不良おやじの小言

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①LTCM破綻金融危機の引金

2012年05月18日 | 海外不正・汚職事件
今の世界が異常な金融状態に陥った欧州、米、日本の内、
米・日本の主な金融の事件をインターネット・ウイキペディア等より
拾い概略を述べてみます。

①アメリカのLTCM破綻
金融機関同士の金融派生商品であるデリバティブ取引という、
実体のない信用取引を拡大させ架空市場を形成するパターンです。

1998年8月17日、ロシアは金利の支払いができずに、
デフォルトを宣言しました。「ロシアはIMFに救済されるからロシアは
デフォルトしない」と予想して、大量のロシア国債を買っていた
ヘッジファンドはとてつもなく大きな損失を被りました。
その中に、金融派生商品の価値を理論的に算出する数式を発明した
功績によりノーベル経済学賞を受賞した経済学者二人をメンバーに
持つ大手ヘッジファンド「LTCM」も例外ではなく破綻の危機を迎えました。

それは世界中の金融商品の理論価格を正しく算出し、
実際に市場で取引されている価格が理論価格よりも安ければ
その金融商品を買い、市場価格が理論価値よりも高ければ空売りする、
という「ロング・ショート」という投資手法でした。
1994年に運用を開始した時点で1000億ドルものお金を投資家から集め、
1998年までの4年間で投資によって
4倍にまで増やしたといわれています。

しかし、1998年にロシアがデフォルトすると、状況が一気に変わります。
金融市場が世界的なパニックを起こし、世界中の投資資金が、
安全な国の安全な資産へシフトしたのです。
最初に資金流出が起きたのは新興国でした。
「ロシアの次にデフォルトする!」と心配されたブラジルやアルゼンチンの
国債を持っていた投資家が、これらの国債を売却し、
アメリカ国債を買ったのです。
当時アメリカ国債は、「世界で最も安全な資産」と考えられていました。

デフォルトの心配がそれほどなかったスペインやイタリアの国債からも、
投資資金が逃げ始めたのです。結果LTCMが保有していたスペインや
イタリアの国債が、市場価値が暴落し、逆にLTCMが空売りしていた
アメリカ国債を世界中の投資家が買ったために値上がりしたのです。
LTCMは、市場価格が理論価格へ戻るまで待ち続け、
意に反しイタリアやスペイン国債はさらに安くなり、
アメリカ国債はさらに高くなって「買い」と「空売り」の両方が裏目にでる
格好になりました。結果破綻寸前の大損失を抱え込んでしまいました。

ロシアのデフォルトによってパニック状態になった投資家は、
売られて安くなったイタリアやスペイン国債を買うという合理的な
投資行動をとるのではなく、「もっと安くなるかもしれない!」という
不安感から、先を争うように売却し高い値段など気にせず
アメリカ国債を買ったのです。

LTCMの投資理論には、「市場は常に理論的に正しく動くのではなく、
時には感情的になり、間違った方向へ動くこともある」という人の観点が
抜け落ちていたのです。つまり金融工学の確率論では
人間のパニック状態の行動心理までは読み取れなかったのです。

LTCMの大損失が明るみにでると、
アメリカ金融界は大パニックになりました。LTCMの破綻は、
一般投資家以外にアメリカ等の銀行から1000億ドル(8兆円)お金を借りて
運用することで、より大きな投資収益を得ていました。
LTCMが破綻すると、規模の大きな運用会社ですから、
他の金融機関とも密接につながっていて、金融システム全体に
深刻な影響を与え、一般投資家のみならず企業にも影響が及びます。

もう一つ問題がありました。LTCMはデリバティブとよばれる金融取引契約
をたくさんの銀行や投資銀行と結んでいたのです。
その総額は1兆ドル(80兆円!)とも言われています。  
LTCMが破綻すると、この1兆ドルの金融取引契約が全て消えてなくなる
ことになります。銀行はLTCMとのデリバティブ契約によっても、
大規模な損失を被ってしまう可能性がありました。
こうした懸念から、LTCMの損失が世間におおやけになると、
アメリカの金融機関の株が一斉に売られ、下落しました。
FRB(正確にはニューヨーク連邦準備銀行)は10行以上の大手銀行の
幹部を一度に集め、LTCM問題を話し合いました。
このままLTCMを破綻させると、ここに集まっている銀行は皆大きな損失を
被ってしまうのです。とはいえ、単独で緊急融資をしてLTCMを助けようと
考える銀行はありませんでした。追加融資をした挙句に破綻してしまったら、
損失が膨らむだけだからです。そこで、大銀行が集まったこの会議の場で、
「全部の銀行がLTCMに協調融資をして救済する」という
約束が取り付けられたのです。

金融システムや経済システム全体に問題が波及します。
結局、LTCMは、1兆ドルのデリバティブ契約を徐々に清算した後、
解体されてしまいました。LTCMが突然破綻して、
金融システムが大混乱に陥ることだけを避けたかったのです。
LTCMが一つずつデリバティブ契約を解約していき、
LTCMと金融システムのつなぎ目が一つ一つほどかれ、
LTCMをつぶしても金融システムに影響は少ない状態になってから、
LTCMは解体されたのです。
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