波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

風見鶏

2015-03-15 07:45:46 | 散文
◇風見鶏


俺の方ばかり見ていやがる
あの鶏めは!
男が憎々しげに呟くと、
風見鶏は、それが聞えたのか、
視線を逸らして、横顔を向けている。

いったい今度はどこを見ているんだ。
その風見鶏の視線を辿れば、
真向いの家のベランダで、
デブの茶色猫が日向ぼっこをしているのだ。

今度は猫が、風見鶏の凝視にたえられないらしく
うるさそうに顔をしかめ、
肥ってどこに目があるのか分らない
ほどの細い目を瞑る。

このときはもう風見鶏の志向は、いくつもの人家の屋根越しに、
遙かな山の頂に行っている。
いやそれさえも孤高の鶏にはどうでもよいことで、
彷徨う雲にならって宇宙をさすらっているのだ。


   ◇

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