波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

子雀

2015-05-07 11:40:15 | 童詩


◇子雀



親雀が餌をとって帰ると、

子雀は親を呑みこむほど大きく口を開く。

親雀はその度に、惨めな思いにかられる。

捕ってきた虫があまりに小さく、

子雀の大きな口との落差に傷つくのだ。

子雀の口が大きければ大きいほど、

頻繁に餌運びをしなければならない。



人間の母親は子供をブランコに乗せて、

遊ばせているというのに。



   ◇

シャボン玉

2015-05-07 10:51:37 | 童詩


◇シャボン玉



シャボン玉は

この世に生まれたとき

小さな町をそっくり

自分の表面に焼き付けて

持って行こうと思った

そうやってシャボン玉は

みるみる上昇し

青い空に吸い込まれていった



それからというもの

晴れ渡った真昼時

空の深みに

小さな町が蜃気楼のように

浮かび出ることがある



   ◇

2015-05-07 06:13:16 | 童詩

◇燕


燕がやって来た

彼らの素早さときたら

驚くほどだ

しばらく静観なんてことはない

飛びながら決めていく


蛇の出そうな旧い家など

あっさり棄てていく


  ◇

黄色い蝶

2015-05-06 14:16:53 | 童詩



◇黄色い蝶



暗い山道を

通り過ぎるとき

鮮やかな山吹の黄を

目にした気がした



帰りに寄ってみると

一輪の山吹もない

では あの黄色は?

夢? 幻?



瞼に焼き付いているのは

うつつだ



うつつなら

あれは黄蝶だ!



あのとき黄蝶が生まれて

飛び立ったのだ



  ◇

細い道

2015-05-06 13:59:26 | 童詩



◇細い道



蝸牛の通った跡は

埃ひとつない

細くて綺麗な道になっている

そこを蟻が通る

細い道でも

蟻には十分な道幅だ



ただ蝸牛の歩みが

あまりにも遅いので

蟻の行列に

渋滞が起こっている



   ◇