◇風見鶏
俺の方ばかり見ていやがる
あの鶏めは!
男が憎々しげに呟くと、
風見鶏は、それが聞えたのか、
視線を逸らして、横顔を向けている。
いったい今度はどこを見ているんだ。
その風見鶏の視線を辿れば、
真向いの家のベランダで、
デブの茶色猫が日向ぼっこをしているのだ。
今度は猫が、風見鶏の凝視にたえられないらしく
うるさそうに顔をしかめ、
肥ってどこに目があるのか分らない
ほどの細い目を瞑る。
このときはもう風見鶏の志向は、いくつもの人家の屋根越しに、
遙かな山の頂に行っている。
いやそれさえも孤高の鶏にはどうでもよいことで、
彷徨う雲にならって宇宙をさすらっているのだ。
◇
俺の方ばかり見ていやがる
あの鶏めは!
男が憎々しげに呟くと、
風見鶏は、それが聞えたのか、
視線を逸らして、横顔を向けている。
いったい今度はどこを見ているんだ。
その風見鶏の視線を辿れば、
真向いの家のベランダで、
デブの茶色猫が日向ぼっこをしているのだ。
今度は猫が、風見鶏の凝視にたえられないらしく
うるさそうに顔をしかめ、
肥ってどこに目があるのか分らない
ほどの細い目を瞑る。
このときはもう風見鶏の志向は、いくつもの人家の屋根越しに、
遙かな山の頂に行っている。
いやそれさえも孤高の鶏にはどうでもよいことで、
彷徨う雲にならって宇宙をさすらっているのだ。
◇