演奏参加の記録 2009

 3/26(木)新城高校定期演奏会(S.sax/T.sax)

 5/10(祝)大栗司麻門下生による演奏会
 エックレス バイオリン・ソナタ(A.sax)

 8/16(日)
 GAME MUSIC CONCERT ドラゴンクエストの世界より(A.sax)

 9/23
 NHK SOUND+1 吹奏楽スペシャル2009コンサート(A.sax)
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今川焼き

今川焼き、という短編小説を書き、文芸コンクールに出しましたが、落選したので、こちらに残しておきます。
小説で認められるのって、難しいですね~。やっぱりエッセイが向いているのかも。



「今川焼き」

 部屋には、タオルを大量に洗濯し、乾燥したあとの香りが柔らかく漂っていた。柔軟剤には店長のこだわりがあって、なんとかいう外国製のものを使っている。使用量がいまいちよくわからないので、いつも目分量で適当にドボドボと注ぎ入れる。おかげで仕上がりは、国内産の柔軟剤にはない優しい香りがする。
 私は駅前の小さな整体店に勤めている。従業員も私を入れて三人のごく小さな規模の店だけれど、なかなか繁盛している。
 店長は年齢不詳の女性で、優雅に着物で出勤してくることもあれば、ロック歌手のようなホットパンツで太ももとおへそを丸出しにして出勤してくることもある。いつも快活だが、じっくり黙り込んで整体に専念している時もあるし、お客さんの話を聞きながらしんみりしている時もある。芸能人でたとえるなら、宝塚を出ているあの人に似ている。彼女を慕ってか、彼女の技術を慕ってか、毎日たくさんのお客さんが彼女のもとを訪れる。
 もう一人の従業員は、脱サラをした若松さんだ。五十歳半ばくらいで、いつも黙々と仕事をしている。めったに仕事以外の会話をしない。でも、最近生まれたお孫さんの話になると、とたんにおじいちゃんになって顔がゆるむのが面白い。
 私はそのメンバーの中でたぶん一番年下なので、店内のあらゆる雑務をこなしていた。うちは昼から夜までの店のため、シフトなどはないので、出勤日はいつも一番に来て、一番遅くまで店長の手伝いをして帰宅する。店の業務を覚えながら、整体の仕事をするのは楽しかった。
 私はもっぱら足マッサージを担当している。全身をまかされることもあるけれど、自分自身、足マッサージには自信があり、来てくれるお客さんを満足させたいし、店長もそれをわかっているので、私に足マッサージのお客さんをまわしてくれる。
 友人に足マッサージの話をすると、知らない人の足なんかキモチワルくて触る気になれない!ということもしばしば無神経に言われたりするが、私はお客さんの足をそんな風に感じたことはない。明日もまたがんばって大地を踏みしめられるようになって欲しい一心で接している。ただ、疲れてだるいであろうその二本の足を回復させることに真剣だ。

「みのわさん、お客様お願いします。フット三十分です。」
 遅い夕飯のカップスープを食べていると、店長が休憩室にいた私を呼びに来た。身支度を整え、お待たせしました、と店内へ戻ると、先月もその前もきてくれた、私と歳が近そうな女性のお客様、タマミさんだった。
「いらっしゃいませ。今日もたくさん歩きました?」
 先に入ってもらう足湯を用意しながら、タマミさんに着替えを促した。タマミさんはするりとガウンに着替えると、ため息をつきながら椅子に座った。
「この間、みのわさんにマッサージしてもらったあと、とっても足が軽くて自分のじゃないみたいだったんですよ!」
「そうですか、ありがとうございます。」
 タマミさんは、その足が軽くなった感覚を期待してのご来店だぞ、自分頑張れよ、と内心ひとりハッパをかける。
 足湯に入りながら、タマミさんは勤務先の不満などこぼしていた。彼女は大手一流企業へ勤めている。私はOLの経験がないので、タマミさんに憧れつつも、大変そうだと感じていた。
 施術をしながら、タマミさんの足の疲れとともに、心にそっと溜め込んできた愚痴なども、一緒に出ていくように念じた。念じることは、きっとかなり効く。
「人と目を合わさずに仕事をすることを、みのわさんはどう思いますか?」
 私はオイルを手にとり、そんなことできますか?とたずねる。
「同じ職場で、ですか?」
「はい」
「話すときも?まったく?」
「まったく」
 と、タマミさんが言う。
 お客さんの目を見続けながらマッサージすることはないが、まったく見ないということは、ない。
「それって嫌がらせですよね?」
「たぶんそういうことだと思います」
 タマミさんによれば、まったく目も合わさないし、朝の挨拶さえしない、という人もいるという。中学生か!とびっくりした。オフィスとは、大人の集合であり、かつビジネスの洗練された空気があり、チームワークがあるのだと思っていた。テレビドラマの見すぎだろうか。
「結局のところ、仕事以外にそんな余力が残っているなんて、大して仕事に集中していないんじゃないかって思うんです」
 タマミさんはため息をつき、
「そういういじめのようなものって、学校が終われば終わるものだと思っていただけに、ショックです。その行為はどうってことないですが、大人になってもいじめのようなことを平気でする人がいて、もしかしたらこの先の人生でもまだそんな大人と出会うのか?と思うと、情けなくなります。」
 施術がすすむにつれ、彼女はまったりとした口調になってきた。部屋には、アロマオイルの香りが漂っている。今日の香りは、ティートゥリーとレモングラスの配合だった。
一流企業の彼女の職場だったら、一流の学歴を持ったすごい人ばかりだろうに、一流の学歴とは、必ずしも一流の人間ということではないようだった。

