さて、厳しい経営状況の1年目。暮を迎えて正月以降どうなるか不安で、お客さんを増やすにはどうすれば良いかとばかり思案しているところに、1本の電話が掛かってくる。
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個人事業主となってから、どこにも知らせていないのに色んな業者から電話が掛かってくる。もともと営業していて事業主が変わっただけなのにである。情報源はどこだ?開業届を出した税務署か、もしくは新たにインターネット環境を整えたので、そこからか。そんなとこだろう。
業者は多岐にわたるが主に広告関係が多い。『SEO対策に効果があります』がよく掛かってくる。初めは、SEOって何?ぐらいの知識しかなく、業者に尋ねるぐらいだった(笑)。検索する時、なるべくページの先頭に上がってくる対策と聞いて、ほぼ全部断ってきた。ボルダリングを検索する時点で幅は狭いのである。歯医者や床屋を探すのとはわけが違う。また、単純に広告予算も無い状況である。そんな折にまた1本掛かってきた。電話口の向こうがやけに騒がしい。なんだこの会社?どういう状況で電話しているのだ?しかし一度話だけ聞くことを承諾をする。
14時からオープンして夕方まで誰も来ない日々。どうすればお客さんを増やせるか、このままだと継続できないかもしれないと考えたいた頃である。時間はあるから、話だけ聞いてみるかと考えたのである。
約束の時間に現れたのはスーツ姿の若い男であった。話の内容をかいつまむと、これからの広告はお客さんがお店を広めていく時代である。この店が良いよとスマホにマークとしてアイコンを入れるのだという。お客さんを通して段々に広まるという話。そのマークがお店のマークかというと弊社のデザインだという。そのアイコンを入れたお店もあって、繁盛しているというのでそのお店を紹介してほしいというとそれは無理だという。広告ゆえに必ずお客さんが増えるという保証はない。男もそう言う。広告なので確実性はないが現状を考えてやらない理由はないでしょうと。広告費も今なら会社に掛け合いギリギリまで割引できると、その場で電話をして上司と話を通した。なおも続け長々と話をする。予定の時間をはるかに超えて男は居座り続ける。また、誰もお客さんが来ない。長時間の話しにこちらもそう言うものかという気になり、ついに契約書にサインをした。男は言う。この契約は個人ではなく、事業所なのでクーリングオフは対象除外ですからねと。
端末のタブレットを置いて、男はにこやかに帰っていった。契約は5年間でかなりの金額である。当然一括では無理なので、クレジット会社との契約となり月々返済していく形である。これで集客力アップかと一瞬思ったが、男が帰り冷静になればなるほど、かなり怪しいぞ。騙されているかもと気付き始めた。仕事を終え帰宅する車の中で、だんだん業を煮やす。これは解約しよう。何らかの方法があるはずだ、とここから業者との戦いが始まる・・・。つづく