波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

たのもしや

2015-05-31 08:18:30 | 俳句

   ★


たどたどし水鳥陸の二歩三歩


   ★


たうたうと行くを見送る春の水


   ★


たのもしや蛇食らふ鳥山に棲む


   ★

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草原の避暑地

2015-05-27 00:59:59 | 散文詩
★草原の避暑地


草原は 雲の遊び場くらいに考えていたら
雲の陰が 草原に生きる生き物たちの
避暑地のようになっていた

炎天下
遠くへ行けない子連れの鳥や
草原を根城とする小動物が
流れる雲の陰を慕って
移動してくる
緑陰に寄ってくる人のように


そんな中で
たとえば雨蛙などが
過激な行動に出て
雨もよいの雲とか
雷雨を呼ぶ声を挙げたり
しようものなら
~あんた 何やってるのよ!~
と雛を連れた母鳥に突っつかれるだろう
またこの時とばかりに両腕を高々と掲げたカマキリの
拳骨を食らうことになる

せっかくの安らぎの場を狐や鼬に気づかれ
彼らの餌場にされてはたまったものではない


       ★



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展望台

2015-05-23 07:36:16 | 短詩



★展望台



岬の展望台は


海を眺めるためのものだが


海を背にして


街の方角を偵察しているものがある


今着いたばかりの


夏燕



   ★
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触ってごらん おとなしいから

2015-05-18 23:50:24 | 掌編小説



★触ってごらん おとなしいから。


 夕方の商店街を、母親と五歳のマコトが手を繋いで歩いて行く。
鮨屋の前にさしかかると、マコトははっと身をこわばらせて母親に抱きついた。
 鮨屋の店先には、大きなセントバーナードがロープに繋がれてお坐りし、真っ直ぐマコトを見詰めていた。
 母親も一瞬身を竦めたが、すぐ置物の犬と気づいて、
「おばかさんねえ、あれはただの置物の犬なのよ」
 とマコトを振り放して犬の傍に寄り、頭を撫ぜてやる。
「ほれ、撫で撫でしてみなさい、何もしないから。駄目でしょう、来年は小学生だっていうのに」
 いかにも親しみ深く犬を撫でつける母親を見ると、マコトは安心して犬に近づき、おずおずと手を出す。なるほど頭はつるつるして硬く、生きものの血が通ってはいなかった。
 母親はマコトの手を取って、家路を急いだ。
 マコトは犬に心惹かれて、振り返りながら遠ざかって行った。

二、三日して母親とマコトは別な商店街を歩いていた。
 眼鏡店の前に、置物のコリー犬が澄ましてお坐りをしていた。
マコトはとっさに後込みし、呼吸を整えてから二歩三歩と踏み出して行った。それでも、すぐ頭を撫でるまではいかなかった。
「触ってご覧、おとなしいから」
 言われて、すごすごと手を伸ばす。コリー犬は撫でられるままに、頭に力を溜めていた。それが嬉しがっているようにも見えた。
「そろそろ帰るわよ」
 母親に言われるまで、マコトは犬を撫で続けていた。

 あくる日、マコトは母親の目を盗んで、独りで犬を探しに出かけた。よく母親と行く商店街を経巡っているうちに、風変わりな黒い犬に出くわした。お坐りしているのではなく、四足を地面について、一箇所を鋭い目で睨んでいる。その格好たるや、グロテスクで頑健そのもの。
 マコトは四足で立つ置物の犬は初めてなので、気が気でない。しかも相手はいかつい貌つきのブルドックなのだ。犬はマコトなどまるで眼中にないかのように、斜め向こうの建物の陰のほうへ目を注いでいた。
 犬の背中にそっと手をおくと、激しく皮膚が痙攣した。これにはマコトのほうがびっくり仰天。あまりのことに彼は手を放すのも忘れていた。
 犬は凄まじく唸ってマコトの手を咬みにきた。牙が柔らかな肉に食込み、彼は声も出なかった。
 犬の口から手をもぎ取ると、マコトは商店街を帰路とは逆の方向へ狂ったように駆け出した。
 喚き声に道行く人々が振り返ったときには、すでに子どもの姿はなく、路地から路地へと平衡感覚を失った生き物となって走り込んで行った。


                   了


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応酬

2015-05-16 18:08:49 | 掌編小説



★応酬



農家の庭木で鶯が鳴いた。
負けずに雄鶏が鳴いた。
鶯は首をかしげて黙った。
麓の村から時々湧き上がる鳥の声を、うるさいと思っていたが、
その鶏はここにいたのか。
鶯はぶつぶつ言いながら山へ帰った。
自分のとった行為が、敗北なのか、幻滅なのか、
考えていた。
人は敗北ととるだろうが、本当は幻滅さ。
そう呟いて、木の葉に降りた露で喉を潤すと、鶯は美声を張り上げて
歌い出した。その声が届いたとも思えないのに、麓の村から返礼のように、
  コケコッコー
と雄鶏の声が返してきた。


