波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

カレイの唐揚げ コント

2019-05-10 15:19:07 | コント

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二匹は交番のストーブに当たらせてもらって、雨に濡れた毛を乾かした。

連休で息子がカレイを二十尾釣ってきてよ、その始末に困ってんだ。同僚には分けたが残りは多い。この調子では,明日も明後日も、カレーの唐揚げだ。お前たち少し手伝ってくれねえか」

 警官は冷蔵庫からカレイを取り出してきた。

「すげえ、生のカレイじゃなく、奥様の手による愛のタマモノじゃんか」

とオイラは言った。

何がタマモノのもんか。ただのアゲモノだ。ところでお前たち、泊まるところはあるのか。なければ裏の納屋を貸してもいいんだが、……」

 


バス停 コント

2019-04-25 06:49:56 | コント


バス停に立ち
木枯らしを
やり過ごす
相身互いと
寄り添って
足元に
野良猫と野良犬が来て
人を見上げている
「あっ 犬と猫 飼主は誰?」
寒気をついて 若いOLの声
野良だから 飼主なんかいるはずはない
慕って寄ってきた人間すべてが飼主だ



鷲  コント

2019-04-18 19:54:30 | コント


あるようでなく、
ないようであるのが、
鷲の爪だ。
あの鋭い嘴と眼光が、
君に向けられていると感じたのなら、
そう受け取るべきなのだろう。 
君は鷲に屈服するか、逃亡を企てるしかない。
たとえ逃げられても、時間の問題だ。
やがて屈服せざるを得ないだろう。
というのは、鷲はあくまでも
神の使命をおびた身代わりとして
登場したのであり、
服するのが理の当然ということになるからだ
そんな鷲は、ただの鷲ではない。逞しい大きな翼は
逃れようのない神の力の威容を示しているし、
爪と嘴の強靭さは、いかに強力な猛獣でも、
当然人間でも逃れられないことを教えている。
今草原の草木をなびかせ、一羽の鷲が飛びたつ。
行き先は断崖絶壁に立つ、喬木の天辺。高いほど視界
は広がる。
時に神の使命を総身に受けて戦慄く鷲。




庭掃き

2019-04-17 06:53:51 | コント


雀にとって
あの霜柱は大きい
小さな足で踏んでも
潰れるものではないし
鶏みたいに
蹴散らせば地面が覗くのでもない
地面がなければ餌がない

そんな雀を見かねて
霜の朝、庭掃きをする少年がいた



探梅行 コント

2019-04-12 23:49:48 | コント



探梅行
ひよわな男
したがえて
それでも梅は
けなげに七輪
なかに一輪
クレナイ光る
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上の文章は、探梅行の後、
社内報に載った

探梅行に同行した二人の同僚が
会社が退けた後、居酒屋で会っていた。。
「ひ弱な男したがえて、だってよ」
「いいじゃないか、そのくらい書かれたって。
探梅行の後、次長なんか、奥さんに責められて
大変らしいよ。奥さん、来年は自分も参加すると
いいだしたとか。次長は探梅を指揮したんだから、
何回か電話もあったんだろう、一輪のクレナイさんから。
彼女は登山のベテランでもあるし、ピッケルも自在に
使えるから、用心棒としても頼もしいなんて、
次長は言っていたからね」
「メンバーが増えていくのは、いいことじゃないか」
話を聞くだけだった、同僚が言った。
「ピッケルを振り回すようなことに、ならなければいいがね」





白息  コント

2019-04-11 13:45:12 | コント


ある肌寒い冬の朝、
若者は駅前に並んでいた。
何の目的であったのか、
それは忘れている。
列に並ぶ人間からは、
白い息が吐き出されていた。
それを彼は、後ろから見ていた。
一箇所だけ、その白息の出方に不審を抱いた。
白い息が一つだけシンプルに立ち昇るのではなく、
複雑な軌跡を描いて吐き出されているのだ。
若者は不思議に思って、ずっと観察していた。
列は徐々に前へ進んでいた。
若者は思い切り体をずらせてみた。何故かこの
懸案事項をこのまま終わらせたくなかったのだ。
二三歩横に足をずらせると、謎はとけた。一人の女が
赤子を前に抱えていたのだ。
「なあんだ」
と彼はがっかりもせず、むしろ得心して、目を
周りの街の景観に移した。