ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

慧眼の人

2023-08-09 08:20:58 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「さすが」8月2日
 連載企画『渋沢栄一12の肖像』第5回は、『国づくりは人づくり』というタイトルで、渋沢氏の教育観についての内容でした。その中に2点、印象に残った記述がありました。
 まず、『高等教育に重きを置きすぎ、小学校が不完全であることを根本的な間違いだと考えていた。学生に基づいた国民教育は整備されたが、小学校教員の待遇が軽すぎるとみていた』という記述です。
 何の解説もいりません。読んだその通りです。この指摘は今も生きていると考えます。「三つ子の魂百まで」と言います。幼いころに身に付けた性質は、一生継続するのです。小学校教育は、本格的な学校教育に初めて出会う場です。即ち、学校教育における「三つ子」なのです。ここで学ぶこと、新たな知識を得ること、自分で考えて解決することの楽しさと意味を体感することができるか否かということが、その後の学びを大きく左右するのです。
 次は、『近代国家形成とともに、国民の権利や義務に関する自覚を育成しようとする公民教育と、施す機関としての公民学校の必要性~』という記述です。私は、このブログで「公民的資質の育成」という言葉をよく使いますが、同じ意味でしょう。
 民主、自由、法治という概念は、人類は長い年月をかけてたどり着いた望ましい社会の必須条件です。これらは、政治家や行政官に任せておけば維持できるような生易しいものではありません。常に、国民一人一人が社会の形成者としての自覚と責任と覚悟を持ち続け、行動することによってのみ、維持・発展・深化させることが可能になるのです。
 学校教育は、民主的社会の形成者としての公民的資質を育むためにあると言っても過言ではありません。このことに100年以上前に気がついていた渋沢氏は、正に慧眼の人だったと思います。
 しかし、今、この大目標を失念したまま、目先の改革に右往左往している教育関係者が少なくありません。初心に帰り、小中高大、全ての学校で働く教員たちは、子のことを胸に刻み込んでほしいと思います。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする