◎近代犯罪科学全集の構成
昨日のコラムで、武侠社の近代犯罪科学全集に触れたが、同全集の構成についてのデータは、意外に得にくいと思うので、以下に掲げておく。執筆者の肩書は、巻末にある同全集広告による。
1 高田義一郎(医学博士)『変態性慾と犯罪、犯罪と人生』1929・10・15 第1回配本
2 金澤重威(警視庁鑑識課写真室主任)・乙場辰三(警視庁鑑識課理化学主任)・山口信夫(警視庁鑑識課指紋主任)『理化学鑑識法』1929・12・25 第4回配本
3 有松清治(警視庁特別捜査課長)・出口安二(前警視庁捜査課長)『犯罪捜査法』1930・6・13 第10回配本
4 中村古峡(文学士)『変態心理と犯罪』1930・3・15 第7回配本
5 野添敦義(警視庁嘱託)『女性と犯罪』1930・11・5 第14回配本
6 喜多壮一郎(早稲田大学教授)『暗殺・革命・動乱』1930・7・15 第11回配本
7 浅田 一(長崎医科大学教授医学博士)『犯罪鑑定余談』1929・10・25 第2回配本
8 小南又一郎(京都帝大教授医学博士)『法医学短篇集』1930・1・10 第5回配本
9 尾佐竹 猛(大審院判事法学博士)・喜多壮一郎『売淫、掏摸・賭博』1929・12・25 第3回配本
10 金子準二(警視庁医務課技師)『犯罪者の心理』1930・2・15 第6回配本
11 加藤寛二郎(警視庁医務課長)・荒木治義(警視庁医務課技師)『殺人と性的犯罪』1930・5・8 第9回配本
12 古畑種基(金沢医科大学教授医学博士)『血液型と親子鑑定、指紋学』1930・12・5 第15回配本
13 原 胤昭 解題『刑罰珍書集(1)』1930・4・15 第8回配本
14 尾佐竹 猛 解題『刑罰珍書集(2)』1930・8・15 第12回配本
15 飯塚友一郎『演劇と犯罪』1930・9・10 第13回配本
別巻 天草麟太郎『特異犯罪の実記』1930・12・20 第16回配本
第9巻は、「掏摸・賭博」を尾佐竹猛が執筆し、喜多壮一郎が「売淫」を執筆している。
各巻の奥付には、定価が示されていないが、これは同全集が、「予約申込者」のみに頒布という形で発行されたからであろう。予約募集のパンフレットによれば、一冊「一円半」で、これに送本料一二銭(東京市内は六銭、外国は二四銭)が加わる。ちなみに、同全集は、予約募集の段階においては、全十五巻で、全巻「一時払」の場合は割引され、十二円であった。
ちなみに、予約募集の段階における全十五巻の構成は以下の通り。計画段階と実際とでは、かなりの違いが生じたことがわかる。
1 高田義一郎『犯罪と人生、変態性慾と犯罪』
2 金澤重威・乙場辰三・竹内美義・山口信夫『理化学鑑識法』
3 有松清治・出口安二『犯罪捜査法』
4 天草麟太郎『特異犯罪の実記』
5 野添敦義『女性と犯罪』
6 喜多壮一郎『世界暗殺史』
7 浅田 一『鑑定余談』
8 小南又一郎『法医学短篇集』
9 尾佐竹 猛・喜多壮一郎『売淫、掏摸、賭博』
10 金子準二『犯罪者の心理』
11 加藤寛二郎・荒木治義『殺人、変死、不法交接』
12 古畑種基『血液型と親子鑑定、指紋学』
13 尾佐竹 猛・高田義一郎・原 胤昭 解題『刑罰珍書集』
14 尾佐竹 猛・高田義一郎・原 胤昭 解題『刑罰珍書集』
15 尾佐竹 猛・高田義一郎・原 胤昭 解題『刑罰珍書集』
今日の名言 2012・7・15
◎それは我々が今迄に見なかつたものをも過分に含んだ秘庫だ
作家・菊池寛の言葉。武侠社の近代犯罪科学全集を推薦している小文中にある。同全集の予約募集のパンフレットより。「探偵小説家たらんとする人々は勿論、作家志望の人々も一度はゼヒ読んでいい」。