ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

喧嘩するほど仲がいい

2023-08-20 08:58:01 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「お国柄」8月14日
 勝田友巳氏が、『文化に依存 表現の許容範囲』という表題でコラムを書かれていました。その中に米国映画インディ・ジョーンズのある場面の描写についての記述がありました。『インディは爆発寸前の核実験場に迷い込み、冷蔵庫に隠れて核爆発を生き延びる。爆心地近くでキノコ雲を見上げて一息つき、救助後に全身を洗浄されて事なきを得た。そんなバカな』。
 日本映画では考えられないシーンです。核に絶対反対の立場であろうが、中国や北朝鮮の核に対抗するためには核武装も考えるべきという立場であろうが、こうしたシーンを描こうとする日本人は皆無に近いでしょう。放射能の恐ろしさを、平和教育や原爆報道などで、たたき込まれていますから。
 米国では受け入れられ、我が国では受け入れられない、それが「文化」の違いだというわけです。勝田氏は公平を期すためか、我が国の映画の描写についても触れています。「亜人」です。『亜人の一人が、旅客機を乗っ取ってビルに突入する。その場面、まさに9・11テロの再現だった』。これも、日本人は気にしないが、米国人にとっては不快なシーンでしょう。
 世界には様々な国があり、民族があり、歴史と文化をもっている、当たり前のことですが、つい忘れてしまいがちです。国連のウクライナ侵攻非難決議、私から見れば反対や棄権はあり得ないと思うのですが、ロシアを支持する国は少なくありません。欧米に植民地にされたアフリカの国々の間では、欧米に対して「俺たちの国を侵略し、搾取したお前たちが偉そうに何を言っているんだ」という反感の声の方が高いと言われています。世界は、私たちのような感覚や価値観で動いているのではないということを知っておく必要があります。
 そうした、私たちにとって「不快な現実」をしることこそ、真の国際理解であり、国際協調なのです。我が国の国際理解教育では、その点が欠けています。もちろん、小学校の低学年の子供に、「○○国の人は、日本人が嫌いな人が多いんだよ」と教える必要はありません。
 以前、英語教育について触れたときに述べたように、小学校段階では、興味・関心をもつことが重要になります。世界にはいろいろな国があり、様々な人が住んで、日本とは違う生活や文化をもっている、という事実を発見させ、もっと知りたいという意欲をもたせればよいのです。
 でも、中高ではもっと掘り下げる必要があります。戦争、核、宗教、ジェンダー、人権など、一つのテーマを絞って深掘りし、リモートで議論するような学びが必要だと思うのです。IT環境の拡充がそれを可能にしています。みんな仲良くではなく、ぶつかり、非難し合い、その果てに理解が芽生える、そんな国際理解教育が求められているのではないでしょうか。

 

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