波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

行進

2012-05-09 10:23:30 | 掌編小説





[行進]



子持ちの女を羨ましく思った独身女が、ペンギンを飼うようになった。

給料の大半は、ペンギンの餌代と製氷代に消えている。

圧巻はペンギンを連れた朝の行進だ。まだ人通りも、車も少ない通り

を、二十羽近いペンギンを率いて歩いて行く。

現在卵をあたためている八羽のペンギンが、卵を孵し、その親子も行

列に加わるようになれば、相当大きな行進になる。

女がペンギンを連れて行進するときほど、喜色を露わにすることはない。

そしてこんな采配を振るうのだ。

「はい、みんな、ペンギンについて歩きなさい」

これを見た子供の親たちは大変だ。我が子が女にさらわれてしまうと、

真剣に悩みはじめるのだ。
                 おわり