波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

さまよい猫

2012-04-28 22:04:07 | ポエム




[さまよい猫]


これまでのような、変幻極まりない生き方ではなく、たとえば、あの蝸牛のように、一つの家にしがみつく、生き方を身につけていたら、こんなに死期を早めはしなかっただろうに。

さまよい猫よ。おまえはあまりに、気位が高過ぎたのだ。それで 自らをさえ信じられなくなり ほっつき回るようになった。
ゴミ箱からゴミ箱へ 路地から路地へ。あげくは、腐敗の街から腐臭の街へと。


何処へ

2012-04-17 17:46:03 | ポエム





[何処へ]



カワセミは眠れぬ一夜を
枝の上から
水に映る月を見て過ごした

月には
普段見過ごしていたものが
絵文字のように
数式のように
くっきりと刻まれている

カワセミは謎解きでもするように
深い瞑想の中を
彷徨っていたが

夜が明けると
曙光の中に
鳥の姿はなかった

その日に限らず
以後カワセミを見たものはなかった
この山に限らず
隣の山でも
その先の山でも
見かけなかった

カワセミは故郷を離れて
どこへ行ったのだろう

あなたの中に

2012-04-08 17:51:21 | ポエム


[あなたの中に]



朝顔の 露に濡れてしっとり開く
美しい花びらは
弄れば弄るほど萎れていく
ダイヤは研けば研くほど
耀きをます

あなたはどちらが真に
美しいと思うだろう
いや 野暮な問いは止めておこう
だが これだけは言える
朝顔とダイヤ二つ加えても 

なお叶わないものがある
一瞬一瞬生きて耀き
しかも不滅なもの
それはあなたの中に
深くしまわれていて
未だ目覚めずにいるものだ



街の犬猫

2012-01-22 12:42:21 | ポエム
街の犬猫


街の猛犬が 赤猫を追ひかけた。
猫の尻尾に
犬の口が届くほどに接近した その時。 
目の前を特急電車が疾駆してきた。
あはや犬は立止り 猫はそのまま行つた。
犬の前を 唸りを上げて 
長い鋼鉄の塊が過ぎてをり
犬の想像の裡に
凄惨な光景が展開してゐた。

だが
轟音疾風諸共に去つた後に 
向ふ側から
涼しさうにこちらを見てゐるものがある。
何と たつた今
特急電車に掻き消された赤猫ではないか!
いやこれは どう見ても
化け猫だ!
猛犬は怖ぢ気だち 踵を返して逃げだした。