移住の一番の理由が住まいの提供があって、安価だということ。
そんなことで地方に移り住んだ、やる気があるとは言えない若者が、少しずつ変わっていく、というか成長していく。
そこには、太っ腹なじいさんやばあさんがなかなかの役割を果たしている。
そんな話で始まっていくが、やがて話の中心は、巨大資本をバックにした大型ショッピングモールと地元商店街との、駅前シャッター商店街の再開発をめぐる対決に移っていく。
主人公の一人である若者健太が、地方・田舎の人々とふれ合うことによって、商店街を盛り上げながら、少しずつ成長していく。
そこにはちょっぴり恋愛の要素も入るのだが、そういうことがまたいいアクセントになっている。
さて、巨大資本をバックにした大型ショッピングモール対さびれた地元商店街の一部の住民たち。
どうすれば後者が前者に勝てるのだろう、と思いながら読み進めていった。
田舎に住む人間にとって、都会への憧れや便利さは大きい。
大型ショッピングモールには、それがあるからそれを売りにする。
後者が大切にしていくものが、田舎そのもののよさ。
たとえば、農産物の食べ方、活かし方。
たとえば、若者から高齢者まですべての人に対する思いやり。
普通は、大型モールの一人勝ちになる地方が多いのが現実だろう。
最初は、対立の構図から、どうやって力のない者たちが力のある者に対して、逆転して勝っていくのだろうと思いつつ読んでいたが、途中で考えが変わった。
開発を打ち出す大型ショッピングモールも必ずしも悪いところばかりではない。
田舎の人間にはあると便利だし、助かる部分も多い。
だけど、みんながみんな大型モールみたいになる必要もない。
大型モールには出来ないことだってあるのだ。
だから、両立できるようにするのが理想なのだ。
どちらも、キーワードは「人を大事にする」ことなのだ。
そこから外れて行ったとき、破たんを招いてしまうのだ。
本小説は、そんなことを言ってくれているような気がした。
本書は「脱・限界集落株式会社」だったが、その後この話は続編にあたるらしいと知った。
同じ著者が、「限界集落株式会社」という小説を書いていて、それが前編になるようだ。
途中から重要な働きをする人物たちは、その前編でも活躍していたと聞いた。
順番が逆になったが、それでも「脱・限界集落株式会社」は、十分楽しめた。
そのうち、前編に当たる同じ著者の「限界集落株式会社」も読んでみよう。
新潟駅周辺は栄えていますけど、古町周辺の夜はアーケードでキャッチボールできます状態ですし、地下の古町ローサ「歩いているの俺だけ?」ってこと多いですし、本当にシーンとしていて限界集落って感じでしょうか。(それでいて固定資産税はなぜか高く、西区の家の3倍)
まぁ、私としては大好きな飲食店があって、クラシックコンサートホールのりゅーとぴあまで歩いて20分ちょっと、ジャズ喫茶まで10分で行けて、便利で良いんですけど…。
「限界集落株式会社」、「脱・限界集落株式会社」面白そうですね。私も読みたいと思います。これからもよろしくお願いします。
新潟県の大都会、新潟市の繁華街近くでもそんな状態とは驚きです。もっとも、かつてデパートがあって人がごった返していた古町を考えると、さびれた感じは否めないのかもしれませんね。それでも、市外ですとりゅーとぴあのようなところやジャズ喫茶など、なかなか行けません。新潟市中心部は、田舎と都会の両方を味わえる街としての魅力もあるのかもしれませんね。