★雪解川
一年前のちょうど今頃だった。
雪解けと大雨で増水した川を、丸太にのった猫が流されてきた。
その猫をKは、丸太からもぎ取って助けた。一瞬の出来事だった。あと一秒遅かったら、猫は流れ去っていた。
猫は必死にKの腕に捕まって、家に来るまで離れなかった
その猫は現在、三匹の子猫の親になっている。子供にいのちの恩人だと教えているらしく、Kが帰宅するとき、三匹と母猫は、そろって玄関に迎えに来ている。
鍵を回す音を聞いているらしく、Kがドアを開けるなり、いっせいに四匹の緊張が崩れて、花開くのだ。
玄関からリビングに来る間は、Kと四匹の行進になっている。先を進むKを抜かせば、親が先頭で、大きさの順に子猫がつづいている。
四匹とも、挙げた尻尾の先がカギ型になっている。そこをひくつかせて、行進曲のリズムをとっている。アレは、たぶん、四拍子だろう。
おわり