       おわり
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瀬音

2015-05-15 21:50:56 | 短詩



★瀬音


深山幽谷の

新緑の中では

滾る瀬音までが青い

水は鏡だから

せせらぎばかりか

瀬音も

青く染まっている



せせらぎに拘っていると

上の枝から小鳥の声が降りかかる

被さるように襲ってきた

小鳥の唾液も青いのだ



   ★
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雪解川

2015-05-15 21:22:11 | 掌編小説
★雪解川


 一年前のちょうど今頃だった。
 雪解けと大雨で増水した川を、丸太にのった猫が流されてきた。
 その猫をKは、丸太からもぎ取って助けた。一瞬の出来事だった。あと一秒遅かったら、猫は流れ去っていた。
 猫は必死にKの腕に捕まって、家に来るまで離れなかった

 その猫は現在、三匹の子猫の親になっている。子供にいのちの恩人だと教えているらしく、Kが帰宅するとき、三匹と母猫は、そろって玄関に迎えに来ている。
 鍵を回す音を聞いているらしく、Kがドアを開けるなり、いっせいに四匹の緊張が崩れて、花開くのだ。
 玄関からリビングに来る間は、Kと四匹の行進になっている。先を進むKを抜かせば、親が先頭で、大きさの順に子猫がつづいている。
 四匹とも、挙げた尻尾の先がカギ型になっている。そこをひくつかせて、行進曲のリズムをとっている。アレは、たぶん、四拍子だろう。

                 おわり







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2015-05-13 17:35:26 | 短詩



★蝶




気が触れて


乱れ飛んでいた


蝶がひとつ


天に抱かれていった



  ★
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木の芽どき

2015-05-13 17:31:29 | 短詩


★木の芽どき



木の芽どきの野原にいると

いたるところに

生き物の気配がして

いのちが蠢いている



乙女たちが息を潜めて

私語している


  ★
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土筆

2015-05-12 23:29:49 | 散文詩

◇土筆

ひとりの婦人が

野道をやって来て

ふと足下に

土筆が三本

ひょろりと立っているのを見つけた



婦人は小腰をかがめると

土筆の上に手をかざして


~つくしちゃん あなたたちは 

大木にならなくてもいいのよ

そのままで~


と言った

婦人が立ち去った後

三本のつくしは

彼女の残り香を

胸一杯に吸い込んだ

言葉の通じない彼らに

皮膚を通して伝わってきたものがある

それが愛というものだった



   ◇
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焦土

2015-05-12 23:20:13 | 短詩



★焦土




野焼きを済ませた農夫が


鎮まって


焦土と化した我が地を歩いている


他国を占領した


兵ではないけれども



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夜のしゅうせん

2015-05-12 23:15:14 | 短詩



★夜のしゅうせん



 しゅうせんが一つ
 

 白い夜風を乗せて


 静かに揺れている


 都市の公園だ
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陽炎

2015-05-11 15:56:07 | 掌編小説



◇陽炎


 別れ際ホームに陽炎立つばかり



 地元の高校を卒業した娘は、田舎の駅から父に送られて上京した。

 父はホームに立っていた。ホームには、父の他に誰もいなかった。陽炎が立ち、

父の姿さえぼかしていた。

 後になって,娘は自分の旅立ちの日を想い出すにつけ、あのとき父はホームにいなか

ったのではないかと考えるようになった。それほど父の影は薄くなっていた。

 娘に辛い思いをさせたくないから、姿を消していたのではないかと,勘ぐったりもした。

実際父は、間もなく他界してしまい、ホームでの別れが、父との最後になった。

 おしまいなら、よけいしっかり記憶に留めておきたいのに、そうならないのが、

娘はもどかしく、辛かった。
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海に近い街

2015-05-10 15:10:03 | 散文詩




◇海に近い街


 海の近い街だと聞いて訪れても、実際は駅からずいぶん歩かなければならなかったり、一日歩いても辿り着けないこともあった。
 けれども、Kという街は、駅で電車を降りてすぐのところに、海が青く揺れていた。
 その出会いが感動的で、それからK街に度々出かけるようになった。電車で日帰りできる近さだったし、海を隠した他の街のように、裏切られる心配がなかった。
 こんなに単純に、海と隣り合った街も珍しい。


   ◇
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野焼き

2015-05-10 14:54:25 | 散文詩
◇野焼き


野焼きをすると、鳥は羽ばたきも重く飛び立っていく。
あんなに飛びたつのに遅く、羽ばたきが重いのは、それだけこの場所に未練があったからだろう。
体が火と煙に焼けるぎりぎりまでねばっていて、逃げ出すのだ。
あの鳥はいったい、どんな想い出を置いていったのだろう。
生物にとって、地上は何と苦しみや悲しみで満ちているのだろう。それら不幸の総量となると、相当なはずなのに、それでも地球は規則正しく回っているのだ。つれないというのか、背後に隠された真理があって、つり合いが取れていると言うべきなのか。とにかく地球という球体は、そこに生きるものの悲しみや苦しみを、等閑にして回っている。そう思えてならない。
 不幸を量産する巨大な物体だ。地震、津波、洪水、火山の噴火… それら災害を見ると、特にそう思う。



   ◇
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