 施術が終わり、タマミさんは来たときよりもすっきりした顔をして、足が軽くなった!来て良かった!と言って、夜の駅前広場に溶け込んでいった。
 ひとは、抱えた醜い気持ちを吐露するだけでも、自分を変えることができる。

「彼女のきもち、わかりますよ」
 と、誰もいなくなった店内で、若松さんが私に声をかけてきた。猫背の中背で、白い作業着の背中がいつもと同じなだらかな曲線を描いている。
 若松さんも、サラリーマン時代が長かったので、同感してしまうのだろう。
「職場の悩みは、職場のひとにはいえないですから。どれだけ悩んでいたってね。」
 それで周りは見ていたって、我関せず、ですよ、とモップをかけながら若松さんが言う。
 若松さんまでもがそういうことを言うとは、どうやらタマミさんの会社に限ったことではないらしかった。私のなかの、エレガントで美しいOLイメージは、少しくもった。
 どんな職場であれ、人間関係で悩むということは、あるのだろう。でも、この店に勤める私には無縁で、そんな環境におかれたことがないので、なんだか不思議な感じだった。とても格好いいアコガレの男性の、変なうわさ…「彼、この間ズボンのチャックがあいていたよ」などという話を聞いてしまったあとのような、腑に落ちない感じがした。
 私はしばらくタマミさんのことを考えていた。

しばらく経ったある日、私がうらで施術用のベッドシーツをたたんでいると、若松さんがやってきた。手伝いましょうか、という。店長は今日も接客中で、若松さんは手持ち無沙汰らしかった。
二人でもくもくとシーツやらタオルやらをたたみつつ、私は若松さんに質問した。
「若松さんは、どうして脱サラしたんですか?」
 この手の話を嫌がるかな?と思ったが、案外普通に若松さんは話しはじめてくれた。
「長年勤めて、仕事も順調、人間関係もまあ並、給料も悪くない、養うべき家族もいる、「普通」なことが幸せなんだってわかっているんですけれどもね、50過ぎたらなんだかむなしくなってきちゃったんですよね」
「充実ではなくて、ですか?」
 長年積み重ねた実績や経験が、人生をより豊かにしてゆくのは、まあ、そうなんだけど、と若松さんは続けた。
「あと少しして定年になったら、なんだか会社から放りだされたような気分になるんじゃないかと思ってね。確かに自分の意思で勤めてきたんだけれど、果たしてそれが自分の人生の何になったのかな?って考えちゃったんです。職がある、というのは、本当に恵まれたことだというのは、重々承知していますよ」
「そのある一定の生活の流れを、自ら絶って、新しい流れをつくるのって、勇気が必要じゃないですか?」
 たたみ終えたタオルは、ふわふわのまま整列している。良い香りだ。
「そりゃあ、だいぶ悩みましたよ!自分の人生を優先することで、家族に苦労をかけるのだったら、元も子もないしね。でも勇気をもって、家族に相談してみた。娘は、私が離婚を切り出すんじゃないかと思ったらしくて、リビングの隅からのぞきこんでいたけど。転職したい、ずっとやってみたかった整体師になりたいって言ったら、妻は最初黙っていたけど、許してくれた。しかも、収入が減ることを責めるのではなくて、自分もこれからパートに出てみたいと思ってたって言ってくれたんだ。本心じゃなかったと思う。でもそんな家族がいるから、僕はやっぱり幸せだと思うし、これからの人生を整体師として生きようって、決意できた。」
 なんだかのろけちゃったかな?と若松さんは、いつになく饒舌に、語ってくれた。
 そして、お互い頑張りましょう!と握手を求められ、私は若松さんと握手をした。思ったより、ごつごつした手だった。

