どこから行っても遠い町川上 弘美新潮社このアイテムの詳細を見る |
【一口紹介】
◆Book Description◆
捨てたものではなかったです、あたしの人生――。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房……東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人びとの、その平穏な日々にあるあやうさと幸福。川上文学の真髄を示す待望の連作短篇小説集。
◆著者◆
1958(昭和33)年東京都生れ。1994(平成6)年「神様」で第一回パスカル短篇文学新人賞を受賞。1996年「蛇を踏む」で芥川賞、1999年『神様』でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、2001年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、2007年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。その他の作品に『椰子・椰子』『おめでとう』『龍宮』『光ってみえるもの、あれは』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『古道具 中野商店』『夜の公園』『ハヅキさんのこと』『どこから行っても遠い町』などがある。
【読んだ理由】
『センセイの鞄』以来の川上 弘美作品。
【印象に残った一行】
誰も、おれを罰してはくれない。おれが、おれを罰することしか、できない。
みんな、いなくなってしまった。お父さんも、お母さんも、父も、母も、清子ちゃんも。いつか平蔵さんもいなくなって、そしてあたしもいなくなる。
そしたら、生きてきたこのあたしを誰が覚えていてくれるの。あたしという人間の人生は、どこに行ってしまうの。全部は、なかったことになるの。
【コメント】
十一の短篇はいずれも、東京の東の方にある、商店街のある町を舞台にしている。
一作一作は独立しているものの、お互いの物語が違う物語へと発展していく前の作品の脇役が次の主役になり、登場人物が重なりあう趣向。
それぞれに極めて日常の物語が語られている。