波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

オアシス

2015-03-05 15:04:29 | 散文





◇オアシス




高層アパートのベランダに鉢を並べて

赤・黄・紫・カーマイン・ローズマダー……

この季節 この大都会に可能な限りの

花々を咲かせる

四囲をビル群に遮蔽されているから

狭くも豊かな花園の場所を知っているのは

空をゆく鳥だけだ



時々舞い降りては

花蜜を吸っていく



ぐわっと

突拍子もない声があがったりするのは

喉を詰まらせたか  歓喜の声だ



それを聴いたアパートの住人は

どこかの妻が発狂したと勘違いする



あらぬ方角から救急車のサイレンがわき上がり

アパートの下に駆けつけたときには



そのサイレンの音に鳥は逃げ出してしまって

教会の塔のてっぺんに留まり

高音を廃したくぐもり声で

自分のうっかりが招いた罪を悔いている




にほんブログ村 ポエムブログ 散文詩へ
にほんブログ村