 営業時間が終わり、バイクで颯爽と帰る店長の背中を見送って、ひとり夜の駅前広場を歩きながら思った。お店では、体を癒している間に、心の悩みも置いてゆくひとが多い。でも誰でもそれを最終的には自分でなんとかするしかないとわかっているのだろう。
 私はなんとなく誰かの景色の一部のように生きてきた。他人のことも、自分のことも、列車の窓に流れる景色を傍観するようにして過ごしてきたように思う。人を煩わせてしまいそうで、悩みを誰かに相談することもほとんどせず、自己処分してきた。
誰にも相談しなかったのではなく、相談できる相手がいなかったのかもしれない。自分の心を、そこまで他人に許していないのかもしれない。他人に心を許すことが、少し怖い。
私は、私の人生は整体師として生きてゆく、ということで本当によかったのか?ドラマのようなオフィスワークを経験しない人生でもよかったか?
自分の居場所を改めて考えてみたら、初めて、私は自分で決めたはずのいつも立っている場所が、とても不安定なものに感じた。
 改札のちかくに、今川焼の屋台が出ていた。クリームのをください、とひとつ買い、その場で食べた。外側は少しかたく、中のクリームは甘くてとろりとしていた。
 クリームの甘さに、私も溶けてしまいたくなった。

 次の日、私は仕事を休んだ。
 早朝から猛烈な腹痛におそわれたのだ。どうやら昨夜の今川焼がよくなかったらしい。屋台はあなどれない。古い油でも使われていたのかもしれない。

 店に電話すると、幸い、今日の予約のお客さんは店長と若松さんが代行してくれるというので、店を休むことができた。急にできた休みを、トイレを往復することに時間を費やし、食べ物も摂れず、力も出ずに、ただ一日を無駄にすごした。
私がいなくても、もしかしたら店は運営に差し支えないのではないだろうか。いくらでも代わりがきくものを、私の居場所として勝手に一生懸命になっていただけかもしれない、などと、布団にくるまって考えていた。

 夜になって、店長が見舞いにきてくれた。
 店長は、手土産になんと今川焼を持っていた。病欠の詳しい事情を知らないとはいえ、私は今の時点でそれを食べる気になれず、どうも、と両手で受け取ってテーブルへ置いた。
 早く良くなってね!と帰ろうとした店長を引きとめ、心細く思いながら聞いてみた。
「店長、今日大変でしたか?」
体を崩すと、思考回路は暗くマイナスのことにしか考えが及ばなくなる。
「大変に決まっているでしょう!体を治す私たちが、不健康でどうするの。健康が基本!」
と一喝され、ほっとした。
「みのわさんがいないことを、お客さんはみんなとてもがっかりしていたわよ。私のお客さんだってそうなんだから、あなたって人気者ね」
 と店長は、いじわるそうに言った。私の胸に垂れ込めた雲間に、光が差し込んできたように思えた。
「みのわさんが来てくれてから、店も安定したし、私もお客さんもあなたがいないと困るわ。今日あなたが久しぶりにいないような感じがして、忙しいのにちょっと心もとなかった。あなたを頼りにして、予約の電話も入っているから、早く店に来てね!」
と、店長は私の目を見て言った。受け止められた、と感じた。やはり、私はここで求められるかぎり、一生懸命働いてゆこう。
誰かに必要とされるということが、人なるもの、最大の力を発揮できるプログラムだ。

 一晩寝て起きてみると、体は元通りに健康になっていた。昨日負担をかけてしまった店長と若松さんの分も、今日は頑張らなければ、と私は支度を済ませると、勢いよく玄関のドアを開け、駅前の店へ向かって歩き出した。

今川焼のクリームの甘さに溶けそうだった自分はもういない。これからは外側のかわの部分のようにやわらかい輪郭を持ち、時折香ばしく、疲れた人を癒してゆく。
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演奏参加の記録 2008

