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二階の窓の下を、家族連れが通る。野鳥が歌い、草花もいっぱいの、市民公園の方へ路地を曲がるのかと思っていたら、ショッピングモールの屹立する方へ行ってしまった。
彼はがっかりして、チェット舌を鳴らした。それから彼は、路地を挟んだ二階の窓に目をやった。そこでは若いOLが一人で部屋を借りている。彼は意識して、めったに見ないのだが、この日に限って、さっきの家族連れに裏切られた腹いせから、OLの窓に目をやった。人の気配がして、ノースリーブの女が歩み寄ってくるところだった。彼女は窓辺に近づくと窓を閉めた。チェッと彼は二度目の舌を鳴らした。どこかに出かける様子もあったから、彼は窓辺を離れず、そのまま下を見ていた。
二三分して、女が玄関を出て来て、チラと路地の上を仰いだ。そして、彼の視線を遮るように、日傘を開いた。
彼女は市民公園のある方角に、路地を曲がって行った。
「まあ、いいか」
と彼は呟き、舌は鳴らさなかった。
end
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二階の窓の下を、家族連れが通る。野鳥が歌い、草花もいっぱいの、市民公園の方へ路地を曲がるのかと思っていたら、ショッピングモールの屹立する方へ行ってしまった。
彼はがっかりして、チェット舌を鳴らした。それから彼は、路地を挟んだ二階の窓に目をやった。そこでは若いOLが一人で部屋を借りている。彼は意識して、めったに見ないのだが、この日に限って、さっきの家族連れに裏切られた腹いせから、OLの窓に目をやった。人の気配がして、ノースリーブの女が歩み寄ってくるところだった。彼女は窓辺に近づくと窓を閉めた。チェッと彼は二度目の舌を鳴らした。どこかに出かける様子もあったから、彼は窓辺を離れず、そのまま下を見ていた。
二三分して、女が玄関を出て来て、チラと路地の上を仰いだ。そして、彼の視線を遮るように、日傘を開いた。
彼女は市民公園のある方角に、路地を曲がって行った。
「まあ、いいか」
と彼は呟き、舌は鳴らさなかった。
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■
バス停に立ち
木枯らしを
やり過ごす
相身互いと
寄り添って
足元に
野良猫と野良犬が来て
人を見上げている
「あっ 犬と猫 飼主は誰?」
寒気をついて 若いOLの声
野良だから 飼主なんかいるはずはない
慕って寄ってきた人間すべてが飼主だ
■
バス停に立ち
木枯らしを
やり過ごす
相身互いと
寄り添って
足元に
野良猫と野良犬が来て
人を見上げている
「あっ 犬と猫 飼主は誰?」
寒気をついて 若いOLの声
野良だから 飼主なんかいるはずはない
慕って寄ってきた人間すべてが飼主だ
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