天邪鬼な猫 2015-05-09 00:31:57 | 童詩 ◇天邪鬼な猫 猫柳の枝を 猫への土産にと 手折って帰った しかし肝心の猫が いないのだ いくら呼んでも 出て来ない まったく天邪鬼な猫だ ◇
子雀 2015-05-07 11:40:15 | 童詩 ◇子雀 親雀が餌をとって帰ると、 子雀は親を呑みこむほど大きく口を開く。 親雀はその度に、惨めな思いにかられる。 捕ってきた虫があまりに小さく、 子雀の大きな口との落差に傷つくのだ。 子雀の口が大きければ大きいほど、 頻繁に餌運びをしなければならない。 人間の母親は子供をブランコに乗せて、 遊ばせているというのに。 ◇
シャボン玉 2015-05-07 10:51:37 | 童詩 ◇シャボン玉 シャボン玉は この世に生まれたとき 小さな町をそっくり 自分の表面に焼き付けて 持って行こうと思った そうやってシャボン玉は みるみる上昇し 青い空に吸い込まれていった それからというもの 晴れ渡った真昼時 空の深みに 小さな町が蜃気楼のように 浮かび出ることがある ◇
燕 2015-05-07 06:13:16 | 童詩 ◇燕 燕がやって来た 彼らの素早さときたら 驚くほどだ しばらく静観なんてことはない 飛びながら決めていく 蛇の出そうな旧い家など あっさり棄てていく ◇
黄色い蝶 2015-05-06 14:16:53 | 童詩 ◇黄色い蝶 暗い山道を 通り過ぎるとき 鮮やかな山吹の黄を 目にした気がした 帰りに寄ってみると 一輪の山吹もない では あの黄色は? 夢? 幻? 瞼に焼き付いているのは うつつだ うつつなら あれは黄蝶だ! あのとき黄蝶が生まれて 飛び立ったのだ ◇
細い道 2015-05-06 13:59:26 | 童詩 ◇細い道 蝸牛の通った跡は 埃ひとつない 細くて綺麗な道になっている そこを蟻が通る 細い道でも 蟻には十分な道幅だ ただ蝸牛の歩みが あまりにも遅いので 蟻の行列に 渋滞が起こっている ◇