波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

青梅

2018-08-13 13:27:43 | ポエム


頭を揃えて実る
青梅の1個が
ぽろりと落ちて
梅の実の
兄弟姉妹は
みな泣いた

それを見て
梅の木も
ぞ・ぞ・ぞ・ぞ・と
体が揺れた
けれども梅の木は
しっかり立っていた
枝の間に青空と
遠い山並みをくっきり入れて
しゃんしゃんと
立っていた





レールを叩く

2015-02-26 21:35:22 | ポエム



☆レールを叩く




警笛を高鳴らせて
列車はトンネルに入った
しばらくして
単調に
レールを打つ音がしてくると
列車はトンネルを出て
海岸線を走っている
ほしいままに
海と空からの光を浴びて
……
闇があり
光がある
また闇に入る

問題は終局だ
光か
闇か
闇の後の光か
光の後の闇か
賭けではない
自然の成り行きでもない
運命でも
宿命でもなく
もっと深遠なものが
人間の背後にはあって
呼吸しなければならないように
周囲から押し寄せてきている
闇があって
光があって
最終はどこだ
このままで
その先に出られるか
今のままで
よいか
よくない 
よいか
よくない
車輪のレールを叩く
音だけがしている


   ☆


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祈る水鳥

2015-02-23 21:43:03 | ポエム



祈る水鳥



川面に幾千幾万の銀貨を敷き詰め

朝日が輝きはじめる

小川には岩が頭を出している

岩の上には水鳥がのり

朝日に向かって

いくどもいくども頭を下げている

なぜか自分にないものを

グッと衝かれたようで

私は不安になる

肌に当たる飛沫は

刺されるばかりに冷たい



近づいて見ると

鳥はお辞儀をしているのではない

岩山から流れに嘴を入れて

水を飲んでいた

私はほっとし

水鳥が祈るようになったら

おしまいだ

と安堵の息をつく

だが かりそめにも

祈っているように見えたことが

痛みとなって

ずきずき我がうちに広がりはじめる



   ☆





名残

2015-02-19 11:52:07 | ポエム



☆名残



名残とは

すでに実体が通り過ぎてしまった後に

どうしようもなく残っている

気配のようなものだろうか

しかしこれからここにやって来るであろう

未来が

何故かそこにあったように思えてならないというのは

不思議というか

懐かしいというか

奇妙な感覚だ

冷静に考えれば

筋道の立たない 錯綜したものに思えなくもないが

やはりそのようにして

待ち望まなければならないのだろう

すでに見たことがあり

今も見ているかのように――


   ☆




それはそれなりに

2015-02-18 11:36:06 | ポエム



☆それはそれなりに



それはそれなりに

なんて批評はない

宇宙が

その中のもろもろの存在が

偶然ではなく

大いなる意思で

創られてゐる限り

すべては

根源に向かつて

意味がある



我々は自分の意志で

独楽を回してゐるつもりでゐても

実際は回されてゐるのだ


   ☆


燕三題

2012-06-09 17:40:19 | ポエム



燕一


早くも燕が
海を越えて来て
岬の展望台から
こちらの街々を
偵察している
海に臨む展望台から
海に背を向け
内陸の街に
視線を走らすものなど
燕をおいて
ほかには存在しない         



燕二



燕が飛来するのは

日の跳梁する真昼

彼らは故郷が

あまりに耀いていたものだから

夜になってもまだ

明るさのなかを飛んでいる 


            
燕三



かしこまったモーニング姿の
つばくらめが
街に飛来したよ
挨拶がてら
人の頭頂すれすれに滑空したりして
髪に南風を
吹きかけていったよ

この第一団が来たからには
次々到着して
この寂れた街も賑やかになるね
おしつけがましく
玄関に入りこんで来たりして

人の頭に南風を見舞ったのは
ほんの前触れに過ぎないのさ

夜の時間

2012-04-19 19:09:20 | ポエム




[夜の時間]


昼間の明るさより
夜のほうが永いと
思える不思議さ
何故か闇のほうが
安心して
寄り掛かれるような
何となく確実さを
保証してくれるような
そんな儚い思慕を
人は夜に寄せる


だから我々は
寢もやらで

語らい 
歌い 
愉しもうとする

テレビにも
終わりがなくなり
深夜の番組が音もなく
白々と放映されている






対話

2012-03-29 23:47:01 | ポエム


    [対話]               


   …私 神様とお話ができるのよ… 
   と女の子は話していたが
   その子も逝って 幼馴染みの男が
   ぶらり古里に帰ってきた。

   同じ風景の中に立って耳を澄ませば
   鳥の声 風の音 梢のさやぎ……
   その奥から
   幽かに通ってくる声――

   少女はそのとき 神とどんな話をし
   ていたのだろう。
  








沖の船

2012-02-20 11:08:36 | ポエム



[沖の船]



真っ青な海原

はるか水平線上を

白い客船が行く

あまりにも遠方にして

距離の進捗は

はかばかしくない

一分後も

同じところにいる

二分後も

ほぼ同位置だ

それならばと

五分へだてて視線をやると

客船は跡形もなく

完全に気化してしまっていた







湖畔

2012-02-18 07:41:32 | ポエム


[湖畔]


旧い館の立つ湖畔は

無気味なほど鎮まりかえっている

たまさか 

鳥の声が

静けさを引き裂いて反響する

ギャオ

ギャーオ

あの声はいったい

なんという鳥の

どんな訴えを秘めているのだろう

夕闇が迫り

間もなく湖は

完全に闇に沈んでいく
















2012-02-13 14:19:23 | ポエム



 [鷲]


内陸上空を
気流に乗って旋回していた
一羽の鷲が
翼を傾けると
都市の方角へと落ちて行った
己の影を
鋭い爪で抱え込み
影と一つになって
まっすぐ
四十五度の斜線で
都市へと
降下して行った