ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

娘よ(32)

2014-01-23 23:38:52 | 生き方
どうか、痙攣が起きないように。
そう願いながら、長い間娘の右手を握っていた。
長い間、と言っても1時間余りでしかないのだが。
娘の手をこんなに長く握っていたのは、娘が幼児の時の家族旅行以来のことだろう。。

今夜も、娘は、いつもどおりのルーティンで、夕食後、個室の病室内で歯みがき、洗顔を終えた。
7時半前に、トイレに行こうとしたとき、点滴の終わりを告げる警告音がした。
そこで、看護師さんが来てその交換が終わるまで洗面台の椅子に座って待っていたら、急に娘がしっかりと立てなくなった。
それでも、立たせてあげると、なんとかトイレに行けたのはいいが、またしてもトイレ内で自力で立てなくなってしまっていた。
アコーディオンカーテンを開けて、手を貸し、立たせた。
つかまらせて歩く足どりもおぼつかなく、体がふらふらしていた。

なんとかベッドまで支えて歩かせて寝かせた。
ベッドに寝かせてからは、ぼうっとして動きが少なく、今にも痙攣が起こりそうな様子だった。
だが、目線は時々動いていた。
いつもの痙攣なら、まもなく目の動きが止まってしまう。
私は、ずっと手を握ってあげ、話しかけていた。

時折、娘の目から涙がすべるようにこぼれ落ちてきた。
「ごめんなさい。」
小さな声で娘は言っていた。
「何もお前は悪くないんだから、そんなこと言わなくてもいいんだ。一番大変なのはお前なのだから。」
 具合を聞くと、時々ものが二重に見えるとか、回って見えるとか、よくない様子だった。
その間じゅう、娘の右手を握っていた。
やがて娘は、8時15分頃から10分間ほど寝入った。
その後、目覚めると、少しは気分がよくなったようだった。
しかし、尋ねると、トイレで具合が悪かったことも、もう忘れていた。


でも、とりあえず大丈夫そうなので、よかった。
就寝前に様子を見に来た看護師さんに、今までのことを話して伝えた。
就寝前のトイレは、さっきよりは確かな足取りで行って来ることができた。
それをみて、ひとまずは安心した。
とりあえず痙攣の危機は脱したようだった。
就寝時間となったので、娘と小さく手を振り合い、帰ることにした。


今日の夜は、珍しく雪が降っていなかった。
オリオン座が大きく見えた。

家に帰って、遅い夕食を食べようとしたら、娘とつないでいた右手人差し指の付け根が痛かった。
手をつないだまま、知らないうちに無理な姿勢をとっていたらしい。


寒い冬は、まだ続く。
コメント
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