ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「神主さんがなぜプロサッカーチームの経営をするのか」(池田弘著;東洋経済新報社)

2020-06-13 22:03:12 | 読む

2006年と、だいぶ前に出た本になってしまうが、アルビレックス新潟の会長、池田弘氏の「神主さんがなぜプロサッカーチームの経営をするのか」を再読した。
新潟市内の愛宕神社の宮司(神主)でもある池田氏が、新潟総合学園(NSG)をはじめとするNSGグループの会長として、様々な事業に当たっている。
私たちにしてみれば、アルビレックス新潟の会長というのが一番身近なところなのだが。

本書では、氏の基本的な考え方が述べられており、同じ新潟県人として、うんうんとうなずきながら読むところが多い。
「地域の人々を幸せにすることがライフワーク」
「いちばん大切にすべきは、地域社会。仕事は地域社会のためにするものだという意識をもってする。」
宮司としての思いを経営に生かし、新潟県の発展と県民の幸福のためという視点をもって活動してきているのがわかる。

今回読んでみて、さらに深く味わえたのは、「若者に対する見方・考え方」と、「多神教である日本のよさ」であった。

最近の若者と話をするとしきりに自分のことを話すことが多い。
それは、認めてもらいたいという欲求が強いということ。
いわゆるエリートでも、「落ちこぼれ」のレッテルをはられたような子でも、認めてもらうことにたいへん飢えている。
そういう子たちにきちんと向かい合い、本当にすばらしいと思った長所や可能性を認め、ほめてあげることが大事だ。
そうするとその後やる気を出すケースも多い。
認めることで、想像を超えるほどの意欲や潜在能力を引き出すことができる。

この感覚は、教育の現場で子どもたちでも若い教師でも同じだと思った。
なんでもかんでもほめればよい、認めればよいというわけではない。
書いてあるように、「本当にすばらしいと思った長所や可能性を認める」力が要求されるのだ。
その子、その人らしいよさを見つけてあげて(認め)、そこをほめるのである。
そうすると、そこに自信を持った彼らは、すばらしい意欲を発揮し、十分な力を出して生きていくようになるのである。
このことは、身をもってたっぷり味わったことであった。

もう一つは、日本がもともと様々なものに神様が宿ると考えている多神教であるという素晴らしさである。

一神教はたった一つの神様しか認めない。
だから、自分たちの宗教だけを信じて、他の宗教に対する攻撃を加えたりする。
ところが、日本は、「八百万の神」を信じる。
神様は、山の神、海の神と、各地あらゆるところにもいると考えている。
よく「○○の神様」と言ったりする。
国際化の時代というが、国際化とはあらゆるものとの共存を意味する。
互いの価値を認め、他者との協調性を保ち、むやみに争わないという、神道的な多神教の考えのほうが、国際化の進んだ社会を発展させるにはふさわしい。
自然を大切にし、人間同士が信頼しあって助け合う世界が望ましいという、日本人の根底に流れる心を大事にすることはとても大切だ。

しっかりした一つの神がいるわけでもなく、経典も持たず、優柔不断なだけだ。
他の一神教の宗教に比べて劣っている。
そう思っていた日本の神様に対する考えが、変わった。
実は自然豊かな中で感謝の気持ちをもち、相手を尊重する心をもっているのが神様を信じる日本人。
なるほど、逆にあらゆる人たちとの共存ができる。
国際化の時代にふさわしい資質をもっていると言える。

この本が出た2006年のころに比べて、世界は自国優先主義の色合いが濃くなった。
欧米しかり東アジアの大国しかり。
COVID-19 の流行で、その傾向はさらに強くなりそうな懸念もある。
そんな今の時代に再読して、日本人として、新潟県人として前よりも元気をもらったような一冊であった。
コメント
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