バスは知ってる

夕方、車が渋滞していた。道は、ちっとも進まない。
前のほうにバスがみえる。
追越しのできない道だから、バスがいるならこの先しばらくは、渋滞にプラスして速度も遅くなっているだろうなと思い、先をいそぐのをあきらめた。

ゆっくり進んでゆく、車の窓から、街道沿いの住宅のすきまに月がみえた。
へんに低い場所で、へんに黄色かった。
おもちゃみたいだなあ、と思ったらなんだか手が届きそうな気がしてきた。
冬の月はきれいだ。すき。

道はさらに渋滞が続き、逆方向の車線ものろのろと進んでいる。
右折車線はさらに混んでいた。
私は右のウインカーをだした。
すると、前のバスもゆっくり右へ動いてゆく。
バスも右折だ。ついてない。

すると、反対車線のバスが、信号でしきりにパッシングしている。
どうやら前の右折バスに道を譲っているらしい。
ここまではよくみる光景だった。

私と右折バスの間には、５台ほどあった。
右折バスが右折したあとも、対向車線のバスはパッシングを続けていた。
対向車線はバスがせきとめる形になった。
パッシングされて、２台目が右折してゆく。
３台目、４台目。
まだ対向車線のバスはパッシングを続ける。
私も、パッシングをうけて右折した。

バスは、自分がはしることで、渋滞中のほかのドライバーがどんな気持ちでいるのかを知っている。
だから？なのかわからないけど、そのぶんこうして返そうとしてくれているのかもしれない。

謙虚、思いやり
最近私の周囲では見かけにくいものたち

バスは、ゆっくり動いてゆき、人をのせ、人をおろす。