goo blog サービス終了のお知らせ 

へんないきもの日記

今日も等身大で…生きてます😁

ちょっぴり不機嫌な、そのワケは・・・ ~ トランスエゾ走行記

2016-09-04 08:44:10 | 旅とランニング
 10日目(後半戦3日目)、新得から富良野までの80km。今までの平坦な道と違って、狩勝峠、樹海峠といった2つの峠を越える。その間、高倉健さん主演の映画「ポッポや」の舞台となった(写真)幾寅の町を抜ける。前日、とこの日と、台風10号がなめていったルートを台風に先駆けて走ったワケである。

 狩勝峠に向かう手前、北新得から廃線跡を通る。線路跡がいい具合にトレイル的な道になっていて、私はこのコースが好きだ。5年前同様、曇天の天気がさらにマイナスイオンを増加させていた。

 なだらかな勾配だけに走るに走れず、大股で上る狩勝峠は、5年前同様、霧に包まれていた。特に下りは霧がいっそう濃くなったので、手持ちの懐中電灯を点灯させて走った。

 峠を下ると落合の集落があり、その先に幾寅の町が見えて来た。映画のセットそのものの駅舎で一休み。それにしても・・・北海道は廃線跡やら廃校やら、やたらと「廃」が多い。その昔、今から100年ちょっと前、我々の先祖は新天地を求めて北海道に渡ってきた。開拓し、あちこちに町を築き、鉄道も敷かれた。しかし、雪と厳冬には勝てなかったのだろうか?札幌といった一部の都市を残し(いまだに札幌は福岡よりはるかに人口が多いって知っていましたか?)、多くは過疎化が進んでいる・・・ま、北海道に限ったことでは無いかもしれないけど。こうした走り旅を通じて、一極集中、地方の過疎化といった現実を改めて突き付けられる・・・

 2つの峠を越えると、少しは道の起伏も落ち着いてきた。ゴールの富良野に行く手前、南富良野町(台風10号で被害にあいました。)あたりから、平野が続く・・・

 50kmを過ぎたあたりで、雨が降り出した。国道をそれて右に曲がる角の軒先で、仲間のランナーが一人、雨宿りをしていた。私は、国道をそれると道を間違えやすいことから、慎重に地図を見て進んだ。雨脚が強くなってきたので、農家のビニルハウスにお邪魔し、その中に入ってカッパを着て、地図を新しいページに差し替えた。

 さっき、雨宿りしていたランナーは私が曲がって少しすると後からついて来た。なんとなく、その時点で私は嫌な予感がした。

 スタッフのサポートカーがいたのでそこでドリンクとゼリーを補給する。さきほどのランナーは私がビニルハウスに滞在している間に先に行っていた。私はスタッフに先ほどの嫌な予感の話をしたところ・・・「昨日も、道を間違え、俺の携帯に電話してきた。懲りてないな・・・」といった感想。

 やはり、そうだったのか。軒先の彼は、雨宿りが目的ではなく、地図読みに自信が無いため、誰か後続のランナーが来るのを待っていたのだ。その網にうまく引っかかったのが私、というワケである。

 本のタイトルに「地図の読めない女」なんてのがあったけど、世の中には地図の読めない男もいるものである。見ると、先を行く彼が本来のコースより一つ早く左に曲がって行くのが見えた。私はあえて「違いますよ。」とは言わなかった。ちゃんと自分で地図を読んでほしいからだ。それにしても、曲がるべきところには、しっかりと「学校」と「郵便局」の地図記号があるのに・・・もはや、自ら地図を読むのを放棄しているかのようだった。

 私がスタッフに言った「少しはアドベンチャー的要素も楽しんでほしいですよね。」は、どうやら的中した。しばらくすると、彼はすぐ後ろからやって来た。もともと走力はあり、スピードもあるので、のろのろと走る私よりずっと前に行っていいはずなのに・・・

 私も、雨の中、近視と乱視と老眼の目でメガネをずらしながら必死に地図を読んでいるのだ。その後ろからトコトコついてきて、人の前に出て、また少しして間違えそうなところで人の行く先を見定める・・・ちょっとずるくないか?だんだんと腹が立ってきた。それって、人が汗水たらしてせっせと育てた野菜を後からやってきて拾い集め、「コレ、俺が作った野菜です。」と売って歩くのと一緒だ。

 やがて南富良野町に入り、残り15kmというところでコンビニのおにぎりを買って補給する。(雨に打たれて、もうビールは欲しなくなっていた。やっぱり雨はキライだ。涼しくっていい!という人もいるけれど。私は炎天下で汗をたらしながらビールを飲んで進むランが好きだ。)

 そこから先は、例の「・・・線・・・番」といった碁盤の目攻撃が続く。間違えないよう、一つ一つ数えながら進む。彼も私と前後しながら進む。残り10kmくらいのところで左手に5年前には無かった農家のエイドがあった。そこがチェックポイントになっていた。私は軒下に入ると、雨を払いのけ、トマトやメロン、スイカをごちそうになった。炎天下だったらさらにうまかろうに・・・って思うと、やっぱり残念だった。

 私の後ろから来た彼は、そのままエイドを通り過ぎ直進した。そこを親切な農家の方が呼び止めた。(やっぱり地図、見てないよなあ~)

 あまり書くと個人攻撃、個人を糾弾するコトになるが、私の視界から消えない限り、この不機嫌な気持ちは消えそうに無かった。

 結局、ゴールまで付きまとわれ、最後は地図に従って正規ルートを行く私より先にゴールした。その間、私の前に出たことはなく、つまり、どこかで回って近道したらしい。このゴールシーンと最後に言われたセリフ、「いやあ~、引っ張っていただいて助かりました。」に私は開いた口がふさがらず、そのままアゴが外れそうになった。

 ゴールの旅館は風呂が一つしか無い、ということですぐ向かいのスポーツクラブの風呂に行った。親切なスタッフが「お風呂だけじゃもったいないですから、どうぞ、プールもジムも利用されてください。」って言ってくれたけど、もちろん、この日も含め、連日80km前後走っているのでノーサンキューだ。

 夕食は、久々に都会の富良野の町で・・・と思ったが、この日はすっかり精神的に疲れてしまった。そんな私を見て同室のまみさんが、「ちょうど多めに買ってきたから、一緒に食べましょ。」と自分のために買ってきた夕食を私に分けてくれた。一日の出来事を話し、ちょっぴり駄々っ子のようになっていた私をなだめる母親のように彼女は言った。「世の中には、いろんな人がいるからねえ・・・」「さ、食べなきゃダメよ。」

 私は、その度量の深さに改めて目の前のまみさんをまじまじと見つめるのであった