書名を見て、表紙の写真を見たら、
「まもなく試合開始でございます」
と、あの特徴的な声が聞こえてきそうな気がした。
そうそう、千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)の場内アナウンスのあの声、あのリズムですよ。
「4番、ライト、サブロー~~~~~~!」の、あのアナウンスは、忘れられませんなあ。
なんかふざけたアナウンスのような気がしていたが、聴き慣れると、今はなんだかとってもいい感じになっている。
本書は、去年、場内アナウンスを2000試合連続して担当した記念に企画されて出版されたらしい。
こういう人にも焦点を当てて出版するとは、さすがベースボール・マガジン社!
野球部監督として甲子園に何度か帯広三条高や帯広北高を甲子園に出場させた方を父にもったせいか、野球が大好きだったという著者。
野球部のマネージャーを経て、場内アナウンスの仕事に憧れをもった。
その夢をかなえたくて、就職しながらも、12球団に問い合わせの電話をかけ合い続け、3年目にやっとロッテの球団職員になれたことから、憧れの仕事に近づくことができた。
そして、やがて希望を叶えるチャンスをつかんでから、アナウンスの仕事に関わるようになった。
本書では、野球や場内アナウンサーへのあこがれを抱いて成長してきたことや、プロフェッショナルな場内アナウンス嬢としての努力や工夫、心得などが述べられている。
普通のアナウンスだと暗く聞こえるから、どんなときでもできるだけ明るくなるようなアナウンスにしようとするから、あのような独特のアナウンスになるのだという。
スコアブックを書きながらのアナウンス、選手による登場曲とアナウンスのタイミング、40度近くの高熱がありながら行った初芝の引退セレモニーのアナウンスなども、すごい。
やっぱり、NHKの「プロフェッショナル」に取り上げられるだけある。
また、一軍公式戦2000試合アナウンスを記録した中で、著者が選ぶ「マリーンズ思い出の名場面」というのは、ロッテファンでない私が読んでいても懐かしいものがある。
初芝のサヨナラアーチ、イ・スンヨプの一発、福浦の2000本安打、佐々木朗希の完全試合など…。
人生で夢をもって実現に向けて努力すること。
人を大切にして誠意をもって仕事をすること。
一つのことを楽しみながら続けていくこと。
何のくせもない、読みやすい文章をたどっていると、そんなことが大切なのだと教えてくれている気がした。
前人未到の一軍公式戦2000試合アナウンス。
これからもZOZOマリンスタジアムの試合で、谷保さんのアナウンスが響いているのを聞いて、大いに楽しませてもらおう。