日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第六十段

2020年08月11日 | 徒然草を読む


【原文】  
真乗院に、盛親僧都とて、やんごとなき智者ありけり。芋頭といふ物を好みて、多く食くひけり。談義の座にても、大きなる鉢にうづたかく盛りて、膝元に置おきつゝ、食ひながら、文をも読みけり。患ふ事あるには、七日・二七日など、療治とて籠り居て、思ふやうに、よき芋頭を選えらびて、ことに多く食ひて、万の病を癒しけり。人に食はする事なし。たゞひとりのみぞ食ひける。極めて貧しかりけるに、師匠、死にさまに、銭二百貫と坊ひとつを譲りたりけるを、坊を百貫に売りて、かれこれ三万疋を芋頭の銭と定めて、京なる人に預け置きて、十貫づつ取り寄せて、芋頭を乏ともしからず召しけるほどに、また、他用に用ゐることなくて、その銭皆に成りにけり。「三百貫の物を貧しき身にまうけて、かく計ひける、まことに有り難き道心者なり」とぞ、人申しける。
この僧都、或法師を見て、しろうるりといふ名をつけたりけり。「とは何物ぞ」と人の問ひければ、「さる者を我も知らず。若しあらましかば、この僧の顔に似てん」とぞ言ひける。
この僧都、みめよく、力強く、大食にて、能書・学匠・辯舌、人にすぐれて、宗の法燈なれば、寺中にも重く思はれたりけれども、世を軽かろく思ひたる曲者にて、万自由にして、大方、人に従ふといふ事なし。出仕して饗膳などにつく時も、皆人の前据すゑわたすを待たず、我が前に据ぬれば、やがてひとりうち食ひて、帰りたければ、ひとりつい立ちて行けり。斎・非時も、人に等ひと定めて食はず。我が食ひたき時、夜中にも暁にも食ひて、睡ければ、昼もかけ籠りて、いかなる大事あれども、人の言ふ事聞き入れず、目覚さめぬれば、幾夜も寝いねず、心を澄ましてうそぶきありきなど、尋常ならぬさまなれども、人に厭いとはれず、万許されけり。徳の至れりけるにや。

【現代語訳】
真乗院に盛親僧都という天才がいた。里芋が大好きで大量に食べていた。説法集会の時でも大鉢に山の如く積み上げて、膝の近くに置いて食べながら本を読んでいた。疾病すれば、一二週間入院して思い通りの良い芋を選別し、普段よりも大量に食べ、どんな大病も完治させた。また、誰にも芋をやらず、いつも独り占めした。貧乏を窮めていたが、師匠が死んで寺と二百貫の財産を相続した。その後、百貫で寺を売り飛ばし、三百貫もの大金を手にした。その金を芋代と決めて、京都銀行に貯金した。十貫ずつ金を引き出しては、芋を買い、満足するまで食べ続けた。他に散財する物もなく全て芋代に化けた。「三百貫の大金を、全て芋に使うとは類い希なる仏教人だ」と人々に称えられ、殿堂入りした。
この僧都は、ある坊さんを見て「しろうるり」とあだ名を付けた。誰かに「しろうるりとは、どんな物ですか?」と問われると「私も何だか知りません。もし、そんな物があったなら、きっとこの坊さんの顔にそっくりな物でしょう」と答えたそうだ。
この僧都は、男前で、絶倫で、大食漢で、達筆でもあり、学才が半端でなく、演説させれば最高だった。仁和寺系列ではナンバーワンの僧侶だったが、世間を小馬鹿にしている節があり、いわゆる曲者であった。勝手気ままに生き、ルールなども守らない。もてなしの宴でも、自分の前にお膳が来ると、たとえ配膳中であってもすぐに平らげ、帰りたくなれば一人だけ立ち上がり退室した。寺の食事も、他の僧のように規則正しく食べたりせず、腹が減ったら、夜中、明け方、構わず食べた。欠伸をすれば、昼でも部屋に施錠して寝てしまう。どんなに大切な用事があっても、人の言いなりになって目覚めることはなかった。寝過ぎて目が冴えると、夜中でも夢遊状態のまま鼻歌交じりで徘徊する。かなりの変態であったが、誰からも嫌われることなく世間から許容されていた。まさに、超人のなせる技である。

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。

Daily Vocabulary(2020/08/11)

2020年08月11日 | Daily Vocabulary
25781.track and field(陸上競技) sports such as running and jumping 類義語 athletics British English  
What is your favorite track and field event?
25782.aquatics(水上、水中競技)the five Olympic sports that involve swimming or diving 
I enjoy aquatics in the summer . 
25783.breathe(息をする、呼吸する、生きている)
Breath in through your nose and out through your mouth. 
25784.rarely(めったに…しない、まれに、珍しいほど、とても) not often OPP frequently 
I rarely have chances to speak English.
25785.best before date(賞味期限) ea date printed on containers of food or drink and some other products that shows when they will be too old to eat, drink, or use 
These cookies have passed their best before date

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