堂)という漢字字書を入手した。和綴じで本文二一七丁(四三四ページ)。一九〇五年(明治三八)初版だが、入手したのは、その「八版」で、一九一二年(明治四五)発行。外見は相当くたびれているが、中味に問題はない。
 この種の字書は、謄写版のものが多く、「活版」のものは、あまり見かけない。ただし、活版だから鮮明ということはなく、この本の場合、八版ということもあってか、印面に不鮮明なところが散見される。
 このブログを始めたころ、「見たことがなく読めるわけがない漢字」というコラムを書いたことがあった(2012・6・26)。
 本日は、そのとき紹介した漢字が、後藤光憲編纂『活版鮮明 広益新撰玉編』(鐘美堂、一九〇五)に載っているかどうかを確認してみた。その結果を以下に示す。見当たらない字もあったが、相当に珍しい字でも収録されていることが確認できた。明治時代の漢字字書は侮れないと、あらためて思った。
 ○印の行では、岩垂憲徳著『漢字声音談』(清水書院、一九四三)に出てくる漢字の説明と、その音読みを示した(〈 〉内は現代文表記)。算用数字は、『漢字声音談』のページ数。その次の行では、『広益新撰玉編』における当該漢字の説明、音読み、【韻】、「意味」を、この順番に示しておいた。

○ヘンが由、ツクリが頁         テキ250
デキ・ヂヤク【錫】 「ヨシ」
○行という字のツクリのみ       チヨク〈チョク〉250
チヨク・チク【沃】 「タヽズム」
○穴カンムリに條            テウ〈チョウ〉257
テウ・テウ【嘯】 「ハルカ・フカシ」
○呉という字の口の部分が日     シヨク〈ショク〉251
シヨク・ジキ【職】 「ヒカタフク・カクル」
○クニガマエに子             ケン254
ゲン・ゲン【銑】 「ワランベ・チゴ」
○ウカンムリに必        フク256  『角川漢和中辞典』の読みは〈ヒツ〉
ビツ・ミチ【質】 「トヾマル・シヅカ・ヤメンズ・モダス」
○クサカンムリに爪が二つ横並び    ラ256
ラ・ラ 「クサ・クダモノ・クサビラ」  *クサカンムリに「瓜」が二つ横並び
○生の下に母               イク258
この字は『新撰玉編』になし
○言ベンに卒         シヨク〈ショク〉260 『角川』の読みは〈スイ〉
スヰ・スヰ【寘】 「イフ・ノル・ユヅル」
○穴カンムリに爪             ア261
ア・ワ【麻】 「マガリ・クボル」     *穴カンムリに「瓜」
○牛ヘンに字               ジ262
この字は『新撰玉編』に見当たらない
○穴カンムリに巾             シン262
この字は『新撰玉編』に見当たらない
○マダレの中に何もなし         ケン263  『角川』の読みは〈ゲン〉
カン・カン【翰】  「イハオ」
○叔の下に衣            ドク264   『角川』の読みは〈トク・ソク〉
ソク・シク【沃】  「コロモノコエ・セノヌイメ」
○クサカンムリに取           サン264  『角川』の読みは〈シュウ〉
シユウ・シユ【尤】  「クサ・クサムラヤ・シトネ」
○石ヘンに津のツクリの部分      ロツ265
ロツ・ロチ【月】 「キシ」
○骨ヘンに九                イ266
ワイ・ヱ【賄】  「マガル・マグル・サカン」
○口が四つ(上に二つ、下に二つ)  セン266
シフ・シフ【緝】  「クチオホシ」

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