 1/19(土) 保育園での演奏会
川崎市内保育園にて
 ミッキーマウスマーチ
 大きな古時計
 さんぽ

 5/6(祝)大栗司麻門下生による演奏会
 大田区民ホールアプリコ小ホール
  SCARAMOUCHE /Darius Milhaud
 
 E.エルガー/弦楽のためのセレナード
 (サクソフォンアンサンブル・なめら~か(T.saxで))
 N.ブロドスキー/Be my love
 原大介(Tn)、大栗門下五重奏(T.saxで)

 5/25(日)ヤマハ目黒吹奏楽団第29回定期演奏会
 めぐろパーシモンホール  大ホール
 フラッシング・ウインズ
 ケルトの叫び
 春の猟犬
 ハリウッド万歳
 私のお気に入り
 亡き王女のためのパヴァーヌ
 エル・クンバンチェロ
 序曲「軽騎兵」
 タイプライター
 メインストリート・エレクトリカルパレード
 (T.saxで)

 7/21(祝)サクソフォーノ・ロッソ 第5回アンサンブルコンサート
 スタジオ・ヴィルトゥオージ
 ストロベリー・ノート(サクソフォン四重奏)
 (T.saxで)

 8/14 松本市・今井ドンパン
 松本音楽団で演奏。
 ↑当日の写真があります。

 9/22(月)サクソフォンアンサンブル なめら~か
 長野・森の音楽堂
 ジャンジャン 四重奏曲(S.saxで)
 他

 10/18(土)サクソフォンアンサンブル なめら~か
 定期演奏会
 みなとみらいホール
 ジャンジャン 四重奏曲(S.saxで)
 他

 12/20 サクソフォンフェスティバル
 王宮の花火のための音楽(T.saxで)

 12/28
 松本音楽団で演奏。
 国営アルプスあづみの公園にて。(A.saxで)

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演奏参加の記録 2007

2007年の演奏活動の記録。

 7月1日
松本市民音楽フェスティバルVol.2 器楽フェスティバル
(松本市)
プロヴァンスの風景~
 1楽章 若い娘たちのファランドール
 2楽章 いとしい人への歌
 5楽章 あぶ


 9月30日(日)
サクソフォン・アンサンブル なめら~か
第7回定期演奏会 
アルベニス/セビリア、コルドバ(カルテット)
グラズノフ/サクソフォン協奏曲
メンデルスゾーン/「真夏の夜の夢」の音楽より

 保育園での演奏会。
11月16日(金)川崎市内の保育園にて。
となりのトトロ
アイアイ
大きなくりの木のしたで
どんぐりころころ
やきいもグーチーパー
手をたてきましょう
あかとんぼ
げんこつやまのたぬきさん
とんぼのめがね
やぎさんゆうびん
もりのくまさん
ゆうやけこやけ
虫のこえ
勇気100%
ホールニューワールド
ルージュの伝言
さんぽ


 12/1(土)ピアノ教室発表会へ、saxophoneで参加。
きよしこの夜~ジングルベル

 12/22 サクソフォン・フェスティバル
なめら~かで参加。
スピットファイア


 =終了
♪ =これから年末までの予定
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こんにちわ。

けこぅ、といいます。 はじめまして。

2003年5月にマメコを出産し、2005年5月にこつぶを出産しました。
どちらも女の子です。二人はそっくり姉妹です。
毎日この二人に振り回されているので、しばらくは彼女たちのことばかり書いていると思います。

すきなもの
無印良品、ひろみちお兄さん、ゆうがたクインテット、リサとガスパール、よしもとばななさん、
ジュビロ磐田、ドトールでのんびりすること、いま在籍してる楽団、楽器(サクソフォン)

ブルーを通り越してぐんじょういろになってしまうことがたまにあります。
でもそのぐんじょういろになってる最中の気持ちを忘れずにいたいと思うんです。
絵具の中で一番使われない色ですが、私は好きな色です。

いまは育児をしていますが、これから叶えたい夢を持っています。
いつまでも頑張るかあちゃんでいたいと思っています。

サイトを巡るのは好きですが、よそ様のサイトに書き込みしたりするのが苦手です。
育児をしながらも、あいまに楽器をふいたり、サイトをいじったり、散歩したり、
写真撮ったりしながら暮らしています。

エッセイのようなものを書いてお小遣い程度の収入を得るようになり、
高校時代の私が、一番あこがれていた生活が実現しました。

自分のことをじっくり考えてみたら、
淋しがり、甘えるのが下手くそ、負けず嫌い、というのが
ぴったりだということに気が付きました。

リンク・アンリンクフリーです。

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2008年のタイトル画像

 

2009年のタイトル画像

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